求道半さんのレビュー一覧
投稿者:求道半
バレてる!カクテルナイト 1 (アフタヌーン)
2021/04/12 23:56
ノンアルコールシードル
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きらめき市には怪人が出没する。
極度のストレスを抱える老若男女が、何らかの作用によって、個体差のある異形の姿となり、一般市民に対して、暴言を浴びせたり、暴力行為を働いたりするのだ。
そのような迷惑行為を止めさせ、お灸を据えて、怪人を元の姿へ戻らせられるのが、カクテルナイトである。
きらめき市立きらめき第三高等学校に通う一年生の二人の男子、大地陸と天上空は、良き友人関係を保ちつつも、それぞれ、相手に対して、秘密を抱えていた。
カクテルナイトは四人組の女の子だが、その正体は不明である。
彼女らは、雑誌やテレビで、大々的に活躍が報じられる、アイドルのような正義の味方だ。
陸はカクテルナイトのバレンシアに恋している。
空のお尻を見ると、陸は顔を赤らめ、昔、バレンシアに助けてもらった時に見た、彼女のお尻を想い出す。
陸は、バレンシアの正体について、何か勘違いしているのだろうか。
カクテルナイトの正体を暴こうとする者が、きらめき市に潜伏しているようだ。
第一巻では、一話に一怪人が登場し、各話の構成はカクテルナイトが敵を退治して話が終わる形式である。
コスチュームが破れたり、お風呂の場面があったりするものの、良い子に悪影響を及ぼすと保護者から騒がれるような刺激的な描写は皆無なので、誰もが安心して読める作品だと言えよう。
但し、陸の股間は衆目に曝されるので、その点は留意してほしい。
高校一年生の男子の乳房も、プールの時間に、見られる。
高山氏が作画を担当する「不倫島」を読めば、本作が、如何に、健全な内容の作品であるのかが、分るであろう。
バレンシアが変身を解くシーンは、他に類例を見ない、斬新な演出で描かれるので、必見だ。
ボーンコレクション 1 (ジャンプコミックス)
2020/08/10 00:52
骨肉ちゃんぽん
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戦闘中、力尽きた少年の陰陽師が女性の胸に手を触れるのは、相手の同意が得られれば合法的な行為である。
だが、妖怪の女性の胸に手を触れて、その力を転用するのは、御法度だ。
名門の出の若き陰陽師、迅内カザミは、そのような大罪を二度も犯したので、死刑宣告は免れない。
妖怪の白羅さんは、年下の人間の男の子に、胸を触るように強要する。
しかし、白羅さんは阿婆擦れ女ではなく、ある目的の為に、陰陽師のカザミに、胸を触るようにと、命令するのだ。
白羅さんはカザミと一緒に骨を集めようとしているのではない。
目的の為には手段を択ばない白羅さんは、押しかけ女房のように、カザミの部屋を占拠した。
カザミは父や兄と同居しており、迅内家はその対応にてんやわんやだ。
カザミは白羅さんの豊かな胸元に見惚れて鼻血を出し、白羅さんに弱みを握られた兄のアキナは妖怪の下僕と化す。
カザミの身の上を案ずる幼馴染のりのちゃんは、白羅さんへの対抗心を剥き出しにして、実力を行使し、各所で、混乱に拍車をかける。
昔、カザミが妖怪の力を借りた仲良しの河童は、陰陽師によって退治されたらしい。
白羅さんは、身体は柔らかいのに、骨は硬く、衝撃の緩衝材としても、陰陽師の任務に役立つ逸材である。
AGRAVITY BOYS 2 (ジャンプコミックス)
2020/07/09 17:30
無軌道な学童
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万物の霊長である地球人の男が四人、移住先の候補の星に到着した。
彼らの常軌を逸した行動は、地球人の習性として、宇宙に遍く存在する知的生命体に認識され、語り継がれるであろう。
地球外での人類の痔の治療法が知りたければ、彼らの日常生活を、注意深く、観察すべきである。
人類の星間の移動方法が知りたければ、調査船に潜入して、機材を確認すれば良い。
