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第一楽章さんのレビュー一覧

投稿者:第一楽章

41 件中 16 件~ 30 件を表示
英語独習法

英語独習法

2021/06/27 12:36

科学的な学習法

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

やみくもな多読・多聴や早期学習ではなく、認知科学に基づいた science-based な英語学習法を提示。深い語彙力とその枠組みとなる知識”スキーマ”を身につけることこそ英語の達人への道、そしてそのためには、むしろ「熟読・熟見・熟書き」が有効なのだとのこと。独習に活用できるオンラインのツールとその使い方も紹介されていて、確かに『独習法』というタイトルに偽りなし、という内容でした。仕事で英語を使う人向けです。

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周囲の支えが温かい

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1年にわたりうつ病と戦い、克服したプロ棋士の当事者手記です。トップ棋士が7手詰めの詰将棋すら解けなくなる、その不安や恐怖に、こちらまでぞっとします。身に覚えがある者として、なんだか当時の苦しみを思い出し辛く感じることもありましたが、先崎九段の誠実に正直な筆のおかげで最後まで読めました。この本の特徴は、完全に治ってからではなく回復期に少しずつ書かれたことです。ですので、同じエピソードでも食い違いを感じたりすることがありますが、それがとてもリアルです。
また、精神科医を勤める先崎九段の兄が、非常に大きな役割をしています。先崎自身にとって力強い伴走者であったことはいうまでもありませんが、兄が先崎に語った医師としての言葉、苦悩はまた、読者や社会にとっての鋭い問題提起でもありました。巻末の佐藤優の解説もよいです。

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ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か

ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か

2021/05/22 21:30

分断をエネルギー源とする限界

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ポピュリズムを、「『人民』の立場から規制政治やエリートを批判する政治運動」と定義し(P.8)、ポピュリズムの歴史と変遷を南北アメリカからヨーロッパへとたどる(時々日本にも寄り道し)1冊です。2016年11月、衝撃的な米国大統領選挙と同時期に刊行されて話題になりました。副題に「民主主義の敵か、改革の希望か」とあるとおり、ポピュリズムが既存の政党に緊張感を与え改革を促してきたという一定の貢献を、筆者は否定しません。それでもなお危うさがあるのは周知の通り。
7章後半にまとめられている、ラテンアメリカでのポピュリズムとヨーロッパで広がりを見せるポピュリズムの対比が秀逸でした。圧倒的な経済格差が存在する前者(ラテンアメリカ)においては、政治や経済を独占するエリートへ異議を申し立て、富や権利の再分配を求める左派的な性質を帯びる。これに対し、社会福祉政策が整備された後者(ヨーロッパ)におけるポピュリズムでは、その福祉の受益者を”特権階級”とみなし、そこに批判の矛先がむけられ、故に難民や移民とそれを積極的に受け入れる政治が攻撃の対象となり右派的な性質を帯びるという違いがあるとのこと。
ただし、両者に共通していると思われるのは、ポピュリズムを支持しているのは、「取り残された(left behind)」人々であるということ。それは例えば経済発展から取り残されたラテンアメリカの貧困層の人々であり、社会や産業構造の変革から取り残されたアメリカのラストベルトやヨーロッパの中高年の白人ブルーカラーの人々です。
ハリウッドの映画だと人類的な危機を迎えると一致団結して立ち向かう姿が描かれますが、COVID-19が発見され蔓延してから1年ほどの状況を見るとむしろ逆に、国際的にも国内的にも分断が広がり、「取り残されている」と感じる人が増えているのではないでしょうか。日本でも自殺者の増加という悲しい統計に現れているように思います。こうした状況を奇貨と捉え、爪を研いでいるポピュリストたちがいるであろうこと、そうした彼らのこれまでの歩みをこの本から知ることができます。国連の持続可能な開発目標 SDGs は「誰も取り残されない(No one will be left behind)」というスローガンを掲げていますが、開発だけではなく政治も含めてあらゆる面で本質的なポイントだと、改めて思わされます。分断をエネルギー源とするポピュリズムでは解決できない点であり、ここにポピュリズムの限界がありそうです。

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社会問題とは何か なぜ、どのように生じ、なくなるのか?

社会問題とは何か なぜ、どのように生じ、なくなるのか?

