M.Fさんのレビュー一覧
投稿者:M.F
各国別世界史ノート 新版
2023/09/07 18:35
お勧めできる
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世界史を学習していくにあたって、ある段階で、国別・地域別に知識を整理してみることは有効だと、私は思っている。
ただし、その一方で、地域別・国別に世界史の知識を整理した本は、それほど多くないようにも思う。
さらに、そういった本のなかにおいて、信頼に値する内容のものはというと、もっと限られてくるように思うが、本書はそういう要素を備えている、数少ない本のひとつだと思う。
ただし、重要語句が空欄になっていて、自分自身で記入して完成させる形式の本なので(もちろん、巻末に解答はついているが)、その点には注意して、納得のうえで購入されるべきだと思う。
購入した時の状態のままでは、本としては使いものにならず、自分自身で、作っていく本である。
手間はかかるが、自分自身の手を動かして完成させた時には、世界史に関して一定の自信が得られるように思う。
なお、本書は、高校生を主たる対象と想定して作成された本であるが、一般の方の学び直しにも十分有効だと思う。
レビューを作成している私自身も、高校生ではなく、一般人である。
一般人向けに書かれた歴史概説書を読むことが、無意味だとまで言うつもりは無い。
しかし、そういった類いの本は、それなりのレベルにとどまっていることも多い(中学レベルの歴史と大差無いように思われる本もある)ので、読み終えたらば、真面目に勉強をしている高校生が使っているようなレベルの本をお勧めしたい。
教養を身につけるのも、それなりに手のかかることだと、私は思っている。
改めて知る国ごと,地域ごとにまとめ直した高校世界史 増補版 下巻
2023/06/11 10:50
歴史の流れをつかめるいい本です
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一般的な世界史の概説書・教科書における傾向として、ヨーロッパや中国・アメリカの歴史にはそれなりの説明がなされる一方で、東南アジアや中央アジア・朝鮮半島等の歴史に関しては、いってみれば脇役扱いで、本のところどころにおいて、とびとびにしか記述がなされないことが多い。
これでは、こういった、脇役扱いされている地域の歴史については、いつまでもイメージがもてないのも、仕方がない。
その点、国ごと・地域ごとに歴史を解説する本書を読めば、手薄になりがちな地域の歴史についても、バッチリとイメージがのこる。
おすすめできる。
ただ、さすがに一冊のみでは全地域の歴史をカバー出来ないと見えて、3分冊形式になっている。
本書は3分冊の中の最後の巻であり、中東を含むアジア各地域の歴史を扱っている。
ただ、ひとつ気がかりな点として、このレビューを作成している、2023年3月の時点において、実店舗においては、意外と手に入りにくくなっているように思われる。
理由はわからないし、通販のほうの事情はわからないけれど、少なくとも実店舗においては、本シリーズの3冊を置いている店舗は、意外と限られてしまっている様子である。
もし、近所の店舗などでうまく手に入りそうならばラッキーだと、私は思う。
金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本 近現代史 改訂版
2023/03/17 10:28
流れがよくわかる、良い本
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この本を購入するか否か検討をしている方々の大多数は、高校生もしくは受験生であるかと思います。
しかしながら、レビュー作成者の私は、高校生でも受験生でもなく、かなり前に大学受験を終えた一般人です。
もっとはっきり打ち明けるならば、高校時代に日本史を選択すらしておらず、受験でも日本史は使わなかったような人間です。
そんな私ですが、社会に出た後で、日本史のことも知っておきたいと、思うようになりました。
