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投稿者:げん - この投稿者のレビュー一覧を見る
御巣鷹山に墜落した日航機から搬出された遺体の身元確認を行い遺族に引き渡す作業に従事した方の記録。非常に生々しい場面もあったが、その惨状をうかがうには充分であった。途中、これでもかというような詳細な墜落遺体の描写が幾度となく描写されているが、実際にはその何倍も、いや何十倍も悲惨だったのだろうなと想像がつく。幼い子供、家族を支える社会人のあまりにも唐突すぎる死に直面し、今を大事に生きようと感じた。
航空機墜落の原因に目が行きがちでしたが
2023/09/29 21:25
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投稿者:バベル - この投稿者のレビュー一覧を見る
日航機墜落の事実は知っていますが、どうしてもその原因に目が行きがちでした。多くの方が亡くなられたことも知っています。しかし、多くの方が亡くなり、家族のもとへ帰られることに全身全霊をそそがれた、警察官、医師、看護師、地元の方々などのことは、恥ずかしながら知りませんでした。本書を手にして決して忘れてはならない事だと思いました。
日航機事故における警察、医療関係者の献身的な活動の記録
2015/09/09 16:10
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
520人が一瞬で犠牲となった日航123便の墜落事故。その遺体の検屍、身元確認と遺体の引き渡しの最前線で責任者として現場を指揮した警察官の方が自らの体験を記したノンフィクション。航空機が墜落する事故というのがいかに凄まじい衝撃を搭乗者に強いるのか、本書に記録されている遺体確認の現場の描写によって描かれています。頭部、胴体、手足がバラバラになり、場合によっては隣り合ったり前後の座席の乗客の胴体にめり込んだ部位を丁寧に分けながらの身元確認。腐敗の進行が著しく早い真夏の現場で、凄まじい死臭と格闘し続けた警察、医療関係の人々の献身的な活動の記録です。どんなに小さな部位も身元の誤認をさせない、少しでも綺麗な状態で遺体を遺族に引き渡したいという執念に近い矜持をもって作業にあたった関係者の人々の姿は自分たちの仕事に対する尋常ではない責任感とプライドを感じさせます。大きな犠牲を伴う事故の現場の記録ですから、綺麗ごとではなく、かなり残酷で読み進むのが辛くなるような描写もたくさんあります。しかしそういう状況の下でこそ「誠意をもって対応する」とはどのような事なのかを本書は読者に訴えているように思えます。
最悪の航空機事故のバックヤードでの修羅場
2024/02/27 16:51
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投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は群馬県警で大久保清事件、連合赤軍リンチ殺人事件等様々な事件の捜査に関係してきた叩き上げの警察官である。
1985年8月12日に発生した日航123便の墜落事故は航空機事故史上最悪の事故として記憶されているが、未だ二十代の若者だった私にとっても生まれて居住している群馬県(状況次第では埼玉県や長野県に墜落しても不思議は無かった)での出来事として記憶に残っている。
著者はこの史上最悪の航空機事故において、遺体確認というバックヤード業務を担当した際の出来事を本書に記しているが、連続殺人事件等で死体を見慣れた感(「穴掘り県警」と揶揄された)のある著者においてもその確認作業は過酷な記憶として残っているのがよく理解できる。
事故現場である上野村の御巣鷹山での遺体捜索も地獄図絵であったが、藤岡市の体育館での遺体確認もまた修羅場であったことが本書から理解できる。
上毛新聞社記者であった横山秀夫氏による「クライマーズハイ」が地方新聞社記者としての体験からの小説とすれば、こちらはノンフィクションとしてひたすら実際の体験を綴っていて、事故遺体の悲惨な状況もそのまま書かれていることから、気の弱い方や虫が嫌いな方にはお勧めしないし(個人的には☆4だが向いていない方には☆ゼロという感がある)、家族の遺体を探す遺族と確認する側の衝突もそのまま書かれていて生々しい。
警察官としての使命感から遺体確認に従事した著者もそうだが、「一刻も早く遺体の身元を判明させ、遺族の元に返したい。」という気持ちで過酷な作業に従事した医師や看護師には頭が下がる。
