ともさんのレビュー一覧
投稿者:とも
さよならテレビ ドキュメンタリーを撮るということ
2021/11/03 15:35
テレビ屋のジレンマ
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「セシウムさん事件」で有名(?)となった東海テレビであるが、筆者は「ヤクザと憲法」「人生フルーツ」等を手掛けた、名プロデューサーである。
同名のタイトルの番組は以前、名古屋ローカルで放送され、後に劇場公開された。
数々のドキュメンタリー作品を手掛け、世に出してきた筆者であるが、行き着いた先は、本業の"テレビ"ではなく、"映画"だった。なぜテレビから映画?と思うのが普通だろう。そこには、"テレビ"という一見華やかな、内実は非常にダークな世界では映し出せない何かがあるのだろう。だからこそ、「さよならテレビ」とタイトルに冠したのだろう。
私は、殆どテレビを観ない。
自宅にいるときは、ラジオばかりを聴いている。ワイドショーと化したニュース番組、バラエティーで埋め尽くされる番組表を見ては、「今日も面白くないなあ」と思うのだ。
最後の章には樹木希林さんとの秘話もあり、普段見せない(であろう)希林さんの話も面白い。
エピローグとして書いた「テレビ屋としての愚痴」は、テレビに携わる者の全ての本音ではなかろうか。数字に追われ、路頭に迷いこんだテレビ局が、今後どうなるかは誰も想像できない。
ヒポクラテスの悔恨
2021/08/26 14:06
伏せんはあるけど、まさかねえ・・・
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今回も(?)中山七里の作品である。
前々作「ヒポクラテスの憂鬱」の"コレクター"と称した愉快犯を彷彿とさせる。
警察に対して挑戦的で、一見自然死のように見られる死因を、被害者を「解剖」することで突き止めていく様は、中山七里ならではともいえようか。
今回もまた、「え!?」と思わせるどんでん返しに、喜びを感じるのだった。
殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件
2021/08/26 11:01
いまだに捕まらないのが残念ではある
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平成25年(2013年)12月に新潮社から単行本として刊行され、のちに文庫化された書籍である。
北関東で起きた事件(北関東連続幼女誘拐殺人事件)を追い、犯人とされたS氏は免罪であるとし、さらに別の"真犯人"が要るとした。
本著(単行本)が刊行されて10年近くなるが、真犯人が捕まる気配はない。
もう居ないのか?逃げているのか?それとも真犯人はやはり・・・。
作者の清水潔氏は、その昔、FOCUSで「桶川ストーカー事件」を追った。
ただ追ったのではなく、警察の不手際なども露呈させ取り上げた。
本著を読んで始めて知ったが、清水氏の娘さんは交通事故で亡くなっていた。
だからこそ、余計に赦せないのだろう。
日本には「記者クラブ」という、摩訶不思議な報道組織がある。言葉は悪いが、「大本営発表をただ流すだけ」のいわば"広報"である。調査報道がなかなか根付かないのは、こういった「記者クラブ」にも問題があるのではないか。
最後に、一日でも早い解決と、真犯人逮捕を願い、本著に記述されている一文を載せておく。
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『何度も何度も報じたぞ。ルバンよ、お前に遺族のあの慟哭は届いたか。お前がどこのどいつか、残念だが今はまだ書けない。だが、お前の存在だけははここに書き残しておくから。いいか、逃げ切れると思うなよ。』
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ヒポクラテスの試練
2021/08/11 13:10
虫と毒
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中山七里のヒポクラテスシリーズであるが、本著の標的となるのは"虫"であり"毒"である。
ネタバレになるので詳細は省くが、"虫"が発する"毒"を見付け出し、それがどう影響したのか。
