KeiMさんのレビュー一覧
投稿者:KeiM
2023/11/14 01:43
時々吹き出すので、人前では読みにくい本
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ロンドン五つ星ホテルの泊まる祖母姫と、そのコンパニオンの話
コンパニオンというのか秘書というのか侍女というのか。
とにかく祖母のイギリス旅行に軽い気持ちで同行した著者、空港から飛行機、ホテルにロンドンとひたすら振り回される話。
ただ祖母も体力に限界があるから昼寝に夜寝、睡眠は深い。この隙を縫って秘書はお忍びでロンドン、イギリスの町をめぐる。
何よりおばあちゃんが魅力的。威厳があって尊大で、要求が明確。一生に一度になるだろうロンドンをでやりたいことはすべてこなす。ゴージャスな買い物、ひとつひとつこだわりを持って選ぶ。英語よりも関西弁が達者なのに、プロフェッショナルな英国店員に、通訳抜きで商品をご所望する。
身内と旅行したら、数日もすると険悪になる瞬間もあって当たり前と思うのだが著者は耐えた。心の中で突っ込む声は一言も祖母の前では発されなかった。そのストレスはすべて祖母が寝た後に発散される!?
ファーストクラスに五つ星ホテル、豪華な旅は親戚一同のプレゼント、そこに添えられたお付きの娘。一流のホテルマンたちの働く舞台裏も垣間見られて、一風違うロンドン、イギリスの旅がつづられていた。
2021/12/21 16:06
伝染るんです。この呪い
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
噂が広がっていくように、呪いもどんどん広がっていく?
霊感メンバーたちはコミュ強チームと社会不適合チームに分かれて活躍します。
本編その後のストーリーらしく、今まで読んでいたことが基礎知識になってすべてが「面倒くさい説明を抜きに」勧められる。
伝染する呪いを軽く済ませて、絶対に罹らない人に外との交渉を任せる手段とか、
誰の菌が一番軽いかとか。
本シリーズを読んだ後の、するする理解できる爽快感がいい。
いろいろあった過去をまるっと受け入れて、自分たちを反社系と呼ぶエリカ。
家業は除霊系に偏ってはいるけれど、高校はまた通いだしている。
「なんでもできるじゃん。今から」
この前向きな姿勢がうれしい。
彼女は人に元気も与えられる女の子だよ。
透明なキラキラ感からはちょっと離れた存在だけど。
2022/02/15 00:59
収録作品が気になりました
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「きつねの窓」の作家、読んだことがない話も収録されていて、この出版、嬉しいです。
収録:
あるジャム屋の話
黄色いスカーフ
北風の忘れたハンカチ
日暮れの海の物語
だれにも見えないベランダ
小さい金の針
星のおはじき
海からの電話
天窓のある家
海からの贈りもの
春の窓
ゆきひらの話
2024/05/22 01:18
遭難者側と家族側から見た遭難と生還までの日々、2016年~2022年
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2022年10月の九州の話はツイッターで見かけた。
「拡散希望、夫が行方不明です」の話。
― 暗くなったので今日は捜索打ち切りです。明朝再開される予定です。
子供を抱えた家人の目から見た遭難が身につまされた。
そして迷った側からの視点ははじめて知った。登山道から外れてしまった理由や元の道に引き返せなかった理由がこと細かに描写されている。
私も迷う。そんなこととがあったら。
羽根田氏の本はいつ読んでも、登山に同行させられている気分になる。
読んでいるだけなのだから痛みものどの渇きも実際に感じられるわけはないのに、心拍数があがっていく。
今回挙げられた話はどれも生還談なので、まだ安心。
けれどどうやって救助されたのか、どうして生きのびられたのか、そこを目指して読んでしまった。
筋肉に土がついていても大丈夫だったんだ。体が動かせず褥瘡(床ずれ)ができても 自分の足の骨が見えている状態でも、社会復帰ができたんだ。
メインではないが山の中で木を揺らしてヘリコプターから気がついてもらった事例もあった。なにもかもがすべて運なのだなと思う。
道に迷ったら引き返せ、道なき道を下に降りるな、がけや沢、滝に当たって詰むぞ、道に迷ったら尾根を目指せ。
言うのは簡単なのだけれど、それでもこれは大切なのだと、机上で読みながら実感した。
2024/02/20 22:01
東京、京都、奈良そして沖縄
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
絵が安定して可愛い。そして爬虫類も神々しくはあってもおどろおどろしくはないので安心して読めた。
幽霊話より不思議話が多め。猫を救った少女は思わず検索をしてしまった。
今回はどうみても加門七海氏が呼ばれているでしょう、という話がちらほら。普通の人が同じところを訪れても同じ目にはきっとあわない気がする。愛でお祓いができたというのもきっと加門氏ならでは。加門氏が一番不思議な存在な気がする。
なにはともあれ道迷いの時の脱出方法、これは念のために覚えておく。狐や狸に化かされた時用に。
2023/09/22 19:25
絵が変わっていなくてうれしい!