日航123便の墜落事故は史上最悪の航空機事故として記憶されているが、今後このような悲惨な事故が発生しないことを切望するものである。
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内容紹介
「遺族の極限の悲しみ、想像を絶する修羅場」を描きつくしたと、朝日新聞等で絶賛されたベストセラー、待望の文庫化。確認までの127日間が鮮烈に描きだされる。
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少々読みにくかったが、現場の人たちの懸命な身元確認作業や事故の悲惨さ、命の尊さがひしひしと伝わってきた。亡くなられた方々に合掌。
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現代日本人として忘れてはならない、
学ばねばならない大事件のひとつだと思う。
事故時のやるべきことを取りまとめた
マニュアル化ではなく、
あれほどの大惨事の混乱の中で、
どれだけの人間が、被害者のために、
遺族となられた方のために「安らかなれ」
という気持のもとに、自らの職務に忠実にして、
人間として、できる限りの力と誠意を注ぎ込んだのか。
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520人が一瞬で犠牲となった日航123便の墜落事故。その遺体の検屍、身元確認と遺体の引き渡しの最前線で責任者として現場を指揮した警察官の方が自らの体験を記したノンフィクション。航空機が墜落する事故というのがいかに凄まじい衝撃を搭乗者に強いるのか、本書に記録されている遺体確認の現場の描写によって描かれています。頭部、胴体、手足がバラバラになり、場合によっては隣り合ったり前後の座席の乗客の胴体にめり込んだ部位を丁寧に分けながらの身元確認。腐敗の進行が著しく早い真夏の現場で、凄まじい死臭と格闘し続けた警察、医療関係の人々の献身的な活動の記録です。どんなに小さな部位も身元の誤認をさせない、少しでも綺麗な状態で遺体を遺族に引き渡したいという執念に近い矜持をもって作業にあたった関係者の人々の姿は自分たちの仕事に対する尋常ではない責任感とプライドを感じさせます。大きな犠牲を伴う事故の現場の記録ですから、綺麗ごとではなく、かなり残酷で読み進むのが辛くなるような描写もたくさんあります。しかしそういう状況の下でこそ「誠意をもって対応する」とはどのような事なのかを本書は読者に訴えているように思えます。
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1985年8月12日、今から30年前に、群馬県の御巣鷹山に日本航空123便(羽田発伊丹行)が墜落し、乗員乗客524名のうち520名が亡くなった。本書は、その現場で遺体の身元確認の責任者を務めた群馬県警高崎署刑事官(当時)による、127日間の壮絶な記録である。
著者が警察官を退官後執筆し、1998年に発刊、2015年に文庫化された。
本書には、著者がまえがきで述べる、「窓という窓を黒い幕で覆った体育館の中で、汗みどろで作業をつづける医師、看護婦、警察官らの集団。おびただしい数の死体が放つ悪臭と、もうもうと漂う線香の煙。時折、館内の喧騒をつんざいて走る女の悲鳴、号泣、そして叫喚の声。まさしく地獄絵図としかいいようのないおぞましい光景」が約300頁に亘って描かれており、ときに涙を堪えられない、心に迫るものである。
「死んで神に召されたので、遺体を引き取る必要はない」という西洋人がいる一方で、人としての形を留めず、一見、木の根や火山石にさえ見える離断遺体や部分遺体の身元確認を続ける、現場の医師、看護婦、警察官たち。。。生と死の捉え方は宗教や文化により一様ではないが、こうした宗教観・死生観・価値観を体現する人々が、日本を日本たらしめ、支えているのではないかとさえ思う。
ノンフィクション作家による取材ではなく、現場の警察官だからこそ、センシティブな心の動きが描き得ている作品とも思う。
全世代の必読書のひとつと言える。
(2015年7月了)
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何年経っても忘れられない衝撃の事件が日航機墜落事故だ。
山肌から立ち上る白煙、生存者の救出、黒焦げの木々、、、
悲惨な墜落現場ばかり地獄絵図として取り上げられているが、もう一つの地獄絵図が体育館にあった。
猛暑、たちこめる悪臭、遺族の嘆きや叫び、怒りに満ちた空間。
そんな中で、犠牲者の身元確認班長を務めた筆者が検屍から身元確認引き渡しが終わるまでの127日間を振り返った本。