時として「病理解剖」を拒否する家族を説得し、病巣を見付け出す。そして、あるツアーに行き着く。
日本では恐らく起こり得ない事としても、海を越えれば生活習慣だけでなく、食習慣も変わる。"旅の恥は~"とはいうが、今作の登場人物もそんなところか。
「感染症で最も恐れるべきは疾病本体の脅威ではなく、人々の無関心だ。」
コロナ渦中の我が国ではあるが、この作品に秘めた"メッセージ"があるとすれば、正に"無関心"になることに対しての警告だろう。
私の体内に入った、中山七里という"毒"は、まだ暫く抜けそうにない。
何故ならまだ数冊、中山七里の未読作が手元にあるからだ。
それにしても、中山七里の作品を読む度にどんでん返しに驚かされる。いや、それを楽しみに読んでいるのか。それとも"気付かず"に読み耽っているのか。
次はどんな"どんでん返し"が待っているのか、今から楽しみである。
新・AV時代 全裸監督後の世界
2021/07/21 17:04
現代社会とAV・・・・またその成立ち
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2010年(平成22年)6月に、同じく文藝春秋より刊行された文庫版である。
村西とおるの物語は別に譲るとして、テリー伊藤とその部下である高橋雅也(高橋がなり)の章はかなり面白い。
いまとなっては大企業となった"ソフトオンデマンド"(SoftONDemand/SOD)、この会社が産まれるまでの成り行きは、かなりのページを割いていて読み応えがある。
SODを後にした高橋がなりは、農業をやっているという。
小さな雑居ビルから始めた会社は、今や誰もが知っている企業となった。
読み終えた感想は、SODが如何にして出来上がっていったか、基礎を築いていったかを紐解き、辿っているようにも読めた。
エピローグに、先日亡くなった沢木和也の名を見付けた。その時既に・・・。
まさか一年ほどで他界するとは、筆者も予想していなかっただろう。
アダルトメディアが紙の上の写真から画像となった。同時に、書籍からビデオテープとなり、今やDVD/Blu-rayだけでなく、ダウンロードとインターネットと切り離せないコンテンツとなった。
これからの時代、ただ魅せるだけのメディアは衰退していくだろう。
アダルトメディアがそうならないよう、アイデアを持った"オモシロイ"を作り続ける事が出来るかどうか・・・・。
ヒポクラテスの憂鬱
2021/06/12 11:39
味方が敵に
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味方であるはずの"仲間"が、実は敵であった・・・なんていうのは、推理小説やサスペンスの王道だろうか。
次つきと暴かれる「真相」と、更に深まる謎を解き明かしていく様は、さすが中山七里だなと思わせる。
特に第三章「焼ける」は、私自信が経験した昔の事が甦り、臭いや風景などが思い出されて辛かった。
まあ小説の中の出来事が、実際に身に起きた経験とリンクすることは稀にあるとしても、この章はかなり体力(気力?)を要した。
それにしても意外な人物が真犯人なのは、いかにも中山七里らしい。
悪徳の輪舞曲
2021/05/30 16:34
なんだかスッキリしない
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悪徳の弁護士と名高い(?)"御子柴礼司"シリーズである。
今回のクライアント(依頼人)は、実の妹である。実の母親を弁護して欲しいとの依頼であるが、御子柴にとって、過去を振り替えざるを得ないことにもなる。
過去に起こった"ある事件"、そして今回の"事件"の一致、自殺に見せかけた殺人か、それとも殺人に見せかけた自殺か。
それらの事件と捨てたはずの"御子柴の過去"。弁護士としての御子柴礼司、園部信一郎だった過去、母親と息子、被告人と弁護人。
最後の最後に、母親から告げられる"過去の出来事"。無罪を勝ち取ったと窺わせつつも、この"過去の出来事"の告白が、中山七里の作品の醍醐味なんだろう。
ただ、母親の"最後の告白"は、正直切なくなった。こうしなければ、親として、一人の人間としての清算が出来ないと思ってのことだろうか。
それでも御子柴は、「私は御子柴礼司である」と母親に告げるのだが・・・・。