地球人との接触は、誰からも禁止されてはおらず、言葉が通じなくても、彼らと意志の疎通を図る事は可能であるので、四人がその星に到達してから、短時日で、地球人の人脈は複数の星を跨ぐほどに、広がりつつある。
それに伴い、最近、大気圏外における地球人の犯罪が急激に増加した。
彼らによる犯罪の発生を抑止するには、地球からその星への女の派遣が有効だと考えられるが、彼らが受け入れられる存在であれば、地球人以外の女性型の生命体を招く事も、解決策の一案として検討すべきだ。
返す返すも、クリスが男であった事が、悔やまれる。
クリスが女であれば、その星での地球人の暮らしは、平穏であったと思われる。
α・ジャンブローにおいて、クリスは地球人の争いの火種となった。
クリスの心を鷲掴みにしたいのは、三人の男だけとは限らない。
SPY×FAMILY 4 (ジャンプコミックス)
2020/05/19 17:48
数万年の愛護と愛玩
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敵国に潜入したスパイが、仮初の家庭生活を送りつつ、既存の家族計画を見直すのは、任務に支障を来たさない範囲内においては、所属する組織の上層部から、異論も無く、認められる事であろう。
それでは、犬や猫を飼う事は、すんなりと認められる事案であろうか。
そもそも、飼い主の主観によって、当該生物が、ペットであるのか、家族であるのか、についての認定基準が変動し、その処遇方針には個人差が生じるものなので、これは、案外、ややこしい問題だ。
フォージャー家は、犬を、所望した。
正確に言えば、夫ロイドの娘のアーニャが、犬を欲しがった。
妻ヨルは、それに賛同した。
三人に血縁関係は無い。
スパイの一家が飼うのに適した犬種とは、一体、何であろうか。
ロイドは、犬の調達先の選定から、吟味せねばならず、入手方法や、段取りについても、各所との調整が必要となる。
東西両国の外交活動は、世論の動向の如何によって、あっさりと、冷え込む、微妙なバランスの上に成り立っており、折りしも、西側の使節が東側に到着する、当事者が特に気の抜けない時期である。
ロイドには完遂すべき任務が際限なく伝達されており、彼は、複数の任務を併行して処理する、命懸けの激務に忙殺されており、家族団欒の象徴的な光景と成り得る、犬の飼育に、現を抜かす時間的な余裕など、彼には無い筈だ。
既に、フォージャー家には、キメラ長官が率いる、謎の組織が入り込んでいる。
フォージャー家は、無事に、犬を、家族として、迎え入れられるのか。
サマータイムレンダ 10 (ジャンプコミックス)
2020/05/18 17:33
暗黒な質料と形相
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土から人間を造る神がいる。
泥から鎧を造る人間がいる。
人類の誕生よりも前に、世の中には、光があったので、影も人類よりも先に存在した。
日都ヶ島において、影の病の発生が確認されたのは、江戸時代の中頃であるそうだ。
矛を使って、国を生む神々は、柱を回って契りを交わし、奇形児は海に流して、国土を安定させた。
日都ヶ島には、その奇形児と同じ御名の神を祀る場所があり、そこには奇妙な偶像が安置されている。また、島にある神社には、その矛を操る宮司がいる。
唯一神をも多神教の枠組みの中に引き入れられる日本においては、名も無き未知の存在を崇めるのは自然な事である。
影の病の原因を知る者が、数人、島内におり、網代慎平は、漸く、その者との面会に漕ぎ付けた。
多神教では、神々には伴侶や子がおり、複数の家族が構成されるのが常であるが、絶対神は孤独である。
自身の孤独を紛らわす為に、絶対神は造物主になったのか。
慎平の両親は、日都ヶ島で亡くなった。
洋食屋コフネの店主アランは、妻と娘を亡くした。
南方ひづるは弟を亡くし、商店を営む小早川一家は全員、失踪した。
島民の影は、弱点があるものの、不死身に近い存在だ。
島民の寿命を管理するのは、一体、誰なのか。
慎平が、形而上学に通じた者に口を割らせるのは、容易な事ではなさそうだ。
AGRAVITY BOYS 1 (ジャンプコミックス)
2020/04/09 12:06