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
前作から二年以上待ちました。
ひさびざの続編で、姫もゼノ様も変わってしまったかとそれだけが心配でした。
それが全然変わらぬ可愛らしさと凛々しさで。三巻から時が止まっていたかのような再開!
姫の侍従(メイド)は相変わらず百合寄りだし、魔法使いの弟子もおぼこい。
これから連載が再開され、姫とゼノ様はどうなっていくのか楽しみです。
ドラゴンやニンフの登場する魔法の世界、これからどんどん広がってほしい。
それから、王様の怒りのぶつけ先も気になります。
次の巻が待ち遠しいです。
本と私と恋人と
2023/06/04 06:51
電車で読んで、降りる駅がどうでもよくなる本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
筋の通ったしゃきしゃき系のキャリアウーマンと、空気は読まない効率第一な無礼男のラブストーリー。
ふたりの勢いの良さがいい。
犬猿の仲、本音はとってもトゲトゲした物言いな会話(とその裏の考え)、田舎にやってきたニューヨーカー、
電車で読んでいて、本当に乗り越しごめんになりそうな本。
だって2人+1の世界にあっという間にスリップさせてくれるんだから。
こういうロマンスが読みたかった!
2024/06/24 18:52
「三行で撃つ」近藤康太朗氏の本なんだ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
リラックスするために人は本を読む
前著「三行で撃つ」で著者はそう強調していた。
今度は、リラックスするために遊ぶのかどうか、感性で感じ取ることを要求された気がする本だった。
多分それはこの本の本題とは違うのだけれど。
遊びたいときに遊ぶためにできる時に仕事をやる。
今回もこの姿勢は揺るがない。
早起きをして書き、入稿する。そして博物館へ美術館へ。映画を見て観劇もしてそしてライブ。
出社=仕事ではない。ただし実績はあげる。前任者の倍、三倍の実績をあげる。
アウトプットは量と質が比例する。書けば書くほどうまくなる。量をこなしていくうちに、自分が書きたいものも売る。恩も売る。信頼を得る。実績を作る。
一方インプットを怠ると一体どうなっていくのだろう。
次から次へと小気味よく提示されるテーマは、こっちまで伴走しているような臨場感にあふれていた。
デジタル本より紙だ、体で読め! という主張が伝わってくるが、この人の効率主義と職、それから「三行で撃つ」をあわせて考えると、書くときは絶対デジタルで書いている。
滑舌鮮やかで激しい語気が行間から浮かび上がる。響いてくる。紙面づくりより最前線で戦うライター。
兄弟つながりの話、タクシーの運転手と目が合った話、もうドキドキで死ぬかと思った。
読み終えると完走感が味わえた。
モラハラ夫と食洗機 ~弁護士が教える15の離婚事例と戦い方~
2024/03/25 21:54
その人の威嚇、モラハラです。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
夫の気配に息を殺して生活をする。帰ってきた物音で息が苦しくなる。
それでも経済的理由で別居できない、子供にもふた親揃っていたほうが、そんな考えも頭によぎる。
けれども子供はしっかり見ている。
お腹や頭が痛くなる、小学校でモラルに反する行動をそのまま真似る、不登校になることも。
そして大きくなるころには、モラルハラスメントがモデルパターンとして無意識の中に刷り込まれる。
自分の尊厳を守るために、子供の命を守るために、まずは助けてと周りに言おう。友達、親、弁護士、法律関係者。シェルターでもいい、役所でもいい。話を聞いてくれる人に相談しよう。
録画、録音、メール、メッセージ ささいなことでも繰り返し行われているという証拠になる。
暴言、子供を泣かせる姿、隠し撮りでも裁判所は取り上げてくる。
経済的に不安があっても、婚姻費用は別居中も受け取ることができる。「養育費は払わない」言い切る保護者は必要か?
「修復したいならきちんと謝ったほうがいいですよ」ととりなす弁護士の言うことは聞かない方がいい。
この本は、モラルハラスメントから立ち去るために、やるべきこと、みるべきところ、ポイントを押さえて読みやすく書いてある。
弁護士著の割には、ライトな読み物としても読めそうな書き方だ。
― もっと早く家を出ようと言ってほしかった
― パパに怒られないように我慢していた
子供の声はモラルハラスメントから離れてはじめて聞くことができる。
決断は大変だ。けれど、早いうちに立ち去ろう。
2024/01/22 01:42
草々出版さんから「つらい時ほど尻を振れ」というエッセイ本を出版させていただく事になりました。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
2021年にツイッタで公言した潮井エムコ氏、この時は「エイプリルフールでした」とあっさり前言撤回していたけれど、嘘から出たマコト、ヒョウタンから駒、3年経たずに本が出た!
