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「フキサチーフ」とは、画材の一つで、完成した作品が色褪せたり擦れて剥げてしまわぬように画家が最後に絵に吹きつける定着液のことだそうです。
このエッセイは、松下洸平さんが、日々の景色や出会いを書くことで描写し「。」をつけて整理していくことで、日常の「フキサチーフ」になればいいな、と思って付けたタイトルだそうです。表紙の絵、中面のイラストは、松下さんが描いているそうです。
松下洸平さんの「洸」の字は、“水が光を受けてキラキラしている様”を表し、才能が噴水のように噴き上がって輝きますようにと、画家であるお母様が選んだ漢字だそうです。
松下さんは、このエッセイを『ダ・ヴィンチ』誌で連載することになった時、新しい机と椅子を買ったそうです。新しいことを始める時は、まずその道のプロだと思い込むようにしているそうで「思い込み力」と呼んでいるそうです。また、「本気で俳優になりたい」と思ったときには無計画に夢を見ていたそうで、先の苦労など知らなかったことが良かったと言っています。これを「無知力」と呼んでいるそうです。
別に「推し」ではないのですがw、内面に何か興味深いものを持っておられそうな方だなと(わたしは)思っていて、この本を読んでみたくなりました。
例えば、「運転手さん」という章が面白かったです。
ある日、松下さんがタクシーに乗り、スマホでInstagramをみていた時、運転手さんが話しかけてきました。「お客様、つかぬことを伺いますが、UFOを見たことがありますか? ご乗車いただいたお客様に時々この質問をするんです。」、「これまで聞いた469人のなかで、66人のお客様があると答えてくださいました。」と。
で、この運転手さんは4回みたことがあるそうで、道すがらその時の様子を聞かせてくれたそうです。
そして、目的地に着き、タクシーを降りる時に運転手さんが言った言葉がカッコイイです。
「最近はスマホを見ながら歩く方も多いですが、時々空を見上げて立ち止まる時間もいいものですよ。私が言いたいのは、そういうことです。ご乗車ありがとうございました!」
俳優さんであり、歌手であり、またエッセイなどでも発信をしている松下さんには、日々の出会いや生い立ちなどに、わたしの知らない生活や考え方があります。エッセイを読む楽しみは、そういう知らない世界にいる会ったことのない方の人となりを垣間見ることができることかもしれません。
ご興味湧きましたら、ご一読ください。