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読むことの愉しみ、だけか?
2003/12/23 12:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の特徴は読むことに徹しているところである。「小説の解剖学」でも発揮されていた、その小説の表現している面白さを個々の文章が内包しているテクニックを具体的に読み解くことによって解明していく手腕は、さすがといえる。個別具体的な文章そのものから出発して、その文章が生み出す空気、感覚、印象を誰にでもたどりうるプロセスによって、示そうとしているのである。
つまり、小説の面白さは深層や隠された意図、テーマなどにではなく、いま読んでいる文章そのものに明白に示されているのだ、という態度である。
確かに手腕は見事であるし、個々の文章がいかなるテクニックによって構成されているのかを知るには好著であるのは確かなのだが、しかし、小説の面白さなるものが、ここで示されたようなものによって感得しうるか、といえば、不充分であると思う。
個々のテクニックや形式を語ったところで、それが作品全体のなかで、いったいどれほど重要であるのか。個々の作品を読むという行為はおそらく、個々の文章を読むという行為の単純な総和ではないはずである。
本書で不満を覚えるのは、これでは個々の作品に対する体のいい紹介にすぎず、さほど新しい知見やらがないということである。
なによりも、この本でもっとも退屈なのは、すべての文章が「作品」をほめるために書かれているということだろう。このすばらしい作品のすばらしさはこういう部分がすばらしいからです、と言われても、はあ、と思うだけになってしまう。それがこの本の平板さであり、なんだかなあ、と思わされる部分だと思う。
その点、テクニックなどいくらか小説を読めば自然と身に付く、問題はそこにはない、という態度で小説を語る保坂和志とは、対照的とさえいえる。
付録のように収録されている「文章読本」の変遷を祖述した章は、なかなか面白いが短い。
末尾の村上龍との対談は、どうでもいい。ここに本書のもっともひどい部分が出ているように思う。褒め殺しなんだろうか。
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