2021/05/22 21:27

社会問題をプロセスと捉える

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「社会問題」を、ある有害な”状態”として捉えるのではなく、「これは問題だ!」と声を上げる人がいて、それに賛同する人が現れることで問題化し政策に反映され…という”過程(プロセス)”として捉えることで、古今東西の多様な社会問題について批判的に考察するためのツールを提案する本です。
筆者は、”社会現象過程”は典型的には次のような6つのステップからなる「自然史」を辿るといいます。
(1)クレイム申し立て(「これは問題だ!」という声を上げる人がいる)
(2)メディア報道(それをメディアが報じる)
(3)大衆の反応(賛同する人が増える/無視する/反対の主張(クレイム)が現れる等)
(4)政策形成(法律やプログラム、規則などに反映される)
(5)社会問題ワーク(ステップ4で決まったことが実行に移される)
(6)政策の影響(実行された政策の及ぼした影響が評価される)
最後のステップで、政策の結果、(1)で申してられた「トラブル状態」の改善が不十分であったり悪化していたりすれば、またそれを「トラブル状態」と捉えて新たなクレイムが申し立てられます。そういった点では、(1)から(6)のステップは一方通行ではなく循環するものであり(”自然史”というより”ライフサイクル”と呼んだ方が合っていそう)、またステップの間でも相互作用が生じます。著者も当然その点は承知しており、上記のモデルは単純化しすぎであり、より実際に近いモデルを第11章で示しています(そこではやはりサイクルとして描かれています)。
#MeToo や #Kutoo といった運動も、あるいはグレタ・トゥーンベリさんの「未来のための金曜日のストライキ」も、この本で提示された枠組みで振り返ってみると今どこにいてどこに向かうのかが見えてくるように思われます。

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武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

2021/05/22 21:23

プロセスに焦点を当てて哲学を読む

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山口氏は、哲学に触れるにあたり、「何を言ったか」というアウトプットよりも、なぜ・どう考えたのかというプロセスや時代背景こそに注目すべきと指摘しています。現代の科学から見れば陳腐化している考え方もありますし、キーワードだけを拾い上げられても抽象度が高すぎて何を言っているのかわたしにはワカラナイ。また「ソクラテスは/パスカルは/マキャヴェッリはこう言った」なんて、カッコイイ文句だけ拾い上げて紹介したり(「で?」と言いたくなります)、それを自分に都合よく解釈したり、なんてものも目につきます。
こうした理由で哲学というものに苦手意識があったのですが(高校の倫理の教科書もつまらなかった)、プロセスと歴史的文脈に注目した山口氏の紹介や解釈を読むと、なぜそんなことを考えたのかが、哲学者・思想家たちの問題意識がちょっとわかってきて、じゃあちょっと読んでみようかという気持ちが起きます。故に、これはとっても贅沢な大人のための読書案内でもあります。
さて、表現されたものだけに注目するとよくワカラナイけど、歴史的背景や文脈に注目するとなんでこんなことをしようとしたのか見えてくる、というのは現代アートもそうで、『13歳からのアート思考』(末永幸歩)でなるほどと思わされました。美術で言えば現代アートに限らず、またクラシック音楽でもそのようですね(『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』(片山杜秀))。思想であれ、芸術であれ、時間という厳しい審査を経てなお受け継がれてきたものには、それ故の価値があるはずで、ならば上っ面だけではなくて文脈込みでじっくり付き合う方が、得られる楽しみも大きそうです。

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エルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告 新版

エルサレムのアイヒマン 悪の陳腐さについての報告 新版

2021/05/22 21:22

誰もが持つ陳腐さ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ナチ政権下のドイツで、強制収容所に集められたユダヤ人をアウシュヴィッツをはじめとする絶滅収容所に移送する実務の責任者だった、そして第二次世界大戦後は身分を隠しアルゼンチンで潜伏生活をしていたアイヒマンの裁判報告です。ただ単なる報告に収まるものではなく、多くの突き刺さるメッセージが散りばめられているので、諦めずに読んで良かったです。巻末の訳者解説から読むと、“読みどころ”が見えていいかもしれません。
副題の”陳腐さ”というのは奇妙に響きます。本書は英語版を基本にしていますが、英語版タイトルで「陳腐さ」に相当する単語は banality です。オックスフォード英英辞典によれば、それは the fact or condition of being banal; unoriginality と説明されています。banal は so lacking in originality as to be obvious and boring とのこと。特別なものではなく、むしろ退屈なものを指す語です。
ホロコーストという歴史に悪い意味で残る(そして忘れてはいけない)所業の実務者であったアイヒマンの何が「陳腐」なのか。アーレントは次のように断じます。
「彼は自分のしていることがどういうことか全然わかっていなかった。(中略)彼は愚かではなかった。まったく思考していないことーこれは愚かさとは決して同じではないー、それが彼があの時代の最大の犯罪者の一人になる素因だったのだ。」(P.395)
アーレントはアイヒマンを、何かとんでもない「モンスター」でもナチの大立者でもなく、その犯した罪に比べれば極めて小物の公務員として見ており、考えることなしに無批判にシステムに最適化しようとしたその姿勢を「陳腐」だと断じています。こうした見方に加え、国際法廷ではなくイスラエルの地方裁判所で開かれた裁判自体の正当性、アイヒマンの移送実務に協力したユダヤ人団体の存在など、アーレントは極めて冷静で公正な視点で裁判を見つめています。
例えば、旧軍人や叙勲されたユダヤ人などは、他のユダヤ人とは異なる特恵的な扱いを受けたことに対しアーレントは、
「以前からナチが認めていたはっきりしたカテゴリーに応じて苦しみを免除することのほうだったということである。これらのカテゴリーをドイツのユダヤ人は最初から抗議もせずに受け容れていた。(中略)これらの特恵的カテゴリーの容認において最も有害なことは、自分を<例外>とすることを要求する者はすべて、暗黙のうちに原則を認めてしまっていたことである。しかしこのことは、優遇的な処置を要求し得る<特例>のことで頭がいっぱいになっているこれらの<善良な人々>ーユダヤ人たると非ユダヤ人たるとを問わずーにはどうも全然理解されなかったらしい。」(P.184~185)
と、皮肉を込めて難じています。わたし自身だったらこうした<特例>を求めずにいられるだろうか…と胸に手を当てたくなるくらいですが、身に覚えのある当事者であれば同胞から自身に矛が向けられていると感じても致し方ないでしょう。
こうした眼差しゆえに、また上述のように誰もが心穏やかでいられなくなる鋭い思索ゆえにという点もあると思うのですが、この本の出版前から一大スキャンダルとなり、ユダヤ人の友人たちを失うという代償を払わされることになります(矢野久美子『ハンナ・アーレント』、中公新書)。