ただし、学びたいとは思っても、日本史の学習経験の無い私からみると、多くの日本史の本の記述内容は、事件名・人名の羅列のように見えてしまいました。
学習のためのハードルが高く思えて、困惑していました。
そのような中で、書店で見かけたのが、本書です。
言葉の羅列というよりは、ひとつのストーリーのように書かれていて、読みやすいと思いました。
分冊になっているため、本書が対象とするのは近現代史の部分だけですが、おかげさまで、日本の近現代史に関しては、大きな流れを把握出来たと思っています。
また、読んでいておもしろいと感じられる本でもありました。
ポイントをまとめた音声講義が付属している(CDもしくはダウンロード)のも、復習の際などに便利だと思います。
以上のようなわけで、私にとっては、良書でした。
ありがとうございました。
線形代数セミナー 射影,特異値分解,一般逆行列
2022/03/23 00:47
わかり易く、線形代数の応用を解説した本
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線形代数に関しては、他分野において応用として使う段になると、一般的な大学生向けの教科書・参考書ではあまりふれられていないような事柄がしばしば出てくることに、戸惑っている・悩まされている方も、意外と多いのではないだろうか。
本書はそのような方々にとって、有益な存在と成り得ると思う。
本書冒頭にある「まえがき」を参照すると、パターン情報処理を学ぶ学生や、その分野に携わる研究者を、主たる読者として想定して書かれた本であるようだ。
しかし、それ以外の方が読んでも、有益な部分は有ると思う。
このレビューを記載している私自身も、パターン情報処理と呼ばれる分野にかかわっている人間では、全くない。
ひとつだけ例をあげる。
本書の第6章及び第7章を読むと理解できることのひとつに、主成分分析がある。
もちろん、本書は統計の解説を目的とした本ではなく、統計を理解させることを目的とした記載がなされている訳ではない。
にもかかわらず、本書の記載を読むと、結果的には、巷にあふれる統計書を読むよりも、主成分分析とはどういうものかが、非常に良くわかる。
それくらい、明解な解説をした本である。
以上のような訳で、素晴らしい本だと思う。
もちろん、その人の携わる分野によって、この一冊だけで満足出来るか否かの意見はわかれると思うけれど、少なくとも、線形代数の応用における、最初の一冊としては良いのではないかと思う。
もっとも、本書の記載内容は、一般的な大学生向けの線形代数の教科書・参考書に記載されていることは、既に習得済みであることが、前提となっていると考えられる。
わかり易い本であるし、また、非常に興味深く読める本なのだが、その程度のレベルは有る本である。
その点には、注意が必要で有る。
線形代数中級者以上向け・応用の最初の一歩といったレベルではないかと思う。
なお、一応、付録という形で「線形代数の基礎」と題する記載が有る。
ただし、それだけで、全くの線形代数未習者が、(必要となる)前提知識を身に付けるのは不可能だと、私は思う。
あくまでも、既習者が前提知識を確認するための記載だと思う。
1冊でマスター大学の統計学
2021/11/04 03:11
素晴らしいです
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書籍のタイトルから想定されるように、大学生が単位を取るために使うことを念頭に置いて、書かれた本であるようです。
しかし、実は、このレビューを作成している私自身は、学生ではありません。
つまり、この本の読者として想定されているような人間ではないと思いますが、素晴らしい本だと思い、レビューを投稿することと致しました。
統計に関する書籍は数多く出版されていますが、学生向けのものであれ、あるいは一般向けのものであれ、その数学的根拠に関して、本格的に踏み込んで説明しているものは、意外と少ないです。
統計学は数学の成果をかなり利用しているにもかかわらず、その数理的根拠にきちんと言及する本は、必ずしも多く有りません。
