福原流「読書のすすめ」
2009/11/17 08:27
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の福原義春氏は資生堂の第十代社長であり、現在同社の名誉会長である。いうなれば、超一流企業のトップである。その氏がビジネス書ではなく、読書について書いたのが本書である。しかも、けっして片手間に書かれたものではなく、実に内容の濃い「読書のすすめ」といっていい。
いかにして「読書人」福原義春氏が誕生したかは、たくさんの書名が列記される、本書の第一章「私の読書体験」に詳しい。その章のおわりにこうある。「私という人間は今まで読んだ本を編集してでき上がっているのかもしれない。逆にいえば本によって編集されたのが私だ」(41頁)。そんな氏だからこそ、現代の「読書離れ」現象には厳しいものがある。
「どうして本を大学や図書館や書店の店頭に積み上げたままにしておくのか。それは人生にとっての”偉大な損失”ではないだろうか」(2頁)「忙しい時期にこそ一日十分でも本を読んで、吸収した栄養をその時からの人生に、仕事に役立てるべきなのだ」(4頁)。まことに同感である。
本がすべてではないが、少なくとも本は私たちの人生をより豊かにしてくれる。氏の「読書のすすめ」に教えられることは多い。
そして、福原氏は読む側だけに厳しいのではない。本を作る側、あるいは販売する側にも、第六章「出版・活字文化の大いなる課題」で苦言を呈している。
「本を消費財化してしま」っている出版界、書き手の意欲を高めない編集者、プロデューサー不在の出版社、不親切な書店、ベストセラーばかりを揃える図書館。そして、無関心な読者。
本を愛するゆえの苦言だと思うが、それらはやはりそれぞれ真摯に受けとめるべきだ。そうしないと、本当に本文化は滅び去ってしまう。
読書は楽しいだけではない。時には悲しい思いもするし、記憶することに終始することもある。あるいは、深く感銘し、生きる糧ともなるだろう。
読書を苦手にする人もいること自体は致し方ない。そういう人にも読書の素晴らしいさを、少しでもわかってもらいたい。読書を愛するものとして、本に満たされるものとして、福原義春氏のこの本を強く薦める。
◆この書評のこぼれ話は「本のブログ ほん☆たす」でご覧いただけます。
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資生堂の現名誉会長の福原義春が書いた本。
さすが、大企業の元社長は並じゃない。
教養の幅が広い。
読んでいる本は歴史書や哲学書から、ユーモア本まで広範だ。
その中でも、トフラーの富の未来、ドラッカーの本などは現代社会を俯瞰するために役立ちそうなので読んでみたい。
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「人が本を読まなくなったのだという。それでいいのだろうかと怪しむ。何やかやと忙しくて時間がないからだともいう。そんなに忙しければ、朝起きた時に顔を洗わなければいいじゃないか。晩飯を抜いたらどうだろうか。それは困るというなら、どうして本を読むことだけをやめてしまうのか。」
「私という人間は、今まで読んでた本に編集されてでき上がっているのかもしれない。」
「私は、教養とは、情報(データ)や知識(インフォメーション)が元の形のまま集積したものではなく、人間という入れ物の中で知性(インテリジェンス)に変換された人間性の一部ではないかと考える。」
「日常の経営は、日々変化する個別具体の一回性の出来事への対応である。したがって、一般的な論理分析型モデルだけではその本質を理解できない。繊細な観察から日常見過ごしている『あっ』という気づき(文学的感性)から、その背後にある真善美の根拠を考え抜き(哲学的思考)、起承転結の物語(歴史的流れ)のなかで、適時の判断と行為を起す状況認知能力が必要である。これは自らの生き方に照らし、特殊(個別)のなかに普遍(本質)を見る教養の能力である。」
「本の選択とは、自分が何を読むかを編集することだ。そして、本を読んでしまえば、やがてそれらの本によって編集された自分が出てくるのである。」
「人が何を食べているかを知るということは、その人を知ることである。同様に、その人が何を読んでいるかを知ることもまた、その人を知ることになるのだ。」
「結果として、ある分野のことを追求したことが別の分野で役立ったし、仕事と私生活の境界がなくなったことで、仕事も私生活も充実した人生を送ることができた。それを「複線人生」と名付けたのである。これからの企業人には必要になるコンセプトではないだろうか。」
「かつてミシガン州立大学で「マーケティング」の講義をされていたウィリアム・レーザー教授が、経営のいちばん基礎の部分にフィロソフィー(哲学)、その上にプリンシプル(思考・行動の原理)、さらに上に載っているのがストラテジー(戦略)だとおっしゃっている。」
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ここで紹介されていた、ラ・ロシュフコー○言集がフランス映画の
