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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二次世界大戦下、アメリカの図書館司書に課せられた任務は敵国の書物の収集。賢く正義感の強いマリアが、ポルトガルの地で終戦を願い孤軍奮闘していく、スリリングな歴史長編。
全くなんの訓練もされていない若い女性の図書館司書を戦士に変える。だいぶ無理筋な設定だと思いながら読んだら、まさかの史実に基づくファンタジーと知ってビックリ。連合国側も枢軸国側も、あらゆる手段を用いて敵を出し抜こうとする焦燥がリアルに描かれていて、ひたすら戦争の怖さを物語っていた。
書物を守り引き継ぐというより、諜報活動がメインで、「本」要素は少し物足りなさを感じる部分も。
誰を信じるのか、どこまで踏み込むのか―――ユダヤ人を助けるためにすべてをかけた支援者たちの勇気が苦境を打ち破る、魂揺さぶる物語。
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第二次大戦、図書館の司書がスパイに… 人間の勇気に無限の力を感じる物語 #リスボンのブック・スパイ
■あらすじ
第二次大戦中のニューヨーク、図書館で働く司書のマリア。戦争を終わらせたい彼女は、枢軸国の刊行物をマイクロフィルムに収めるという特殊任務に就き、ポルトガルのリスボンに旅立つことになった。
リスボンの書店で働く青年ティアゴは、迫害をうけるユダヤ人を逃亡させる援助をしていた。マリアはティアゴに刊行物収集の協力を仰ぐようになり、そしてさらに難しい任務にも挑んでいく…
■きっと読みたくなるレビュー
第二次大戦の史実を基に、戦争終結に命を削った若者たちのスパイ小説です。
主人公マリアは中立国で敵国の刊行物を集めて写真にとる諜報員、実際にこういうスパイは実在したそうです。そしてもう一人の重要人物であるティアゴも、ユダヤ人の逃亡を援助したり、書類を偽造したり… もちろんこんな人たちも実在したのでしょう。たくさんの取材をもとに書かれた重厚感たっぷりの作品で、多くの人に体験して欲しい。
本作は戦争や諜報活動という重々しい素材の物語ではあるのですが、しっかりと楽しめるエンタメに仕上げています。特にスパイ小説特有の秘密工作、バレるかバレないか?!といったシーンでは、ヒヤヒヤドキドキの超サスペンスな展開。手に汗握りながら夢中になって読んじゃいました。
一番の読みどころは、主人公のマリアの行動でしょう。もう鬼強、やりすぎなくらい情熱と意思が強いんです。そんなことまでやっちゃうの?!大丈夫かおいって、心配になっちゃうくらい。
ただその原動力となるのはファシズムに対する怒り、両親を不幸に追いやった恨みなんです。正義感があってカッコイイんだけど、命を顧みない狂った行動のようにも思えてくるんすよね。戦争ない時代に生まれてきたなら、もっと平和的で建設的なことで社会貢献ができただろうに。
さらに友人のティアゴも心優しいイイ奴なんだけど、彼もまた戦争という渦の中で溺れることになる。ただ人が幸せになれるよう尽くしているだけなのに、正義と不正の狭間でもがき苦しむ。読んでると胸に穴が開いた感じがして、無益さに悲しくなってくるんすよ。
そして戦争のもっとも醜い部分を見ることになる。混沌に乗じて権力を振りかざしたり、自身の私腹を肥やす外道たちの横顔が目に焼き付く。未だに世界のどこかでは似たようなことが起こっていると思うと、本当に我慢ならないですね。
本来図書館の本を管理する司書の皆さんが、こんな仕事をしなければならない世界なんて悲しすぎる。そして私も気ままに本を読んでられるなんて、幸せな時代と国に生まれたことにホント感謝しなければなりません。
いかに戦争は多くの人間を不幸にしてきたか、戦争の虚しさと恐ろしさをまるごと体験できる一冊です。読みやすくどなたでも手に取ってもらえる作品なので、秋の夜長にぜひ。
■ぜっさん推しポイント
マリアの生き様を見ていると、人間が勇気をふり振り絞ると、無限の可能性があることがわかりますね。特に終盤の交渉シーンはカ��コ良すぎて漏らしそうになりましたよ。
彼女はひょっとすると何万人も救ったかもしれず、さらには戦争すら終わらすことができたのかもしれない。いま世界で起こっている争いごとも、誰かの勇気で解決できることを願わずにはいられないです。
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今まで読んだヨーロッパを舞台にした、第二次世界大戦ものの中でも5本の指に入ると思う程のスパイ小説だった。実在の人物を基にしているらしいが本当にこんな人がいたのかとさえ思ってしまう。
