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海の城 海軍少年兵の手記 みんなのレビュー

  • 渡辺清(著者)
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デタラメ満載の三文小説

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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず冒頭に出て来る「空母千歳」は昭和18年初頭には水上機母艦から改造される前なので存在しない。「内地を出てから」トラック島に向かうのに何故か台湾とフィリピンの間にある「バシー海峡のど真ん中で」が出て来る。随分と遠回りして貴重な重油を浪費するものだ。おまけに「グラマンに襲われたり」って、どこから出撃してきたの?中国大陸にある基地?国府軍なり在華米軍なりに海軍や海兵隊が使う機種が配属されたとは初耳で、すげぇ航続距離があるものだ。潜水艦ならまだしも、この時期にアメリカ海軍の空母が「絶対国防圏」のど真ん中に出撃していたのか?角川新書版「戦艦武蔵の最期」の初刷の冒頭には脱落した個所があるが、その中に「ラバウル水域に作戦中で、本隊より一日入港の遅れていた重巡最上を旗艦とする満潮、朝雲、山雲の第四駆逐隊」という個所がある。レイテ沖海戦の直前の「ラバウル水域」など敵中に孤立しているので、そこまで行く前に米豪軍に攻撃されて戻ってこないのが筋だ。これと同じ。
 出だしからこうなので「駆逐艦五月雨」の「主砲の一番砲手」(40頁)とあるのに451頁には「五人が同じ銃座についていて」に変わっている。また451頁には「スラバヤ沖に、ミッドウェーに、そしてソロモン海に」とあるがスラバヤ沖海戦は連合国海軍との海戦のはずだが。ミッドウェーは「内地」と作戦水域を往復しただけで「ソロモン沖」は第二次ソロモン沖海戦の事らしいが陸奥の護衛について実戦には参加していないとか。「一度なんか砲弾の破片で、戦闘服のうしろ襟をもっていかれた」とか「至近弾に吹っ飛ばされて」って少なくとも五月雨が撃沈したのは昭和19年で「戦艦武蔵の最期」にある「海軍法規に成文化されているわけではないが、艦の沈没するときは、その原因がなんであろうと、艦長は艦と運命を共にするのが日本海軍の伝統」云々と違って艦長は救助されて改めて艦長になった駆逐艦初春でも「運命を共に」しないまま「内地」で駆逐艦柳の艦長として終戦を迎えている。一番砲塔に「砲弾の破片」が飛び込んでいたら、その時点で誘爆していたのではないか?それとも「銃座」なので対空機銃座なのだろうか?それ、「戦艦武蔵の最期」じゃないのか?
 昭和16年紀元節の翌日の4月30日に海兵団に入団して4か月間の海兵団教育を終えてすぐに海軍砲術学校に派遣されるとは想像もつかないような「優秀な水兵さん」なのだろう。あるいは金鵄勲章か感状ぐらい貰っているかもしれないし上聞に達していたかもしれない。
 やたらに不敬な表現がポンポンと出て来る割に終戦直後までは「忠良な臣民」だった「設定」のはずなのに反発したような描写がない。
 渡辺清は思いつくままに昭和天皇と帝国海軍をこき下ろせば済むのかもしれないが、よくもまあデタラメな記述や描写で満載の三文小説が朝日新聞社や岩波書店を経てKADOKAWAに来たものだ。いっその事、KADOKAWAは吸収合併した新人物往来社が刊行していた吉田清治の「朝鮮人慰安婦と日本人」も復刊したら?KADOKAWAは手塚正巳の「軍艦武蔵」のDVDを出した事があるのに「渡辺は十六歳で志願し、二等水兵となった」と渡辺清が「志願」した「設定」は昭和16年なのに陸軍と混同したのか、それとも昭和17年に制度が変更された時点の最初の階級と間違えたのかとしか思えない人に解説を書いてもらったものだ。

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