その点、この本においては、数学的根拠にまでしっかりと踏み込んだ説明がなされていることが、素晴らしいです。
説明の仕方も、非常に丁寧だと思います。
数式の展開において途中経過が省略されることはほとんどなく、読者に対する配慮が感じられます。
統計の数学的根拠を知りたいと考えた場合には、普通はもっと「難しい」、ある意味マニアックな本を読むことになります。
(多くの場合、「数理統計学」という言葉がタイトルに入った本です)
この本のように、読者が統計学既習で有ることを必ずしも前提とはしない程度のレベルにおいて、念入りに数学的根拠を説明する本は、他にあまり例がありません。
気がついた部分を具体的に指摘させていただくならば、この本においては、分散分析や適合度検定に関してさえ、それを正当化づける数学的根拠まで、詳細に解説しています。(分析手法の提示・紹介のみでは終わっていません。)
数理統計学の本を別とすれば、そこまできちんと説明する本は少ないです。
統計を学ぶ方全般に対して、数理統計学の本を読んでもらうことまでは期待出来ませんので、専門書ではなく、比較的読み易いレベルにおいて、数学的根拠をきちんと解説をする本が存在していることは、非常に貴重なこと・素晴らしいことだと思います。
学生の方に限らず、広く、統計に関心有る方々が読むに値する、素晴らしい本です。
私自身も、学生ではないにかかわらず、この本を読んで良かったと、心から思っております。
試験対策のために、たまたまこの本を購入した方は、かなりラッキーです。
単位を取った後も、処分などせずに手元に残しておけば、統計学のことをきちんと数学的に理解したいと思った時に、役立ちます。
最後に、統計学初心者の方にむけて、注意点を喚起させていただきます。
統計学を、その数学的根拠まで含めてしっかりと学ぼうとする場合、それなりには数学力が求められます。
統計学は、高校までの範囲の数学によって説明可能な事柄のほうが、むしろ少ないです。
つまり、大学レベルの微積分・線形代数の理解が前提となります。
煩雑な計算を展開することも、珍しくありません。
それは、この本に限らず、どの本で学ぶ場合でも同じです。(根拠まで含め、しっかりと学ぼうとする場合の話ですが)
こういった点については、どうか御覚悟をなさったうえでお読みください。
御健闘をお祈り致します。
隔週刊 鉄道ザプロジェクト 2021年 11/16号 [雑誌]
2021/10/23 09:07
良い
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マニアと言えるほどの知識はないのだが、鉄道好きなので、興味あるテーマが取り上げられた時には、従前もこの隔週発行の雑誌を購入してきた。
今回のものは、そんな私が見てきたなかで、結構出来が良い方ではないかと思う。
興味深く、付属DVDを見させてもらった。
感動すら覚えた。
(このシリーズの購入体験のない方のために、一応申し上げます。雑誌という形をとってはいるが、実質的には、付属DVDの方がメインの商品といえるかもしれません。冊子の方も良いとは思いますけれど、DVDと重複している部分もあります。
そうはいっても、細かいことは、やはり、冊子にしか書かれていないので、マニアの方にとっては重要なのかもしれません。冊子には、細かい技術的なことが出てくる場合も有るので、正直、私程度のレベルだと、わからないこだって有ります。例えば、今回の冊子に記載されていることの中では、btき電方式とatき電方式の違いに関する話は、私にはわかりませんでした)
最後に難点をあげさせていただくならば、(録画時間が)、たかだか30分あるかないかのDVD及び十数ページ程度の冊子の組み合わせで、(税込)千五百円を超える値段というのはどうか。
私は、割高だと感じる。
だから、興味有る題材が取り上げられた時にしか買っていない。
(それでも、ここまでに二十回以上発行されたもののうち、半分近いものを購入してしまった。)
初めから学べると評判の大学基礎物理電磁気学キャンパス・ゼミ 高校物理から大学物理へ!スムーズに実力UP!