哺乳瓶原器
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人類は進歩しない、二十二世紀になっても。
少年の心は変わらない、二十二世紀になっても。
論より証拠だ。本作を読めば、夜空に浮かぶ遥か彼方の星に向かう技術を獲得した人類の愚行と、下劣な品性、純粋な下心を確認する事が出来る。
他の惑星への移住計画に参加した四人組の未成年の男の身分は、操縦士、医者、宇宙物理学者、技術者であり、それぞれの長所と短所を熟知した間柄を活かして、彼らは未知の惑星での調査と開拓に勤しむ。
当然、全員、優秀な頭脳の持ち主であり、それが各自の長所と言えるだろう。
短所に関しては、個人差があるものの、肉体的な面と精神的な面との両面において、全員に欠点がある。ひ弱であったり、短絡的であったり、傲慢であったり、軽薄であったりするのだ。
若い身空で痔疾を患う者もいる。
誰しもが女の子と見紛う線が細い者もいる。
性欲が強い者もいる。
独占欲が強い者もいる。
その星では、未知の生態系が確立されており、新天地は学者冥利に尽きる場所である。探検の成果は地図の作成に反映された。今後もこの星で新たな知見が得られるのは間違いない。
知的な生命体は、宇宙の至る所に、存在するようだ。
幼稚な人類は彼らから見下される下等な種族なのかもしれない。
古代ギリシアの神の名を冠したプロジェクトの成否は、四人の若者の挙措に委ねられた。
人類の叡智が試される。
大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック 5 (アフタヌーン)
2020/01/25 13:51
聖夜の乱行
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忘れ形見の息子が、選りにも選って、恋女房であった妻に惚れたとしたら、あの世で父親は何を思うであろうか。しかも、その原因は、自分が何処かで、蒔いた種なのかもしれないのだ。
鈴木実はクラスメイトの女子からマザコンだと認定されている。
高校生だった頃の父親が、同級生の少女に恋し、二人が結ばれる過程を、映像を通して追体験する不思議な能力がある実は、旧姓が大蜘蛛である母親の若い頃の姿を見続けているうちに、三十代の後半となった未亡人にも、心が惹かれるようになった。
その能力の由来は、誰の口からも説明されてはいないので、生前、或いは死後の父親の治が何かしらの糸を引いているのかは不明だが、少なくとも、実は、父親がそのような映像を自分に見せている、と考えている節がある。
つまり、息子がマザコンである事を父親が公認している、と言えなくもないのだ。
実は両親の母校に進学し、そこで、漫画研究部の部員を経て漫画家となった母親の大蜘蛛綾のファンとも知り合いになった。
実の事をマザコンだと思う少女も大蜘蛛綾のファンの一人であり、現役の漫画研究部の部員である。
実は母親の正体を誰にも明かしてはいない。
しかし、ファンの洞察力は侮れず、何度か、母親の秘密がファンに露見しそうになった。
実とその少女、にのまえちゃんとの接点は、徐々に増え、実は、にのまえちゃんの事を、異性として、意識し始める。
熟女の母性と小娘の色香に惑わされる実は、日々、気苦労が絶えない。
サマータイムレンダ 8 (ジャンプコミックス)
2019/10/05 15:40
アスクレーピオスの面汚し
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世の中には、比喩的に聖域と呼ばれる場所があるが、学校もその一つである。他の場所とは区別されて、神聖視される教育施設では、当然の事ながら、神とは無関係であったとしても、血の穢れは忌避されるべきであろう。
しかし、疫病神のような存在を崇める者がいる友ヶ島では、学校の敷地内で、未成年の少年と少女の生死に関わる闘争が、繰り広げられるのだ。
まるで、島内の全ての場所が、そのものの神域であるかのように、島では不浄な行為が蔓延し、網代慎平は、その疫病神のような存在に居場所を把握されて、執拗に命を狙われる。
