黄金時代が終わる時
2024/08/05 22:32
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
あと一歩で日が落ちようとするウィーンは熟れ過ぎて腐り落ちる寸前の金色の果実のようだ。
その果汁を全身に浴びたクリムト、そしてシーレ。
爛熟期のウィーンに君臨したフランツ・ヨーゼフ。
彼の愛らしい乳児時代の絵を見てから彼がたどった運命を思うと…
母親は彼に王冠を被せたわけではない。
背中にハプスブルグ家とオーストリア帝国を乗せるための人柱にされたも同然。
苦役の慰めにエリザベートを娶っても心が通う事もないまま。
なんとも虚しい。
クリムトとシーレの共通点
それは下層階級の女性への冷酷さ。
特にほとんど同じ下層階級出だったクリムトの無情には唖然。
子供を生ませておいて打ち捨てる。
「下層階級の女が生んだ子供なんて本当に自分の子供かわかったものではない」と言わんばかり。
彼の描く忘我と恍惚に満ちた官能と豊かな色彩の裏側の無情には言葉もない…
シーレの「家族」
自分=アダム 妻=アダムの肋骨から生まれしエヴァ
子供=エヴァたる妻から生まれるもの
こういう入れ子構造なのだろうか。
下層階級出の愛人を粗末に扱ったシーレは妻が生んだ子を本当に愛せただろうか?
ウィーンの黄昏 きらびやかな時代、その水面下の残酷が垣間見える良著。
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【絢爛な中に漂う死の気配。歴史と名画がスリリングに交錯する!】大王朝の消滅前、ウィーンは黄昏時の美しさに輝いていた。クリムト、シーレ、ヴィンターハルターら42点の名画で怒濤の時代を読む。
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クリムトが好きなので、中野さんがどう描くのか楽しみにして読む。クリムトが生きたハプスブルク家の歴史を読むという感じで、力点はどちらかというと、ハプスブルク家の終焉にあるように感じられる。クリムトに対する好意的と思える記述に対して、エゴン・シーレに対する辛辣な記述の対比は興味深く感じたが、個人的には全体的に物足りなさを感じた。
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読了:2024/6/29
子だくさんの貧困家庭の長男、社交界は不得手、というのが意外だった。モデルとして集めた女性など、社会的立場の低い女性に対する道具扱いから、上流階級出身かと思っていた。
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グスタフ・クリムトを主軸にして、オーストリア帝国フランツ・ヨーゼフ皇帝の人柄や家族関係を絡めて、わかりやすく書かれています。
中野京子さんのクリムト絵画の解説はもちろん魅力的で、絵画が作られた経緯やモデル、エゴン・シーレとの関係など読みやすくなってました。
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超新星爆発。星は寿命を終える直前に最もエキサイティングなイベントを起こす。第一次大戦後に消滅したハプスブルク家。19世紀末のウィーンは、黄昏時の美しさに輝いていた。…次々と後継者を亡くし在位が68年に及んだフランツ・ヨーゼフ。嫁ぐはずの姉に付いてきて自らが皇后になっってしまったエリザベート。ウィーン大学の天井画で物議を醸したクリムト。過激な表現で24日間拘留されたシーレ。カフェのコーヒーは包囲したトルコの置き土産。華やかさは運命の儚さを彩るためにあるのか。…カラーの単行本。絵が見開きでも十分見やすい。
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何年か前に展覧会観に行ったことを思い出しながら読みました。クリムトは大好きです。美しい。『ヌーダ・ヴェリタス』(の絵葉書)部屋に飾ってます。中野京子さんの解説や時代考証と共に見るとまた一味違う。そしてフロイトと同時代と知るとまた深みが増しました。
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図書館の新着で見つけた、読み解くシリーズ第2弾。前作の『フェルメールとオランダ黄金時代』は図書館に蔵書がなくて未読である。あとがきによれば、「時代の必然のように登場した画家とその地の世相や事件を、できる限り多面的に捉えようとする試み」なんだそうだ。
本書では、19世紀から20世紀にかけて活躍したクリムトと、その時代のオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世を中心に、様々な出来事が語られている。