性風俗のいびつな現場
2021/05/11 18:08
性風俗と福祉が果たすべき問題
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社会とは、需要と供給のバランスである・・・と誰かの言葉だったろうか。
性風俗もご多分に洩れず、需要があるからこそ存在する。
衝撃的なのは「妊婦・母乳専門店」の章。利用する男性も男性だが、それを売りにするのもどうかとは思った。
しかし、短時間で且つ短期間で、ある程度の収入源して確保できる職業は他になく、それ故にそういった店舗で働かなくてはいけないと筆者は指摘する。(その良し悪しは別にして)
所謂「地雷店」に集う女性たちの章では、ある種のセーフティーネットになっているとの指摘は、どこか腑に落ちない点もあるが、その一方、金銭面だけではない支援が、今の日本の行政に出来るのかといった指摘もなされている。
ハプニングバー然り、この手の店舗は需要があるから成り立つ。
熟女店はその最たるものではないか。
生活困窮から抜け出したいがため、風俗の道に流れ込む女性もいるという指摘をしているが、なぜそこまでしないといけないのか?という、本来は福祉が果たすべき仕組みが欠けているという指摘は、何も「地雷店」や「激安店」に限ったことでもないと思う。
スマホを誰もが持ち、インターネットを介して気軽に氾濫する情報に触れる時代になっても、有店舗よりも無店舗の風俗店(デリヘルなど)が幅を効かすようようになったとはいえ、本著が書かれた2015年の暮れとはあまり変化は無いように思う。違うのは「人が出歩けない、密を避けざるを得ない」ことくらいか。
世の中は「需要と供給のバランスによって保たれる」とすれば、性風俗もそのバランサーの1つなんだろう。
恩讐の鎮魂曲
2021/05/05 12:05
罪とはなんだろう?
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「カエル男」のあのおぞましい光景が脳裏に焼き付いているが、この作品もなかなかおぞましい。
特別介護老人施設が舞台。そこである事件が起こるのだが、その前日譚といえる"ある出来事"が全ての切っ掛けとなる。
高齢者施設という閉鎖環境、そこを利用せざる得ない人々の心情、そこで介護士として働く人たち。
複雑に絡み合う"糸"を如何にほどいていくか、誰かが誰かを庇い続けるのか。
弁護士の御子柴が、利用者と被害者、加害者の心理や過去を暴く過程は、いかにも中山七里らしい書き方で面白かった。
なぜ宇宙人は地球に来ない? 笑う超常現象入門
2021/04/25 08:26
なかなか面白い考察ではあるが・・・
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私はオカルト話が好きである。
しかし、それらを真に受けてはおらず、「面白い空想」としか見ていない。
否定でもなければ肯定もしない、筆者同様「懐疑論派」と言えよう。
懐疑論を前提としつつ、単純に「よく考えたら分かりそうなこと」をきちんと説明し、肯定されている方々への疑問を投げ掛けている。勿論、頭ごなしに否定はしていない。
昨今、陰謀論にせよ何にせよ、何も考えずに右から左へ流している、そんな方を多く見る。インターネットの弊害なのかもしれないが、いまだに(何十年前に種明かしされたことも)信じている人々も多い。(Apolloは月へ行っていない等)
「科学では証明できないこともある」とは肯定論者の口癖でもあるが、科学者でもない方がそれを言うのは違うだろう?と常々思う。
聞く耳持たないのが殆んどで、科学というよりも小学校や中学校の理科すら理解してない人も多く、根拠や論拠を求めても説明になっていないことが多い。
こういう点を踏まえ、かなり面白おかしく指摘し、「よーく考えよう」と投げ掛けているのが本著であるが、難しいことは書いていない。
一つだけ残念に思えたのは、「~らしい」や「~のようだ(~のようである)」との表記が多く、これもまたどこか胡散臭さが残る。
時々挟まれる挿し絵も、なかなかユニークである。(余談ではあるが、挿し絵・イラストは、しりあがり寿の作である。)
全てのオカルト愛好者に読んでいただきたい。
「自分メディア」はこう作る!