2021/06/18 15:17
読みやすいです
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読みやすく、わかりやすい本。
数式の展開が丁寧で、途中経過の省略など、ほぼ無かったと思う。
少なくとも、私は、(なんで、この後こうなるのだろうみたいな)気にかかったところは無かった。
電磁気学では、ベクトル解析の知識も、不要というわけには、いかないのだが、そのあたりに自信のない読者のことも考慮されており、ベクトル解析の要点整理のためだけに、特にひとつのセクションが使われている(講義2)。
このあたりも、親切といえるだろう。
もっとも、ベクトル解析を全く学んだことの無い方が、本書の記載だけでそれを十分理解出来るかは、微妙だと思うけれど、少なくとも、ある程度学んだ経験の有る方であれば、本書程度の記載でも、必要となるベクトル解析の要点を、十分思い出せるであろう。
高校生からわかるベクトル解析
2021/04/09 16:05
初学者向けの好教材
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ベクトル解析をはじめて学んだ頃、やさしく説明しているように見えるからという理由で、最初に読んだのがこの本であった。その頃に通読したのであるが、その時点では特別良い本とも悪い本とも思わず、「ベクトル解析とはこんなものか」という程度の印象であった。
しかし、時間が経ち、他のベクトル解析に関して記載有る書籍にも多少は触れた経験を経た後で、わけあって久しぶりに目を通してみたらば、ベクトル解析に関する基本的な事柄が、実に要領よく・わかりやすく記載され、まとめられていることに驚かされ、レビューを書かせていただくこととした。
数学の厳密さを多少欠く部分はあるのかもしれない。著者御自身でさえ、そのことにつき「本書の使い方」(初版では5ページ)の中の記載において、断りを入れておられる。
しかし、この分野に関する書籍としてはかなりわかりやすい部類に入り、そのような点をさしひいても、初学者・初心者にはすすめられる本であると思う。
というか、もっとはっきり言わせていただくならば、そういう本だからこそ、初学者・初心者にすすめられるという部分もある。もし仮に、数学的厳密性にこだわりぬいて書かれたような本であったならば、初学者に対してはすすめられない。
私自身、ベクトル解析最初の一冊はこの本だったので有るが、この本で良かったと、今は思っている。この一冊でベクトル解析のことが完璧に全てわかるとか、そういう本ではないのだが、それでも、この本から学習をスタートして良かったと考えている。
次に、購入を検討されている方が気をつけておくべきと、私が考える部分について指摘をさせていただく。
一般的に言って、これからベクトル解析を学ぼうと考える方々は、既に大学初年レベルの微分・積分や線形代数に関しては、一定程度知識・理解を有している方々が多数派であろうと、私は考えている。
しかしながら、この本の著者の方は、本のタイトルにもあるように、本当に、高校生にもベクトル解析を学んで欲しいと考えていらっしゃるらしく、そのためか、特に本の前半では、「外積とは」なんであるのかとか、「偏微分とは」・「全微分とは」なんであるのかとか、そういうレベルから話がはじまる部分がある。それどころか、高校の教科書レベルの話が解説されている部分さえある。
このあたりの点に関しては、そういう本であるということをあらかじめ認識した上で、購入を検討なさるべきかもしれない。
いくら、タイトルに「高校生からわかる」と、あるとはいえ、ところによっては高校数学そのものの解説さえなされることに、違和感を感じる方がいらしても、不思議ではない。
ただし、そのように、ゆったりとはじまりながらも、ガウスの発散定理やストークスの定理に至るまで、解説はなされている。それらの解説が数学的にも厳密で正確な証明といえるものになっているかは、残念ながら私にはわからない。しかし、入門書・啓蒙書にしばしばみられるような、公式を提示したものの、根拠については全く説明せず、使い方だけ教えたら終わりというような箇所は、私が読んだかぎりではないと思われる。(高校数学の知識を確認した箇所は除く)
きわめて初歩的なところからはじまりながらも、なおかつ、最終的に一定程度の到達レベルは確保した、稀有な本であると思う。
それだけに、ベクトル解析はじめての方は、中盤くらいから、それなりに読み進めるのがしんどくなるかもしれない。
これからベクトル解析を学び始めようとする方々の、今後の御健闘をお祈りしつつ、レビューを終えたいと思う。
