モンゴル帝国の女性史
2024/10/19 10:09
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界に冠たるモンゴル帝国の覇道をまとめたものかと思い読んでみましたが、帝国において女性の役割がきわめて大きかったことをポイントにして論じた、視点の違う一冊でした。本のタイトルに、その理念を織り込んだ方がよかったと思います。
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空前絶後の大版図はどう生まれた?カギを握っていたのは実は女たちだった…。
モンゴルといえば、昔読んだ井上靖の『蒼き狼』を思い出す。この小説ではテムジンが全蒙古を統一するまでの他民族との激しい闘争、掠奪したあくなき征服欲が描かれている。
しかしながら、そのイメージは、近年のモンゴル帝国に関する研究により、大きく変貌した。特に、遊牧民によりユーラシア大陸が統一され、情報の伝達と交易が飛躍的に拡大、それによってはじめてユーラシア最東端の中国人がヨーロッパ文明の存在を知り、西洋もまた東方文明と接触でき、ユーラシアは初めてひとつになり、相互に連動しあうかたちで前へと進む「世界史」が誕生したとみる考え方に代わりつつある。
また、遊牧民の世界は定住農耕とは異なる別の論理に基づく社会システムであって、そこに優劣はありえない。中でも、女性の役割が極めて大きかったことが注目されている。この本は、チンギスハーンの征服とその子孫たちによる勢力拡大、世界帝国の形成がどのようになされていったか、武力だけに頼らない婚姻政策の実態、激しい権力闘争が描かれており、自分のモンゴル帝国の理解がこれで大きく変換した本であった。
それにしてもモンゴルという大帝国にどうしてこれほどの魅力を感じるのか不思議でならない。
この本の著者、楊海英氏はモンゴル生まれ。モンゴルの世界を表すのにその空気を感じるなど日本人学者とは一風違ったところがあるせいなのか。
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モンゴル人オイラト万戸出身で杉山正明に師事した著者がモンゴル語、日本語、中国語、英語の文献を駆使し、モンゴル帝国の政治は后妃とりわけコンギラート部の后妃が牛耳っていたことを物語風に解き明かす。
かねて遊牧民では女性の地位が高いことは言われていたが、后妃の権力基盤の掘り下げはなく、物語に過ぎないのは今一つ物足りない。