ココ・アヴァン・シャネルの中で紹介されていた。
木を植えた人を社員全員に配ったそう。
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人間は知ることによって人間になる。そしてそこから哲学が誕生する。
もちろん本を読まなくても生活はできるし、人生の長さは変わらない。しかし人生の質は大きく違う。
古典を読む。昨今のベストセラーは数年で消えてなくなるが古典は消えない。
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「読んだ本によって、人は編集される」をテーマに、これまでの読書歴を綴りながら、本を読むことの効用を説く一冊。
著者は資生堂名誉会長の福原氏。
文章に一種の美学を感じる。
氏がこの本の中で取り上げた書籍について読んでみたい気持ちになった。
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資生堂の会長が書いた読書の大切さを説く本。
装丁が読みやすいな、と思った。
ガリア戦記、日本人とユダヤ人を読んでみたいと思った。
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”生きることは学ぶことだ。「学ぶ」とは「覚える」ことではなく、「知る」ことだ。本を読まなくても生活はできるし人生の長さに変わりはない。でも、われわれの祖先が経験し、考えたことが本になって膨大な「知」が残っているのだから、それを読んでいくことによって、私たちの人生は厚くなり、深くなるのではないだろうか。”
三冊
ラ・ロシュフコー「ラ・ロシュフコー箴言集」
ドラッカー「企業とは何か」
リチャード・ファインマン「ご冗談でしょう、ファインマンさん」
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自分は読んだ本によって「編集」されたと、語る財界の読書人。
「よい本を読みましたか?」と聞きあいそこから語り合いが始まる「書友」という言葉も知った。
こどもの時代から続く読書で知ったことが人格の血となり肉となる。そして知る喜び、感じる力、思索する種となっていくことを知る。少しでも近づきたい、自分も・・。
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ダニエルヤンケロビッチ 人から影響をうけるように努めれば、自ずと人に影響を与えるようになる
カエサル ガリア戦記
雑学 一問一答適に設定された問に正解を与える能力のこと すでにh知っていることを取り出すことしかできない
教養はまだ知らないことをフライングする能力で有る 内田樹 知に働けば蔵が建つ
内村鑑三 日本及び日本人 新渡戸稲造 武士道 岡倉天心 茶の本
加治将一 幕末維新の暗号
谷崎潤一郎 陰翳礼讃
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読書好きなおじいさん(失礼)のお説教だと勝手に思って、期待せずに読み始めたら、何の何の本を読む事の大事性を、具体的に著者推薦の本を挙げながらご教示頂けました。
特に筆者が影響を受けられた本は、私も是非読んで見ます。
10/05/23-81
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読書体験によって付けられる力について触れているだけでなく、書かれている古典のレビューが刺激的!
ガリア戦記が読みたくなった。
個人の体験・知識が詰まった本を読むことは故人と対話すること。自分1人でなんでも経験できる訳はなく、歴史の上に立っているからこそ人類は発展してきた。つまり、本を読まないとは、自分で考え、体験したことしか無いと同じ。
人は読んだ本によって編集される。例えば、人生で触れてきたものの中から影響力の強いものを取りこみ、自己は形成される。
本を選ぶとは、自分を編集すること。
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福原善春さんが、膨大な読了書籍のなかから、特におすすめしたい良書を面白く紹介している本。さらっと読めます。
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さらりと読めて、参考になる内容だった。
忙しくなると、余計に読書量が増える自分にとって、どんな本を読めばイイかの指南を与えてくれた。
紹介された中で気になるものから読み進めたい。まずは、萩原朔太郎かな。
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こんな方がリーダーとして率いている組織に入りたい!と、やっぱり思いました。資生堂のメセナや写美の在り方をいつもステキだなとあこがれていたので。
そういえば、以前の会社で、社長からもらった本をきっかけにその系列の本を読むようになったことがあったので、リーダーのオススメって影響力がかなりあるなあと思いました。
本の本ですが、決して難しくなく一気に読めるところも魅力。