一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 公立高校教師YouTuberが書いた
2023/06/10 17:22
わかり易いが、年号を使わないのはいかがなものか
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
歴史の大きな流れがつかみ易いように、非常に工夫がされている。
良い入門書であることは疑いようがない。
世界史の分野で読む最初の一冊として、大きな流れを把握するために使うのには適している。
ただし、だからといって、本文中で年号に言及しないのは、いかがなものか。
別に、私自身は、年号を覚えたいと望んでいる訳ではない。
(大学受験をとっくの昔に終えた一般人なので、年号を覚える必要性もない。)
結局、何を申し上げたいのかというと、年号が書いてないと、それが、だいたいいつ頃に起きた事件なのかさえ(例えば、「○○は18世紀後半の事件」というレベルでさえ)、わからないのである。
それは、少し困ると思っている。
年号さえ書いて有れば、たとえそれ自体を覚えようとはしなくとも、自然と、「○○世紀の前半(中盤・後半)の出来事」といった程度の認識は、頭に入って来ると思う。
その程度の認識は、たとえ受験対策ではなく、教養として歴史を学ぶ場合であっても、必要ではないかと思っている。
また、書籍のタイトルの中に、「世界史の教科書」という言葉が使われているけれど、私の意見・感想を述べさせていただくならば、本書のレベルは、あくまで、「一般向け世界史教養」といった程度にとどまるのではないだろうか。
本当の高校生向け検定済教科書(例えば「詳説世界史」)には記載されているが、本書には記載されていない事柄も、多く有るように感じる。
よって、学習意欲の高い方は、本書を読み終えた後に、ぜひ、本当の文部科学省検定済教科書にも、目を通してみると良いと思う。
勉強になると思う。
検定済教科書は、一般の書店では手に入らないけれど、インターネット上で検索すれば、検定済教科書の入手方法は紹介されている。
決して、一般人には手に入れられないという訳では無いし、入手方法自体も、特別難しくはない。
検定済教科書といっても色々有る。
先程言及した「詳説世界史」は、昔から、大学受験にも対応可能なレベルの教科書として定評が有るものだが、そこまで完成度が高い(完成度高いゆえ、初学者にとっては「難しい」)ものでなくとも、色々なものが有る。
出版社のホームページなどを閲覧しながら、自分がいいと思ったものを入手して、目を通してみれば、理解・知識が、より深まると思う。
なお、社会人をはじめとする大人の学び直しの場合、今更にギリシャ・ローマのことを勉強しようというよりは、近代以降の歴史に、関心が集中していることも、予想される。
そのような場合、世界史探求や世界史Bの教科書ではなく、「歴史総合」という科目の教科書を読んでみるのも、ひとつの方法で有る。
ほぼ、近代以降の部分に焦点を絞って、歴史を勉強することが出来る。
最後のほうで、話がやや脱線気味になってしまい、申し訳ありませんでしたが、本書は、歴史の大きな流れをつかむための最初の一冊としては、本当に良いと思っています。
最後までレビューをお読みいただき、ありがとうございました。
教養としての「数学I・A」 論理的思考力を最短で手に入れる
2023/09/29 10:46
論証の過程を重視した良い本です
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
序章の中にある、「本書の特色」によれば、数学から遠ざかっていた文系社会人を主たる対象として書かれた本であるそうだ。
文系社会人が相手だからといって、単に公式を紹介して終わりというのではなく、公式導くための論証の過程が重視されているのが良い。
副題に、「論理的思考力を最短で手に入れる」と有るのもうなずける(ややおおげさな表現とは思うが)。
ただし、ページ数からくる制約なのか、説明が簡略化されている部分もあると思われる。
たとえば、正弦定理の証明は、場合わけをして行うのが一般的であり、本書に記載された証明は、場合わけされたなかでのひとつにすぎないように思われる。
他にも、方べきの定理の証明の中で、円に内接する四角形の性質が、証明ぬきで使われていたりもする。
確かに、円に内接する四角形の性質はよく知られているし、その証明についても、円周角の定理を使って、簡単に出来る。
ただし、前述したような本書が対象とする読者に、そこまで期待出来るのだろうか。
疑問を感ずる。