主人公はアメリカ人のマリアと言う司書。マイクロフィルムをもっと広めたいと言う、なんと素朴な希望を持っているが、そこからの飛躍は何なの?と言うくらいに物語は飛ぶ様に進む。映像化されるべき作品。
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飛行機の事故あたりからハラハラが止まらなかった。面白かったが、戦争で辛く苦しい経験をした人達のことを考えると「面白い」と感じていいのか葛藤した。
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第二次大戦中に、米国議会図書館の司書が欧州で本を集めていた、という事は本当にあったらしい。この本は、そこから発想を膨らませ本当にスパイをしていた女性司書を登場させた。
司書としての活躍かと思いきや、本当にスパイ小説だった。訓練なしで、こんな活躍なんて小説ならではかもしれない。
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CL 2024.12.18-2024.12.21
第二次世界大戦中、ニューヨークの図書館司書が枢軸国の刊行物を収集するためにリスボンにおもむく。本に関する物語かと思ったらけっこうしっかりしたスパイもので意外だった。
あっという間に二重スパイになったり、ノルマンディ上陸作戦に大きな影響を及ぼす誤情報を流したり、ちょっと現実離れしたところが気になったけど、史実を基にしているというから驚く。主人公の強い意思に圧倒される。
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ここ2、3年、大戦中の女性の活躍を描いた小説が多く出版されている気がする。
私も何冊か読んだが、このブック・スパイが一番面白い。
主人公の一途さ、スピーディに進むストーリー、生き生きとした登場人物、自然と感情移入ができてとても読みやすかった。
スパイとしての行動は出来過ぎだが、そもそも、派遣されるために取った行動自体がその布石で、素質があったということか。
史実に基づいたエピソードも含まれるということ。
が、それを踏まえても、飛行機事故はなにか唐突。本文の文脈には関連がなく(敵国の陰謀かと思ったが、そんなこともなく…)、生き残った奇跡も軽く扱われていて、ちょっと残念で、この点でマイナス1。
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時は第二次世界大戦下。アメリカで司書をしているマリアが、ちょっとびっくりする方法で司書の諜報員になりリスボンへ。そこでの任務は、焚書から重要な本を守ること。と見せかけて、枢軸国の新聞や本を集め、マイクロフィルムに収めること。(本を送ると嵩張るのでフィルムにする)
その流れの中で、ナチスのユダヤ人迫害から逃げるユダヤ人を命懸けで援助するティアゴと知り合う。
当初、司書はスパイ活動には手を出さない決まりだったが、仕事を続けるうち、新しい任務を任され、マリアはなんと二重スパイに。
2人は戦争を終わらせるため、それぞれの立場で戦っていく。
いつバレるのかとハラハラな展開だった。この物語はフィクションだけど、司書の諜報員は実在していて、マリアの性格もその職員から着想を得たとか。
そして中立であるリスボンはスパイ行為の街だったんだね。中立だからって油断も隙もありゃしない。
ともあれ、史実を元にしたということで、色々学ぶことも多かった。
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戦時下のスパイ、それもスパイ教育を受けていない司書が、大活躍してスリル満点で読んだ。
マリアが真っ直ぐで、物怖じしない性格なので、安心感と爽快感があり、理想的な女性像だった。
他の登場人物も魅力的でハラハラしたけど、最後の数ページは感動して泣いた。
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第二次世界大戦中、アメリカの図書館司書たちがヨーロッパの中立国に配置され、密かに枢軸国の書籍や刊行物を収集していたという史実に基づく物語。主人公のマリアはここぞというときには大胆な方法で自分が信じた道を突き進むのでエンターテイメント性も高い。
戦時中の司書による刊行物の収集ということに興味を持って読んだのにどんどん違う方向に展開していってしまい、思っていたのとは違ったが、ナチスの迫害を受けた多くのユダヤ人避難者が中立国のポルトガルから船出したこと、ポルトガルの秘密警察のこと、リスボンにはスパイが多くいたことなど、興味深い描写が多くあった。