慎平や彼に協力する者等にとっては、胸中に抱く絶望と希望の感情は、島の祭礼の日を迎えるまで、同一の不安定な精神状態を指すものの、彼らが勝機を見出せない訳では決してなく、事態は膠着せずに、一進一退の攻防戦が続く。
秘策によって、敵を懐柔する事が、可能となった。
慎平の仲間の数は増えている。
自宅の浴室や入浴施設ではない場所で、慎平の義理の妹の澪は、裸になり、その後、胸中に秘めた思いの一端を、義理の兄に吐露する。
友ヶ島における慎平の交友関係は、家族と他人とを問わずに複雑化して、絶えず、変化する。
部外者ではなくても、深更に、学校や病院には、絶対、立ち入るべきではない。
プニプニとサラサラ あるいは模型部屋の少女と少年における表面張力と毛細管現象 3
2019/09/20 17:56
アンダーウェアのペレストロイカ
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模型の制作が趣味である三人のモデルの少女が、行きつけの模型店のオーナーに対して、艦船模型の製作に役立つ初歩的な技術を教示する本作は、第三巻で完結する。
最終巻では、塗装の技術が重点的に語られて、話が締め括られるので、ジオラマの製作等の発展的な内容は含まれないものの、全三巻で取り扱われた艦船模型の製作のイロハは、初心者向けの手引きとしては申し分のないものである。
本作は、無趣味な少年とモデルの少女とのラブコメディでもあるわけだが、第三巻では、文夏の水着姿が何度も見られる。ヒロインの文夏は胸が大きいので、主人公の匠海は模型を作りながらも、文夏の事が気になり、しばしば、作業に集中する事が出来ない。二人の仲の進展状況に関しても、それなりの結論が提示されており、中途半端な叙述によって、読者を失望させる事はないであろう。
また、胸が小さい女の子が好きな読者も、ソ連が大好きなリタの出番が多いので、満足する筈だ。
リタがいなければ、更科模型店は、閑散としていたに相違ない。
店内や店外で、リタの水着姿が、何度も見られる。
リタの下着には秘密がある。
模型に興味のない読者でも、リタの故国に寄せる想いを知れば、本作が全三巻で完結した事を悔やんで、目頭が熱くなるかもしれない。
サマータイムレンダ 7 (ジャンプコミックス)
2019/08/08 13:11
不吉な食卓
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故郷の日都ヶ島へ渡るフェリーで、網代慎平と出会った南方ひづるは、中学生の時に、弟を亡くした。第七巻では、その当時の島の人間関係や、弟の死因が明らかとなる。
ひづるの弟の不慮の死は、慎平が帰島する理由となった小舟潮の死因とも密接に関わるものであり、それはひづるが久しぶりに帰省する理由とも関連する。
当時、潮の実家である洋食屋は、繁盛しており、南方姉弟は常連客であった。また、慎平の両親も健在で、その店に出入りしていた。大多数の客は、島内で大量殺人計画が立案されて、それが進行中であるとは、知る由もなかったであろう。
慎平は、これらの事実を知り、決意を新たにする。
だが、タイムリミットが、刻一刻と迫る中、状況を打破する有力な手立ては見付からない。
慎平は、常に、死を覚悟している。
それでも、養父のアランと同じ道に進む決意をして、島から出た慎平は、危機的な状況下でも、食事を疎かにはしない男である。
慎平は、潮が好きだったカレーを作る事もある。
南方ひづるにも、慎平は手作りの品を食べさせる。
慎平は、犯罪者の好物を把握した。
ゆらぎ荘の幽奈さん 17 (ジャンプコミックス)
2019/08/04 13:51
涙の仲買人
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
湯煙高校の二年生は修学旅行で京都にいる。ゆらぎ荘の住人であるコガラシと幽奈、狭霧と雲雀も、当然、修学旅行に参加しており、ゆらぎ荘は普段よりも閑散としている筈だが、実際は色々と問題が生じている。
京都にいた宮崎千紗希は、急遽、ゆらぎ荘を訪ねる。