以上のような訳で、良い本ではあるが、より本格的に書かれた本をもう一冊傍らに用意して、疑問を感じたところを適宜調べながら読み進めるのが適切ではないかと考える。
新・物理入門 増補改訂版
2023/09/27 10:28
正統的な物理学への入門書
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
駿台受験シリーズのなかの一冊として刊行されており、本来は大学受験生向けの書物として発行された本と思われる。
しかし、その内容はというと、普通に、正攻法な物理学への入門書となっている。
高校生向け参考書が、しばしば結論天下り・あるいは算数的なイメージにたよった説明で済ませてしまいがちなところを、この本ではきちんと数学を使って、その数理的メカニズムを説明している。
ただし、数理的にもしっかりとした根拠づけをあたえるために、高校レベルを超える数学が使われている箇所もある。
それゆえに、多くの高校生・受験生にとっては、難易度の高い本になっているのではないかと考える。
私自身は、大学受験をだいぶ昔に終えた一般人だから何とも思わなかったが、高校生・受験生にとってそれほど読みやすい本だとは思えない。
書籍のタイトルは、「新物理入門」となっているが、高校段階での物理の一般的内容と比較すれば、「入門」といえるようなレベルは超えていると思われる。
普通に考えれば、高校レベルというよりは、高大接続レベルに近い位の本ではないかと思う。
購入を検討している高校生・受験生諸氏においては、この点をご注意されたい。
また、他の本が結論天下りで済ませてしまいがちな部分を、その数理的根拠まで含めてきちんと理解したからといって、そのことが、どこまで入試における得点力に直結するものなのか、私には、わからない。
通常の場合であれば、出題者の側においてさえ、大学レベルの数学を駆使してまで、受験生が突き詰めて物理を理解をしていることまでは期待しないと考えられる。
よって、本書が入試対策として有効な手段かどうかについては、疑問も残る。
以上をまとめるならば、物理学への入門書、あるいはまた、一般向けの、物理を学びなおすための書物として見た場合には、本書は非常に素晴らしい。
ただし、この本が、高校生及び受験生向きかと言われれば、その点には疑問も感じる。
予備校系の出版社から発行されているのが不思議に感じられるような、そういう意味で異色な良書。
以上のような趣旨で、星4個とさせていただいた。
この本がもし、普通に物理書のコーナーに並べられているような本ならば、文句なく星5個である。
(物理書としては、入門レベルになると思うけれど)
駿台受験シリーズの中の一冊として刊行されているため、一般読者の目にはふれにくいであろうことが惜しまれる。
追記)
高校物理の内容をを数理的にも丁寧に解説する本が、他にも無い訳ではない。
ただし、本書はそういった書物のなかにおいて、コストパフォーマンスという点で圧倒的に優れている。
内容そのものに関しては、人によって、どの本が良いのか評価は分かれ得ることだろう
ただし、確実に言えるのは、値段の手頃感については、本書は類書の追随を許さない存在であるということ。
1000円を少し上回る程度の値段において、これだけしっかりとした内容の本が販売されているのは、本当に驚異的なことである。
あなたの知らない脳 意識は傍観者である
2023/08/09 12:31
とても興味深い内容
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
脳科学における成果が明らかにしたところによれば、私達は、自分が思うほどには、自分の行動を意識的に決定している訳ではないそうだ。
そのような認識を前提にしつつ、話題は広く刑事政策に関する考察にまで及ぶ。
個人的には非常に興味深く読ませてもらったし、そもそも「知性」と言われているものは何なのか、考えを新たにさせられた。
日本語訳も非常に自然で読み易く、ひきこまれるようにして読んだ。
本来であれば星五つを付けたい。
だが、私自身はこの分野に関して全くの素人で、この本で指摘されていることが、この分野の専門家の間で一般的に(正当と)認められていることなのかが、わからない。
そのような訳で、個人的感想だけに基づいて、星五つ付けるのは、レビューを参照しながら購入を検討している方々に対して無責任で有るようにも思われ、控えめに星四つとさせていただいた。
また、少し古い本なのも気になった。
文庫化されたのはもう少し後だが、最初に本書の日本語版が出版されたのは2012年のことである。
もちろん、原著の出版は、さらにそれより前ということになる。
