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970年代後半から80年代にかけてのヴィンテージ・コンピュータ/レトロPCのカタログ本。
既存のパーソナル・コンピューター黎明期を扱った書籍との違いは、機器の機能よりプロダクトデザインに注目して編まれたという点にあり、そのため図版も多用した目で見て楽しい本になっている。また、取り上げられる機種も当時のベストセラー機であるNECのPC88シリーズやPC98シリーズを取り上げないというかなり尖ったセレクトとなっているのも面白い。勿論、この手のカタログ本ではアレが入っていないコレが入ってないという不満が出るのは当然で、自分としてもデザイン性を基準としているのであれば、Next Cube が入っていないのは駄目だろうとか、エプソンのHC-20よりも、京セラデザインのNEC PC-8201の方が洗練されているのではとか、Apple II GSより、Macintosh II じゃないかとか思うところはあるし、MSXについては客観的にみても家電メーカーが多かったことと規格が共通だったため差別化のため多用なデザインの機器が発売されており、当時のコンピューターをデザインの観点から取り上げるのであれば Apple に割いている紙幅をいくらか削ってでももっと取り上げるべきだったろうと思う。
とはいえ、ヴィンテージ・コンピュータ本として図版以外のテキストもなかなか読み応えのあるもので、SHARPのX68000のマンハッタン・シェイプに元ネタがあったという話は寡聞にして知らなかったのでちょっと驚いた。また、内容的にはちょっと唐突な感じもあるがコンピュータと女性について論じたものなどコラム記事も興味深い。電卓については、電卓だけで1冊本にしてほしい。