ツイッタで話題になった学生結婚したエムコ氏、noteやツイッタであけすけない子供時代や学校時代、芸術系学校の劣等生ライフに保母さん生活、色々まとめて一冊に。出版社の本気も加算され、パワーアップした書店デビュー。
親御さんとのいざこざや、こじんまり結婚も臨場感あり。家出話も1階ではない。そうだよね、親からの独立は子どもの心を限りなく未来に向かわせる。
予言してもいい。これ絶対に中学か高校あたりの国語のテストに使われる。そのぐらいの引きつけパワーが感じられた。
それともうひとつ、フランス語訳とかでないかな。
note加筆と書きおろし2作、女の子の本音が200%入った本。おまけに媚び度は0%。海の向こうでも絶対ウケる。
2022/09/27 21:42
自分だけは大丈夫、って思ってしまうんです
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事故を体験した人たちを取材した話あり、もう事件のことは思い出したくないと拒否された話あり。どれも事件を改めて調べ直して述べられています。
台風や悪天候、雪崩、落雷。きちんと装備して朝早く出発しても、自然を前にすると人は儚いものだと思い知らされます。
「十大事故から読み解く山岳遭難の傷痕」などですでに語られた話もだぶっていますが、詳細よりも要点が絞ってあり、文章的にも読みやすいです。
事件のおおまかな流れと、当事者の方がどう思ったのか、理解するにはいい本だと思います。
「こういう事故を繰り返さないためにも」
その思いが込められた一冊でした。
2022/09/10 01:27
犬養誠次郎、泣き笑いの巻
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
伝統的な呉服屋で、売り上げ本位で着物を売ってきた後継ぎボン、犬養誠次郎。
今回男性客が、デート用の浴衣を買いに来た。
さて、売りつけるべき客に、似合う浴衣が勧められるか。
大柄の男に、このサイズは短い気がする、オーダーメイドは初心者にとって高い気がする―。
今回もどっぷり和服の話です。呉服屋さん視点なので素材の話も多めです。
店員の仮面をかぶりながら、誠次郎は心の中で動揺しまくりです。
これまで周りから言われてきた、いろんな言葉が聞こえてきます。
― 高いモノを売りつけて!
― 短ければブーツをはいたりトップを工夫したらいいじゃない
この客に、一体どう勧めたらいいのか?
この客は、一体何を求めている???
13話、今まで読んできたエピソードたちが実を結んだような流れでした。
ラストの大御所の登場に、思わず噴き出してしまったりして。
こんな展開、個人的には大好きです。
2022/05/24 18:49
男前主人公が可愛すぎる
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
自信家の「高嶺と花」を読んでいました。
今回の多聞君は、高嶺さんとは全然違う。高嶺のツメの赤を煎じて飲ませたいほどの自己肯定感がありません。仕事では徹底的にいい男なのに。
アイドルなのは外側だけ、家ではショボい男を盛り立てるのは女子高生のうたげちゃん。自立心旺盛で、パワフルな女の子です。叱咤激励、スパルタママになってしまっているところも。家では陰キャラの多聞君、うたげに甘えてほしい。
アイドルとファンのラブコメディと、なりますよね。
2022/03/05 22:47
独特の世界観、ゆっくり読み解きたい本
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お母さんは、弟と今のお父さんを大切にしている。
ぼくのことは死んだらよかったのに、って言ってる。
絶望した小学生の春生(はるお)は、もうこの世にいることを辞めようとしていた。
そして、その瞬間に遭遇した魔法使いは、この子を弟子にしなければ、この子は死んでしまうと心の中で確信をする。
この子を家に連れて帰ろう。
魔法使いの弟子になるとは? 魔法使いの仕事は? 魔法使いにも組合はあるの?
魔法使いとの暮らしの中で、春生はいろいろなことを学んでいく。
魔法を使うにもルールがある。悪魔との契約、契約上の決まり事、そして、魔法を使う代償として、悪魔が魂を適量持っていくということ。
魔法使いの常識は一般人には皆目異世界。
謎があまりにも多すぎる。
けれど主人公の春生の明るさで、苦もなくすっきり読んでいけた。
春生は物事を深く考えない。
ふわふわと純粋で、多少の常識を持った男の子に見える。
学校に行かない毎日は、親戚のおじさんの家で夏休みをすごすよう。
宿題をしながら、いろいろ観察し、周囲の世界に触れていく。
ふわふわ、能天気で、でも魔法の世界はちょっとどろどろ。
オカルト好きの高校生、組合の内輪揉め、そして春生の母の事情。
シリーズを読み進めるうち、いろんなことが起こっていく。
もしかして、これ、すっごい怖い話じゃない?
魔法使いっていう耳心地のよい言葉に流されているけれど、これってどっぷり呪いの世界?
気付いたころにはもう抜けられない。
春生はこの世界の中で、どうやって生き抜いていくのだろう。