2021/04/01 15:07
ちきりん版「インターネットの歩き方」
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人気ブロガー「ちきりん」の、ブログ運営術・・・と書いてしまうと、何やらハウツー本の類いなのか?と思われるかもしれないが、「ちきりん」が如何にしてブログというメディア(厳密に言えば、インターネット上のメディア)を扱い、これまでとこれからを記した、「ちきりん流インターネットの歩き方」と言っても良いだろう。
ブログに限らず、様々なサービスがインターネット上に展開し、それぞれのサービスに沢山の人が集うが、触れる情報はごく僅かだろう。
どうしたら興味を持たせ、そして盛り上がるのか、ちょっとしたヒントになるような一冊である。
ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器
2021/03/24 10:54
新しいストライキのススメ
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大手企業が「ストライキ」を行わなくなり、労働者団体の弱体化が叫ばれて何年経つだろうか。
労働環境が時代と共に変化していく中、一部とはいえ、ストライキを行わざるを得ない環境は、大手企業の労働者団体よりも複雑化している気がする。
本書は主に、新しいストライキの例を取上ずつ、労働者と労働団体の現状の問題点を記しつつ、どうあるべきかを考える材料となるだろう。
付録として『労働運動やストライキを行うためのQ&A』、更に巻末には「無料労働相談窓口一覧」が掲載されている。
職場での悩みなど抱えている方は、解決への手助けとなれば幸いである。
AV女優の家族
2021/02/28 15:56
家族という背景、その視点は面白いが
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AV女優の家族/寺井広樹
光文社新書
この類いの書籍はいくつかあるが、内容としては「かなり温和」な部類ではないだろうか。
登場するのは
・白石茉莉奈
・優月心菜
・板垣あずさ
・江上しほ
・出てこい中平くん2号
・当真ゆき/つむぎ
の7人だが、異色なのは「出てこい中平くん2号」だろうか。芸能人が売れなくなって、トラブルでAV界に入ることはよくあるが、芸人からAVへというのは珍しい。元々話が上手いのか、インタビューの内容もとても面白い。
私自身、「AV女優」という単語には違和感がある。「女優」ならば台詞がありそれに基づいて演技ができ、仕草や状況に応じて演ずるのがそれである。しかし「AV女優」にはそれが出来るのか、甚だ疑問があるのである。(勿論、それが出来る人もいるが)
人各々に生き方、境遇、環境があるように、取り上げられている7人の方もそれぞれだ。それを知るために購入し、一読する価値は充分ある。
県警VS暴力団 刑事が見たヤクザの真実
2021/02/14 10:45
どこの県でも起きていそう
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北九州・福岡にある「工藤會」と、福岡県警の熾烈な闘いをまとめた一冊。
手放しで県警を褒めている訳でもなく、汚点というか、内実も記している点は興味深い。
連続殺人鬼カエル男ふたたび
2020/11/27 09:33
続きが気になる
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連続殺人鬼カエル男ふたたび/中山七里
前作(連続殺人鬼カエル男/コメント欄にリンク有り)の続きで読み終えた。
正直に言えば、前作以上に恐怖を感じた。
殺人をゲームとして楽しみ、翻弄させ不安にさせることを歓んでいるのが非常に気色悪い。その場面や臭いが文字から漂い、頭の中を蝕むような感じさえする。
快楽殺人というものがあり、そういった癖があるとすれば、この「カエル男」は正にそれである。
ネタバレになるかもしれないが、ミイラ取りがミイラになる・・・そんなことはあるのだろうか?あるとして、この小説に出てくるエピソードはまさにそれだ。
まだ話に続きがありそうな終わり方であり、この続編が仮にあるとしたらいったいどんな話が展開されるのか、怖いながらも楽しみでもある。