うーん、世界史も地理も苦手なので、興味深く読んだが面白くはなかった。もう少し美術寄りかと思ったのだが。
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本のカバーに「19世紀末のウィーンは黄昏時の美しさに輝いていた。ハプスブルク大王朝崩壊の予兆に怯えながら、誰も彼もそれに目を背けてワルツに興じていた。」と書かれてあり、惹かれて買った。
読んでみて、19世紀末ヨーロッパ(特にハプスブルク)は、特異的な時代だったように感じられた。華やかながらも、不安定さが漂っているような感じが、何とも言えず興味深い。
ゾフィー、フランツ・ヨーゼフ一世、エリザベート、フランツ・フェルディナントなどの、ハプスブルク帝国末期の人物についても、程よく解説してくれていた。
絵画の解説が、もう少し多めでも良いかもとは思った。
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面白すぎてほぼ一気読み。
ミュージカル『エリザベート』が大好物なのでフランツ・ヨーゼフ1世まわりのハプスブルク家は私もよく知るところ。
そんな自分にとって本書は「知ってること+α」の具合が大変ちょうど良かった。
本書で触れられていた映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』やエゴン・シーレの伝記的映画は鑑賞済みだったので、より一層楽しく読めた。
それにしても、フランツ・ヨーゼフ1世を囲い込む怒涛の死たるや。
1867年 弟:マクシミリアン メキシコで銃殺刑
1886年 妻の従弟:バイエルン国王ルートヴィヒ2世 変死
1889年 息子:ルドルフ マイヤーリンクで心中(公には心臓発作)
1898年 妻:エリザベート スイスでアナキストによる刺殺
極め付けが1914年 皇位継承者の甥:フランツ・フェルディナンド 夫婦で暗殺 人呼んで『サラエボ事件』
改めて、凄まじい。
なお、エリザベートを襲ったルイジ・ルケーニは反体制派からも支持されず、世間からは卑劣漢扱い、スイス当局は政治犯としてすら認めなかったと。ミュージカルの中で狂言回しの良い役を与えられているのが申し訳なくなってきた。
それから、皇帝の愛人とされるカタリーナ・シュラットの存在は知らなかった。
皇帝自身は第一次世界大戦の最中に病死。
1916年11月 フランツ・ヨーゼフ1世 肺炎により86歳で崩御
1918年1月 グスタフ・クリムト 肺炎とインフルエンザで死去
同年10月 エゴン・シーレ スペイン風邪で死去
クリムトもシーレも、ハプスブルク家の最期の灯火のようだ。あるいは、旅路の共に連れて行ったのか。2人とも宮廷とはほとんど関わりはなかったようだが、時代を彩って時代と共にこの世を去ったところがそんな気にさせる。
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中野京子さんの本は久しぶり。クリムトの初期の作品も載っていて充実している。華やかなクリムトの作品とは対照的にフランツ・ヨーゼフが地味に暗く宮廷生活を過ごしている様子が影のようだった。
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おもしろかった。
音声ガイドを使って 「クリムトと黄昏のハプスブルク」展をみているようだった。時代の背景とかいろいろをわかってから見ると 深みがでる。冗談じゃなく ほんとうに同タイトルの 絵画展があったら 絶対に行く!
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面白かった。スタバでコーヒーを飲みながら一気に読んだ。ハプスブルク帝国の終焉とクリムト、シーレ、そしてウィーン。
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クリムトについても、ハプスブルク家についてもそれなりに知っているので、今更読む必要あるかな、と思いつつ読んでみた。
が、ここまでクリムトの人生とハプスブルク家の終焉が同時期だったとは知らなかった。
そうか、クリムトって第一次世界大戦の頃の人なんだ。
と初めて実感した。
クリムト、というより、ハプスブルク家、フランツ=ヨーゼフ時代のオーストリアで華開いた芸術家たちの話。
と言った方がいいかもしれない。
それにしても、クリムトも、ハプスブルク家も黄昏という言葉がよく似合う。
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中野京子シリーズ、今作はクリムトに密接に関係するハプスブルク家である。
クリムトは豪華絢爛、どこか慈愛に満ちた作品というイメージだったが、その理由がわかるものだった。
崩壊して行くハプスブルクとその時代の流れ、絵画への影響が中野京子さんの言葉から溢れる。