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陸秋槎『喪服の似合う少女』読了。華文ミステリの俊英にして日本サブカルに造詣の深い著者による新作は意外にもハードボイルド。女性私立探偵の主人公は大富豪の娘の依頼で失踪した同級生の女学生を捜索するが...
終盤の英題を回収する展開、探偵一人称視点故に語られないものに想いを馳せずにはいられない。
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出てくる女性たちが皆んないい!主役の3人ー私立探偵、富豪の令嬢、その友人で失踪した少女ーは勿論のこと、富豪の愛人や新聞記者など脇を固める女性も気に入った。劉雅弦探偵は奥が深そうで、、また会いたい。
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一九三〇年代の中華民国の架空都市を舞台に繰り広げられるミステリ。作者は日本在住の方であり、あとがきでは若竹七海や北村薫らの名を挙げつつ日本ミステリ小説界の一部へのリスペクトが示される反面、最近の日本ミステリ界への痛烈な批判も記されている。物語の中盤で一旦あっさりと事件が解決したようにみえてからが本番。主人公の私立探偵劉雅弦は、暴漢にあっけなくやられてしまうような、あまり強くないヒロインだが、ラストシーンでみせるやりとりは、まさにハードボイルド。
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★5 私立探偵が人探しの依頼を受け… 女性のプライドと力強さを描いた人間ドラマ #喪服の似合う少女
■あらすじ
1930年代の中国、女性私立探偵の劉雅弦に依頼がやってくる。依頼主は実業家の娘からで、友人の岑樹萱を探してほしいというものだ。劉雅弦は調査を始めるも、岑樹萱の父親は事業で失敗して夜逃げをしており、彼女も行方しれずだった。足取りを追い続ける探偵劉雅弦であったが、背後に隠された事実が見え隠れするようになり…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 これまた渋みのあるいい小説!
一人称視点で描かれる私立探偵小説。人探しから始まる物語で、着実にストーリーが展開されていきます。全編通して探偵その人の背景や人間性がじっくりと感じられて、体の中に彼女の魂が入り込んでくるようです。
手がかりである人脈とひとつずつ相対していくのですが、それぞれの人生が伺える会話が豊潤で生き生きとしてる。序盤は人となりが分からないのですが、読みすすめるほど人間身が感じられ、自分自身も探偵になってしまったような錯覚をうけるのです。
そして中盤からは想定していなかったほどストーリーが大きく動き始める。アクションあり、誘拐劇ありと小説がパワーアップ。事件の背後にある人間関係も更新がされ、それぞれの歴史に重みが増してくるんすよ。物語の後半に差し掛かり、事件解決の流れになるのですが… 実はここからが本作の真骨頂なんです。
本作で推したいのは、主要人物がほとんどが女性であるところ。主役の探偵、令嬢、探している少女、実業家の愛人、友人の記者など、例外なく全員が魅力的、パワフルに描かれています。その背景に権力者や男どもの都合があるのですが… もうね、ひとりひとりを抱きしめたくなってしまう。でもおそらくは、そんな慰めや施しは不要と突っぱねられてしまうのでしょう。決して派手でなくとも、魂がある人はカッコイイですね。
また社会性も厳しく描かれています。これほどまでに貧富による身分の差があるのか、街での薬物乱用や犯罪の状況など、中国での現実を目の当たりにできるのです。
喪服の似合う少女は、望むものを手に入れられたのか。彼女はどんな犠牲を払い、その結果幸せになったのか。英文タイトルの意味を噛み締めながら、私は明るい未来を祈らずにはいられませんでした。
■ぜっさん推しポイント
大学生の頃、どんな仕事がやりたいのか分からなかったなぁ。そして大人になって色んな職に就いても、自分がやりたかった仕事なのか疑問をもち続けてました。それでもひとつひとつの仕事をこなしていくうちに、やっとやりたいことが明確になってきましたね。
いつの時代も男も女も、人それぞれの様々な仕事や立場がある。本作に出てくる女性たちは、力強い意識とプライドが感じられて痺れましたね。励ましと元気をいただきました。
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私は好きだった。読み終えると主要人物が全て女性だったと気付く。私立探偵、被害者、全てのモデルケースがここに集まったのかと思う程きちんとされている。1930年代の中国の雰囲気も堪能できる。登場人物の生き方がリアルでミステリを味わいながらかつての中国の貧困さにも言及していて良かった。
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陸秋槎を初読。勝手なイメージでラノベ寄りのミステリを書かれる方だと思っていたが、今作は歴史ハードボイルド作品。
女性の私立探偵、劉の元に、少女から同級生の行方を探してほしいと依頼がある。足取りを追う劉。一見、ただの家出に見えたが、事態は思いもよらない展開に。。。
時代は1930年代。あとがきによれば中国では、この時代にしか私立探偵は成り立たないとのこと。
テンプレートな事件、展開ではあるものの、最近は滅多に見なくなった私立探偵もののため、最後まで楽しめた。