修学旅行は学業の一環であり、高校生になるまでは妖怪とは無縁の生活を送っていた、ゆらぎ荘の住人ではない千紗希は、本来、古都で羽を伸ばして、多少、羽目を外したかもしれないのだが、コガラシや幽奈とは面識がある者に利用されて、東京にいる。
湯ノ花幽奈の正体は明かされたとは言え、幽奈が誕生してからゆらぎ荘に来る迄の経緯は不明であり、幽奈の未練の内容は、未だ明かされず、事情を知っているであろうゆらぎ荘の元女将さんは、旅の空だ。
その元女将さんは、トラブルメーカーとして名高い。
仲居さん、こゆず、呑子、夜々が居残るゆらぎ荘に遊びに来た葛城ミリアは、元女将さんが呉れたお菓子を食べて、身体に異変を来たす。
千紗希の行動に焦点を当てた話が続く第十七巻では、話の性質上、お色気描写は控えめだが、単行本の前半と後半に集中的に、お風呂場や室内での、少女の不良な素行や破廉恥な挙動が、描かれる。
他人には見せられない卑猥な表情と聞かせられない声音を、放課後のミリアは、ゆらぎ荘で、漏らしてしまう。
コガラシが不在のゆらぎ荘で、仲居さんは、大胆な振る舞いをする。
狭霧や雲雀の失態を、他人事のように、楽しんでいた浦方うららは、最近、へまが多く、思わぬ場面で、あたふたする。
夜々は、学校においても、不思議な事件に遭遇する。
艶笑譚には事欠かない、ゆらぎ荘と湯煙高校との間には、地縁以外にも、何らかの繋がりがあるのかもしれない。
SPY×FAMILY 1 (ジャンプコミックス)
2019/07/08 00:34
平和の使者
6人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
将来、統一するかもしれない二国間の、流動的な政治情勢を反映した命を懸けた秘密工作に携わる、一人の男の物語である本作は、子作りと育児と結婚と円満な家庭生活の指南書でもある。
主人公の男には名前が無く、所属する組織から命令される作戦毎に、男は新たな氏名と職業を名乗り、任務の遂行に必要な準備を協力者と共に行い、任務が完遂するまで、細心の注意を払って、仮初の生活を送る。
男は、十数年間、そのようにして生き延びた。
男には、家族が、一人もいない。
男は子供が嫌いだ。
しかし、急遽、家族を養わねばならなくなった。
見ず知らずの一人の娘と、ある場所で知り合った一人の女性を、家族として迎え入れ、良き父として、また、良き夫として、二人を愛さねばならない。
その娘も、その女も、その男に釣り合うのだろうか。
スパイの家族には、平穏な生活は保証されてはいない。
男の任務が完了した時、一家は離散する。
男の任地では、当局によるスパイの摘発が活発となり、男は、任務を遂行する為に、家族に対しても、嘘をつく。
職業柄、男が誰かに騙された時、男の死は確定する。もし、それでも男が死なずに済んだとしたら、どのような理由や方法によって、男は生き延びる事が出来たのだろうか。
思春期ルネサンス!ダビデ君 4 (ジャンプコミックス)
2019/07/05 17:31
ユマニストの系譜
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ルネサンスは、イタリアでのみ生じた運動ではなく、北方の地においても、同様に活発に展開された。小便小僧くんは、ダビデ君の親友であり、フランドル地方の出身者である。
本作は、ダビデ君の思春期の克服が話の本筋であるが、実は、小便小僧くんの思春期の葛藤についても、随所で、採り上げられており、特に、最終巻である第四巻では、二人の友情と絆の強さが強調されると共に、小便小僧くんの心境の変化が描かれる。
友人が少なく、内気で、女の子に告白する勇気のない、大理石像のような高校生のダビデ君が、小便小僧くんの助力を得て、男女を問わず、多くの級友や在校生との仲を深めるのに成功し、皆と休日を過ごせるようになったのは、正しく、ルネサンスの成果である。
それでは、親友に対して、一方的に、肩入れしているように思われる小便小僧くんは、ルネサンスの恩恵に浴したのだろうか、との疑問を抱く読者が現れるかもしれないが、ダビデ君と小便小僧くんが出会った時点から、既に、両者のルネサンスは同時に始まっていたのだと、単行本を全巻読めば納得し、両者の成長した姿を確認して、胸が熱くなるであろう。
