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著者は金巻隆一氏。アクセンチュア、PwC、IBM、GCAなどで戦略コンサルに従事。
感想。手触り感抜群。ノウハウの塊だ。
備忘録
・「企画」はアイデアを書くだけの意見書ではない。革新的なアイデアほど実現の難易度が上がり、組織内での合意形成が難しくなる。決して全員が賛成することはないその内容について、組織としての意思決定を促し、仲間を作り、力を借り、自分の身の丈をこてる何かをする、それが企画である。
・企画とは、「世の中の変化」と「組織の底辺を流れる現状肯定の感情」の架け橋である。
・安易な「走りながら考えよう」は危険。ただでさえ考えるのが難しいことを走りながらやろうとするのは天才でなければ無理。少なくとも「机上では100%勝てる戦略」を作ろう。その上で実行してみたときの「想定外(競合、技術革新、法規制、自社の力など)」に気づくのはオッケー。やる前から勝てないこと分かっていることは実行に移すのは無駄である。
・「良いアイデアがあれば周囲は賛同する」は論理的には正しいが、実際はそうならない。あなたの前で「企画の内容が理解できない」いう人は、本当に理解できない人もいるが、理解したくない人もいる。企画には、一握りの歓迎者と、大多数の浮動票、何としてもそれを阻止したい熱狂的な反対派が存在する。
・発想の方法論は気にするな。
・「妄想」「発想」「構想」の区分をつけて前に進めてみよう。妄想はどこか馬鹿げたアイデアで人に嘲笑もされるもの。発想は妄想が理論武装化され、その価値を他人に客観的に証明できそうなもの。構想は自社のヒトモノカネといった要素を使って実現可能性が見えてくるもの。
・とにかく「妄想」を増やさなければならない。馬鹿げているモノでも構わない。妄想を許せば一気にアイデアが出てくるだろう。イメージはタバコ部屋の会話。優れた発想は非常識の陰に隠れている。
・簡単に了承されるアイデアは、相手にとって理解されやすいアイデア。すなわち目新しさのないモノだ。誰も顔をしかめる人がいないアイデアならば、むしろ考え直した方が良いかもしれない。
・課題という言葉に気をつけろ。「問題点」に対して「対応策」があり、そこの架け橋が「課題」というのが著者の考え。
・例えば「我が社の課題は◯◯がないことだ」という場合、◯◯さえ獲得すれば問題点は解決するということ。
・「改善」「解決」「解消」も区別しよう。問題点を部分的に対処するのが改善、問題点は存在するけど対応し切るのが解決、問題自体を消滅させることが解消。これを区別できるとアイデアが完璧でなくても議論が進む。
・「1:5の法則」。新規顧客の獲得コストは、既存顧客からの新規受注コストの5倍かかる。
・組織関連系の話。連携がうまくいかなくなると、2つの組織を一つにしよう、となりがち。組織図を変えたり飲みニケーション強化したりだけでは根本的な解決にはならないはず。連携のストーリーを明らかにして、定期的に事業連鎖の状況を数字で確認し合うのが有効。
・著者の「マ��ケット・トライアングル」。ターゲット、バリュー、ビークル(ターゲットにバリューを提供する方法)で考える、という考え。
・新規事業もステージを区別して考えよう。その方が安心する。取引、商い、事業の3つ。取引は「なんか意外と売れた」というイメージ。商いは確実に利益を獲得することを狙って仕組みをセットした状況。事業は売るモノだけではなく資金調達や人の採用と育成なども整い永久運動として活動が続く状況。
・正しい戦略は、正しく弱点を持つ。そもそも戦略とは、ヒトモノカネという経営資源をどこかに寄せることである。そのため新たに弱くなる部分が当然ある。
・タスクをアクティビティ変える。さあ始めようとなると、だいたい市場調査するための、戦略の策定のための、具体的なアプローチ方法を考える、とかになりがち。企画のための調査のための企画を作る、に近い。大きな構想の最小の一歩として、今日の午後に何にするか。それを考えるとタスクがアクティビティに変わる。
・企画者と周囲の人の熱量の差は、当たり前に存在する。熱量の上がっていない人に大量の資料を用意しても、企画は前に進まない。まずはざっくり「結論(企画がうまく実行された場合に獲得できるモノ)」と「実行方法」の2つを整理してみよう。