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ありとあらゆる点において興味深く読み応えのある本でした。以下の内容に興味がある人たちへおすすめします。
①西洋哲学について知りたいけれど、西洋よいしょ!東洋卑下!という偏見に溢れた本は読みたくない
②理性的に整備されていても、情緒的な感動を楽しみたい
③生きるための参考になるような「コツ」「Tips」を探したい
④激動の令和の時代に、極端な情報に惑わされないようになりたい
⑤善悪二元論以外に、この世の中をどう見つめていけばいいのか知りたい
いかがでしょう。
図書館のリクエストなども利用して、気楽にお楽しみ頂ければ幸いです。令和6年11月現在にして、すでに三刷の大好評のようで、筆者お二人を慕うわたくしとしましても大変嬉しく思います。ベストセラーはリクエストが通りやすいので、是非、皆さんの地元の図書館に置いてもらうよう、一度通ってみてくださいませ。
※
以下、ネタバレを含みます。
感想 兼 個人的雑記となります。
時間の許す方のみお付き合いください。
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私が大いに参考になったのは、本居宣長さんの「たをやめぶり」が日本らしさの大切なことであるという旨でした。
加えて、テセウスの船と人間の新陳代謝を喩えた巧さに感動したところです。
船の部品を何度も修理していると、もう元々の船であった材料は何も残っておらず、それでもその、かつてテセウスの船であったものを、これからもテセウスの船と呼んでも良いものであろうかという疑問。これはまさしく、人間も3ヶ月もすれば細胞が入れ替わると言われていますが、どうしたって、わたくし、渡鴉は渡鴉のままですし、皆さんもそうなのです。では、わたくしや皆さんは、何者なのでしょう。その答えの一つとして、アリストテレスの「類が個物に“らしさ”を与えている」という言葉であると示したのもまた———本書の巧さだなぁと感動させてもらいました。
わたくしという細胞群、皆さんという細胞群。それらは綺麗に入れ替わったとしても、やっぱりわたくしであり、皆さんなのです。例えるなら、この国に生きる人は、200年前に生きた人は、おそらく軒並み絶えているはずですが、それでも私たちは日本人のままですから。
ヘラクレイトス
「あなたは何度も同じ川に入ることができるけれど、常に水は流れていくから、同じ水ではない。あなたは同じ川には入れない」
鴨長明
「ゆく河の水の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」
この2人の共通項を見出したのも情緒的な着眼点です。