ダビデ君、小便小僧くん、ゴリアテ、ヴィーナスさん、モナさん、ラフミちゃん等の、主要な登場人物は、全員、ルネサンスの申し子であり、それ以外の人物の身の上にも、ルネサンスの影響が、多かれ少なかれ、現れる。
第三巻と第四巻には、書き下ろされた話が計三話、収録されており、本編では描かれてはいないゴリアテとラフミの奇妙な仲や、モナさんと小便小僧くんの腐れ縁、ダビデ君の将来等について、読者は具体的に知る事が出来る。
作中で重要なモチーフとなった美術品に関しては、本巻の末尾で、作者の寸評とともに、一括して展示されており、各作品が、単なる話の添え物ではなかった、と読者が分かる仕掛けが、その他の場所にも、施されている。
大蜘蛛ちゃんフラッシュ・バック 4 (アフタヌーン)
2019/06/22 23:00
一か八か
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鈴木実と仲が良いクラスメイトの女子の名前は、にのまえはじめ、と言う。漢字で書くと、一一である。
姓は、にのまえ、名は、はじめ、と名付けられた小柄な少女は、実の母親のファンであり、漫画研究部の部員である。
実は部員ではないものの、漫画研究部の部室に入り浸り、一や部長の薬袋とも親しくなったが、自身が漫画家大蜘蛛綾の息子である事は、二人に隠したままだ。
大蜘蛛綾は息子が通う土筆ヶ丘高校のOBであり、在学中は漫画研究部に所属していた。
大蜘蛛綾と一一とには、他にも共通点がある。
それは、身体的な特徴に関するものである。
実は母親に恋しつつ、一に対しても、他の女子には思わない感情を抱くようになる。
それは、恋心の芽生えであるのかもしれないが、実はその事を自覚してはいない。
夏休みが終わりに差し掛かると、実の前に、母親の過去を知る人物が現れ、実の周囲は何かと騒がしくなる。また、新学期になると、体育祭が行われるのに伴い、父兄の参観の是非が家庭内で取り沙汰される。
父親の記憶に翻弄されながらも、実は、一との適切な関わり合い方のヒントを、両親の過去から学び、友人関係にそれを適用する。
母親は息子に恋人が出来る事を願ってはいるが、実と一の、二人の良好な関係を壊したくはなく、息子をけしかける事はない。
漫画家大蜘蛛綾の正体を、一一が知る事は、あるのだろうか。
ヴィーヴル洋裁店 1 キヌヨとハリエット Dress of illusional monster (ビッグコミックス)
2019/06/22 22:51
手仕事の苦楽
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空想上の生物の生体組織を素材に利用した服を作る、亡き祖母の店の跡を継いだ少女キヌヨの、オーダーメイドの品を作る工程は、希少性の高い素材の確保と下処理、生地の裁断や縫製等の各段階で困難な作業が多く、相棒のハリネズミのようなハリエットや、各分野の職人の助けがなければ、服飾課程のある高校に通うキヌヨの知識と技術だけでは、商品は完成させられない。
魔力を帯びた一点物の衣服を誂えたい客は、年齢や性別、職業が異なり、様々な客層の要望を叶えて、死ぬまで現役の仕立て屋であった祖母の名声と腕前は、王国中に知れ渡っているのだが、半人前のキヌヨが店の営業を再開しても、客足は遠退く一方だ。
学校では、生徒から一目置かれて、服の製作を次々に依頼されるキヌヨだが、制作費は無料であり、商売は上がったりである。
その事を知ったハリエットは怒り、特殊な能力を発動して、キヌヨを困らせる。
商売敵は多く、キヌヨが新規の顧客を獲得して、店の収支を安定させるのは、不可能であろう。
だが、キヌヨの助け舟となり、その追い風となるかもしれない事態が、国内で発生する。
和洋の様々な魔物が暮らし、魔法の箒で空を飛べる世界においても、手作りの衣類は、大量生産された品では作り出せない着心地を実現し、何物にも勝る価値を持つ。
服飾に関心のない読者でも、キヌヨと客の遣り取りや、珍奇な材料の調達、服の仕立て等の場面に添えられた、視覚的な効果を発揮する音楽を聞くだけで、夢見心地となり、画面から目が離せなくなる。