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これまで繰り広げられてきた人間の強者vs神の九戦、組み合わせ、戦いの過程、決着の様、それらが全て最高であるって前提の上で、沖田総司vs素戔嗚命の剣士対決は、今まで以上に興奮してしまう私がいる。
色んな理由はあると思うけど、やっぱり、この第十回戦で命を削り、力を出し尽くし、自分の全てを相手に感謝と共にぶつけあっている沖田総司と素戔嗚命に好感を抱けるのは大きい。
元々、自分の中で、沖田総司と素戔嗚命が好きなキャラなんだけど、この『終末のワルキューレ』で激闘を繰り広げている一人と一柱が発す熱さを浴びたら、ますます、好きになった。
素戔嗚命の強さを目の当たりにした事で、沖田総司の鬼子としての面は、生前よりも表面化し、素戔嗚命は自分が沖田総司の眠れる力を引き出した事を自覚し、後悔するどころか、この戦いがより滾るモノになった、と歓喜。
そんな素戔嗚命のとっておきの必殺技「天魔返(あまのがえし)」を、持ち前の才能と幕末の経験で攻略した沖田総司だけど、そんな彼の強さを素戔嗚命の積み重ねてきた努力が上回る。
一転して追い詰められ、もはや勝ち目がない、と思われた沖田総司だけど、彼は自分が目指す、と恩人の近藤勇に約束した「本物の武士」になる事を諦めておらず、大ダメージを負った肉体を気合で動かす。
この素戔嗚命との戦いを全力で楽しんだ上で勝てるのならば、自分の命が、今、ここで終わってしまっても構わない、その覚悟に呼応するように、沖田総司の闘争本能「鬼子」は最大限に発揮され、100%を超えた形態「鬼子・散」は、彼が「いつか仲間の為の戦いで使いたい」と構想していた幻の連続コンボ「鳶飛戻天(えんぴれいてん)」を発動させ、そして、ついに繰り出せば必殺(人)技を超える必殺(神)技「鬼爪三段突き」が素戔嗚命の命に届いた!!
これにて、沖田総司の勝利は揺るがない、と思われたが、ここで、まだ終わらないのが最高。まさか、素戔嗚命までもが、剣士としてさらなる高みに到り、またしても、沖田総悟が絶体絶命の窮地に追い詰められてしまうなんて・・・・・・だからこそ、この『終末のワルキューレ』を読むのは止められないし、止めたくない!!
最高のミックスアップを起こす沖田総悟vs素戔嗚命の激闘、どちらが最強の剣を示し、勝ちをその手に掴むのか・・・次巻は、この(23)を凌駕している、と既に確信できる。
この台詞を引用に選んだのは、沖田総司と近藤勇の、年齢や立場などを超えた、漢同士の交わす約束に、グッと熱いものが胸に込み上げてきたので。
言霊ってのは、案外、侮れないものである。
自分を追い詰めてしまう事もあれば、自分の限界を突破するキッカケにもなる。
改めて、言葉が持つ、人に与える、不可視のエネルギーを感じ、私も自分の文章を組み上げたライトノベルで人に楽しめる時間を与える小説家になるぞ、と気持ちが強まった。
「近藤さん・・・」
「ん?」
「ボクみたいな・・・化け物でもなれるでしょうか・・・殺すチカラで暴れる化物じゃなく・・・信念を持って戦う本物の武士に・・・」
「何だ、まだグズグズ言っ��おるな」
「え」
「こういう時は言ってしまえばいいんだ、『なるぞ』とな!!」
「・・・ハイ!!なります!!」
「うむ・・・約束だ」(by沖田総司、近藤勇)
もう一つ、この台詞もまた、グッと来た。
これまでの神だって、戦いの中で、人間の強さを、文字通り、その身で知って、敬意を表してきた。
それでも、やっぱり、この素戔嗚命が、一番、人間に対する想いが神一倍強いように感じた、この感謝が宿った台詞で。
「・・・やっと報われたけぇ・・・高天原を降り・・・剣を振り続けた孤独な日々が・・・・・・・・・報われたけぇ・・・何時か遣う事を夢見て、研鑽してきた剣術が・・・・・・確信したけぇ・・・己の神生は・・・今、この刻のためにあった・・・・・・沖田総司―――ありがとう」(by素戔嗚命)
そして、これもまた、沖田総司の強さを魅せてくれた。
元より、沖田総司は素戔嗚命に対し、ネガティブな思いを抱いてはいなかった。
それどころか、自分に、こんな戦いをさせてくれた彼に、最初から感謝の念を抱いていた。
その気持ちが、自分の信じる「最強」に到達するどころか、人間の壁を突破できたことで、自然と、この言葉として発せられたんだろう。
しかし、皮肉だよな、そんな感謝の気持ちを告げて、沖田総司が繰り出した必殺(神)技が、素戔嗚命の沖田総司に対する感謝も強め、より強くしてしまったんだから。
人が努力の末に辿り着ける領域を「奇跡」と呼ぶのであれば、人ではなく、神である素戔嗚が積み重ねた努力で到達した、ここは何と呼ぶべきなのか・・・
「あなたが僕を頂き“ここ”へ導いてくれた―――ありがとうございます」(by沖田総司)