さすがに十数年もの時間がたつと、現在の脳科学の観点からは古くなってしまっている記述が含まれている「可能性」を否定しきれない。そして、もし仮にそういう記述が含まれていたとしても、素人の私にはわからない。
判別出来ない。
そういった点も、星五つを堂々と付けることをためらわせた。
最後に、繰り返しで申し訳ないけれど、純粋に個人的感想だけに基づくならば星五つ。
「数学的センス」を磨くフェルミ推定
2023/06/28 22:44
タイトルはやや大げさに感じる
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
フェルミ推定については、最近話題にされることが多いと感じていたので、どのようなものか知りたくて購入した。
そんな動機から読み始めたせいか、読後の感想としても、目を通しておくに値する書物だったと、概ね肯定的には感じている。
ただし、この書籍のタイトルはやや大げさであるようにも感じる。
「数学的センス」を磨くというほどの大げさな問題であろうか?と、個人的には、少し違和感を感じる。
専門書・学術書ではないのだから、あまり過大な期待はせずに、もう少し気楽に読むべき本ではないかと感じている。
かしこい人は算数で考える
2024/04/03 11:11
比較的多くの方に勧められ得る良書
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
算数・数学の根本にある考え方を、わかり易く解説した良書だと思います。
基本的には、文系出身者で、しかも、算数・数学があまり得意でなかったという方々にもわかるように、そういったレベルで書かれた本だと感じました。
しかし、学生時代に、人並みには(数学が)出来たという方が読んでも、意外と気づかされる部分が有るかと思います。
(得意だったという方には退屈だと思います)
算数・数学の勉強というと、どうしても、公式の暗記や問題演習(人によっては「解き方を覚える」)に焦点が集まりがちになります。
しかし、結局のところ、そういったことを背後で支える「考え方」の部分もわかっていなければ意味がない、ということではないでしょうか。
この本のなかで紹介されている、算数・数学の考え方は、出来る人・得意な人から見れば、ほとんどが初歩的なことばかりだと思います。
しかし、中級以下の方が読むと意外と気づかされることが多いのではないかと思います。
なぜなら、基本的なことではあっても、学校教育のなかにおいては、通常、あまり時間をかけて丁寧には説明されないようなことも、書かれているからです。
(「出来る」人は、そういう部分も自力で理解してしまうのですが…)
なお、算数・数学教育や入試制度のあり方に対して提言がなされている箇所もあり、個人的には、その内容にもおおむね賛同出来ました。
本書のタイトルは、「かしこい人は算数で考える」となっていますが、実際に読んでみると「算数」どころか、大学レベルの数学を学ぶ際に前提となるような考え方も、一部には含まれていますので、そこのあたりは、「算数」という言葉にだまされて、過度に低く見て欲しくないです。
あくまでも、「難解な数式は振り回さない」といった程度の意味で、そういうタイトルがつけられていると思います。
よく読んでいただければ御理解いただけると思いますが、考え方そのものとしては、意外と高度な部分(算数どころか高校数学でも足りないような部分)も、一部には含まれていると思います。
思いますに、算数・数学は、比較的、得意・不得意がはっきりとわかれる科目かもしれません。
しかし、本書で言及されている程度の考え方には、たとえ文系出身者であっても(そして、もちろん、大学には行っていない方でも)、ついてゆけて良いのではないでしょうか。
読んでいて、面白い本でもあるので、おすすめです。
ただし、ページ数・記述量の制約からか、詳細な解説を他書にゆだねている箇所がしばしば見られる点は、残念でした。
ニュースの数字をどう読むか 統計にだまされないための22章
2024/02/22 11:25
よくまとまっている
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
データ社会到来などと言われるようになって、もうどのくらいになるだろう。
統計に関する基本的な理解は、もはや、年齢や性別・職業を問わず、必須の教養になっているといってもよいであろう。
一般書である本書に書いて有ることは、統計を学んだことのある方ならどこかで聞いたことが有るような話ばかりなのだが、データに接する時に注意すべきポイントが、要領良くまとめられていると感じる。
おすすめ出来る。