最初の4日間、不眠不休で検屍や身元確認に携わった警察官、医師、看護師の方たちの早く犠牲者を家族のもとに返したいという思いに胸を打たれた。
最後の一人、1体まで諦めずに絶対家族に返したいという情熱、執念には感動した。
また、日赤の看護婦さんたちのやさしさと強さにも心打たれた。
こんな闘いが遺体安置所で行われていたとは。
なんでこんな事故が起きてしまったのか
なんでこれほど多くの犠牲者を出さなければならなかったのか。
なんで私はいまだにこの事故に囚われているのか
まだまだわからない
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普段は道徳心や宗教的な感情を喚起されることは少ないけど、肉親の遺体を必死に探して確認してあげたいという人たちの記述を読むと、自分にも少なからずそういった感情があることが確認できる。同様の境遇にあれば自分もそのようにふるまうだろうし、そういった意味では、何事も経験にまさるものはないんだろうなということが分かった。遺体の確認作業に従事した警察官や医療従事者の自分がやらなければ誰がやるという奉仕の精神は、とかくシニシズムに陥りがちな自分の生活や態度からは非常に新鮮でヒロイックに映った。自己犠牲の精神は一歩間違えるとあやうい発想になりかねない危険性はあるとわかってはいつつも。
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明後日の8/12に日航機墜落事故から35年が経つ。
もし令和になった今同じ事故が起こったならもっと35年前より楽に身元確認ができたのかな。
DNAとかで。
が、こういう哀しい事故は起きない空の安全を心から祈ろう。
しかし元警察官が書いた本。すごいなー。私も小説書けるのかな〜
なんて思ったのでした。
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悲惨すぎる。初めて読んだ類で難しい言葉も出てくるが、興味引かれる内容。突然の飛行機事故。被害者、遺族の無念の想いは計り知れない。
日本と海外の思想の違いが遺体の扱いによってわかると書いてあったが、自分は完全に日本型とおもった。遺族の遺体はやっぱり持ち帰りたいだろう。
愛する人に看取られるということは本当に幸せなんだと思う。突然の死というのは、本当に突然訪れる。読後の感覚を忘れなければ、周りの人をもっと大切にできるだろう。
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日航機墜落事故の遺体安置所での壮絶な4ヶ月を指揮した刑事官のルポ。凄惨な遺体の数々、過酷な遺族対応、不眠不休で遺体の清拭や身元確認にあたる現場のスタッフたち。あまりに過酷な状況下で遺体の前で無意識に小躍りを始める検屍医やなかなか身元が判明しない少女の頭部を毎夜大事に抱えて話しかける刑事など、途方もない修羅場のせいで、正気を保てなくなっていく様子が鮮明に描かれていた。520人の死者のうち、肉親が面接で本人確認できたのはわずか60体という数字が飛行機事故の悲惨さを物語っている。警察、歯科医、看護師など現場のプロフェッショナル達の力があって4ヶ月の身元確認が終わったものの、従事者のその後の心の傷は計り知れない。海外と日本の遺体に対する扱い方の違いについての章は宗教観が如実に表れていて面白かった。
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日航機墜落事故の検屍現場。警察官と医師達の記録。
何度涙が出たことか。
悲しすぎるので違う目線で読むことにした。
通常の事件における検死のルールを当てはめたらとんでもなく仕事がまわらない。それを現状の状況に最適化し、フォーマットを決め、進めながら見直していく。まさにPDCA。
現場を見てないから既存ルールを適用しようとする上位組織と、感情論で訴える遺族達。その全体を俯瞰しながら統制するリーダーはすごい任務だったろうな。
各方面の第一人者含めた役割分担。
遺族の気持ちに寄り添う日赤の看護婦(当時の呼び方)達の活躍も大きくあったろう。
未曾有の事態に対し、即席で作られた組織でどう対応していくか、その仕事の凄さを見た気がした。
もちろん、従事した全員の身体も精神も削りながらの仕事だったことも深く刻まれた。
驚いたのはキリスト教徒の外国人。最後まで一部でもいいから肉親の遺体を見つけようと執念を燃やす日本人に対し、キリスト教徒の考え方は精神と肉体は別だから、この有様では生きているまい、と確認できればそれでいいと。
海外で飛行機事故にあったら現地の土の中で眠ること確定。絶対に落ちませんように。