作中の劉のかっこよさは折り紙つき。またラストも非常にやるせなく。でもそこが、なんとも言えない余韻を残す。良作。
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女性探偵・劉のもとへ葛令儀という女学生から行方不明になった友人・岑樹萱を探してほしいと依頼を受ける。
安くはない費用を女学生が払えるのかと言えば、彼女は地元の大物、葛天錫の姪であった。
岑の行方を調べるうちに謎の男に襲われ、妨害された理由を知ったときに複雑な事情を知ることになる。
岑が誘拐されたこととその後の錯綜する人間関係。
単なる友情では済まされなくなったとき、何が残ったのか。
最後まで言葉少なく感情のない岑樹萱(令淑)が、復讐をやり遂げたとき…
劉との会話に寂しさを感じた。
1930年代の中国と女性探偵の活躍という不思議な感覚ながらもこの事件の真相を思うままに楽しめた。
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1934年、中華民国。女性私立探偵・劉雅弦は、葛令儀という女学生から行方不明の友人・岑樹萱を探し出してほしいという依頼を受ける。樹萱の父親が借金を抱えたまま消えたことを突き止めた雅弦は、調査中に謎の男に襲われてしまう。刺客を仕向けたのは、令儀の伯父で地元の大物である葛天錫だった。天錫はなぜ雅弦を妨害するのか。そして、令儀による依頼の真の目的とは。友情、恋慕、哀憫。錯綜する人間関係の中で、雅弦は耐え難い悲劇を目の当たりにする。ロス・マクドナルドに捧げる、華文ハードボイルドの傑作。
しばらくロス・マクドナルドは読んでいないが、影響を受けていることはよく分かった。漢詩の意味が何となくしか理解できないのが残念。もう少し漢文をまじめに学んでおけばよかった。
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1930年代の中国、私立探偵を営む女性のもとにひとりの女子学生が依頼を持ち込んできたことから、彼女は奇妙な因縁まつわる事件に巻き込まれていく。
端正で無駄のない筆致で綴られる、きわめて冷静なハードボイルドの筆致が、まだ年若い作者によるものだと思うとかなり驚く。並々ならぬ博識も、ほかの著作で片鱗を味わったものの本当に凄い。そして堅苦しさを懸念する縁遠い時代設定も「物事がどう進み、誰がなにを企てたか」をスマートに描いているので、意外なほどすんなりと物語を追える。ほんと巧い作家だと感心します。
登場人物たちが良い意味で皆「冷静な大人」ばかりなので、それなりのドロドロとした因縁話ではあるものの、激情を交わす場面はほぼなくて、さっと読んでいるととてもさらりとした読み心地に感じます。少女と探偵の、ほんのひとときの感情の擦り合いが切ない余韻をわずかに与えるくらいです。
こんな筆致でまた探偵物を読んでみたいですが、作者はまたきっと全然違うテイストの作品を仕上げられるんだろうなと思います。凄い方です。
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『ロス・マクドナルドに捧げる』という宣伝句と原尞氏の「私が殺した少女」にも通ずる装丁を見たら手に取らないわけにはいかない。地元の有権者一家を巡る事件というのは正にロスマクだし、V・I・ウォーショースキーや葉村晶を彷彿とさせる女性私立探偵のキャラクター造詣も良い。流行りのミステリーに背をそむけた静謐かつ(良い意味で)地味なハードボイルドが令和の世に新刊で読めるのは中々乙なもの。ラストシーンは実に遣る瀬無いが、退廃的様式美がこれまた心憎い。但し、全体的を通して盛り上がりに欠ける作品ではあり、読み手は選ぶかも。
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久しぶりの華文ミステリ。
たまには読んでみるかぐらいの気持ちだったがなかなかに面白かった。
路線的にはこってこてのハードボイルド。
それもそのはず、逝去40周年を迎えるロス・マクドナルドに捧げる一編とあれば。
その王道の中のそこここにまぶされる中華風味と、序盤で明らかになるものの、あれ、これってもしかして?と引き込むちょっとした設定の妙がにくい。
とある都市省城の資産家の姪が親友を探して欲しいと私立探偵劉の事務所を訪れる。
調査妨害もありつつ、巻き込まれ逮捕もありつつ、細い糸を辿るように行方を探っていく過程で見えてくる2人の少女の関係性。
最終盤の揺り戻しの「なぜ?」に応えるビターな真意も、技巧に凝ることなく意外性を持ったなるほどな帰着でハードボイルド的でした。
なぜか匂わす百合要素は謎。
こんなほんのりでどんな効用が!?
求めている人はこんなんじゃ満足出来ないだろうし、そうでもない人は、え?ってなる。
作者がやりたいだけ。。。
『雪が白いとき、かつその時に限り』はめちゃくちゃ新本格って感じだったのに一転、ザ・ハードボイルドときて作風が分からなくなった。
『元年春之祭』も読んどくかー。
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ハードボイルドというより中華ノワールといった趣の良い意味で雰囲気重視の作品。
謎解きはそこまで複雑でもなく、だけど正解が明かされると胸がスッとなる内容。
男性キャラは基本クズかバカで女性の方が強かに描かれているけれどラスボスの行動原理含めてそこがノイズになる感じもなく楽しめた。