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「狼は瞑らない」の山岳サスペンスのイメージで読み始めたら全然違った。ホラー・SFの短編集だった^^;
どれも明るい兆しがありそうな感じで終わるけど、でもそれでも悲しいし切ない。。希望よりも切なさの方が残った。
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久しぶりに樋口明雄作品を読んだ。
初めて読む短編集。
山が舞台のものもあれば、そうでない物もある。
こんなSFやミステリーを書く作家だとはしらなかった。
それぞれがちょっと怖い作品。
個人的には、連作となる標高二八〇〇米とリセットが良かった。
収録作9作品
モーレン小屋、屍山、渓にて、霧が晴れたら、標高二八〇〇米、闇の底より、最終電車、夜よりも暗い影、リセット
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山岳小説あり、怪異譚あり、ホラーあり、SF小説ありと、まさにバラエティーに富んだ短編集。
著者の作品で読んでいるのは、南アルプス山岳救助隊K-9シリーズや山岳冒険小説なので、本書もその類いと思っていた。しかし解説を読むと、著者は怪奇ホラー長編も物しているようだ。
本書で印象深いのはやはり、表題作の『標高二八〇〇米』とその続編『リセット』。
ある日突然、標高2800mより上にいた人間だけが生き残り、それ以外の人間が消失してしまう。残された主人公たちの孤独で絶望的な日々が綴られる。
この状況に著者は、原発問題を絡めて、単なる消失劇とはしていない。
人類は地球にとって、当初は良性の腫瘍だったが、今では悪性の腫瘍=癌であり、そのきっかけは核エネルギーの発見だったと、登場人物に言わせている(『渓にて』で、俺たち一人ひとりの人間の中に、破滅のプログラムが密かに内包されていたからに他ならない、と記されている)。
やがて、生き残った人間も、制御を失った原発の放射能汚染により次々と死んでゆく。そんな中で、こんな状況に陥らないためには、「身の程を知ることだよ」と、一人の人物が語り、現代社会のリセットを促す。
他の作品で、ある人物に「人間は欲と傲慢さを捨てて、そろそろ謙虚さを学ぶべきなんだ」と言わせていることに通じる考えではないか。
南アルプスの麓で暮らし、現代文明への懸念を抱く著者の思いでもあるのだろう。