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青い野を歩く

青い野を歩く

2021/12/14 22:38

アイルランドの風土を感じる短編集

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アイルランドの作家による、短編集。表題作と合わせて8編の短編が収められていますが、わたしは、『長く苦しい死』がもっとも気に入りました。執筆に打ち込むため、ある著名な作家の遺した家に滞在する女性作家のもとを一人の紳士が訪問します。彼の「創作とは、文学とはかくあるべし」という価値観の不躾な押し付けに辟易した作家は、彼に「長く苦しい死」を与えることで復讐します(その与え方がキーなので伏せます)。因習に囚われた土地や人とそれに争う人の対比が、静かでかつ緊張感を持って描かれます。
収められている物語はどれも、哀しみや葛藤、不条理への憤懣など、決して豊かではなくまた保守的なアイルランドの土地を感じさせます。登場人物も風景描写も寡黙で、灰色がかり風の音が感じられるようです。スコットランドの晩秋の長い夜と強い風の音に包まれて読むには、うってつけの1冊でした。

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不思議な羅針盤

不思議な羅針盤

2021/10/09 22:23

慌ただしい時代こそ、羅針盤を持つ必要性

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日々の暮らしでのちょっとした出会いを(それは人だけではなく植物や動物や食材も含めて)、梨木さんらしい感度の高さで綴った28編のエッセイです。梨木さんの話は地に足がついている感じがする上に、周囲を見る目の解像度が高くて、こうありたいものだといつも思わされます。自分の中に”羅針盤”があるとはこういうことかなと思います。
(平松洋子さんの『夜中にジャムを煮る』の話の流れから)「真夜中の台所でぐつぐつと変化してゆく真っ赤な苺を見つめる、その心もちを、たとえば真昼のスクラングル交差点を渡っているとき、ふと引き寄せて、空を仰ぐ。
 わずかに見える都会の空に浮かぶ雲の種類から、その雲と自分との距離を測ってみたりする、刷毛ではいたような巻雲なら、一万メートルほど。そこには西風が吹いている。
 五感を、喧騒に閉じて、世界の風に開く。」(P.99、五感の閉じ方・開き方)
最近同僚に借りて、浦沢直樹の「MASTERキートン Reマスター」を読みました(本編のその後の物語です)。最後のエピソードは、フォークランド紛争で主人公と共に上陸作戦を行なった、そして戦争によって、人生、倫理観の羅針盤が狂ってしまった戦友の物語でした。
戦争ほどの極端な経験ではなくとも、忙しさやストレスで自分の中の”羅針盤”はとかく見失いがちですよね。最近読んだなかで日々暮らす上での”羅針盤”の大事さを感じた2冊でした。

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長門守の陰謀 新装版

長門守の陰謀 新装版

2021/10/09 22:22

表題作以外も素晴らしい

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庄内藩のお家騒動を、丹念な調査の上で史実に基づいたドラマとして仕立てた表題作のほか、江戸の下町の大人の男女の機微(そして怖さ)を描いた「春の雪」「夕べの光」「遠い少女」。そして、見た目も仕事ぶりも物足りないしがない藩士の夫との二人住まいに、江戸から来たという美丈夫の居候を迎えたことで、武士の世界を垣間見ることになった妻の視点から描かれた「夢ぞ見し」。どれも藤沢周平らしい、人間の心情とその動きの細やかな描写が光る短編集でした。
夏休み用に購入しました。藤沢周平はもっとも好きな作家の一人ですが、購入したのは久しぶりでした。やっぱりいいですねえ…
文春文庫の藤沢周平はどれも、表紙の絵もとてもいいのですが、画風が似ているなと思って確かめたら、多くが蓬田(よもぎだ)やすひろという方の絵でした。無駄がないけど温かい、藤沢周平の作品によくあっているなと思いました。

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テンプル騎士団

テンプル騎士団

2021/10/09 22:19

時代を捉えた合理的な組織だった

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ダヴィンチ・コードでも重要な意味を持つ”テンプル騎士団”について、史料に基づいてその謎のベールに包まれた集団の真の姿を描き出した一冊。
”テンプル騎士団”は、十字軍によってキリスト教側が奪還した聖地エルサレムに詣でる巡礼者の保護を目的に1119〜1120年に設立されましたが、修道士と騎士の両側面を持つ時点で、設立当時から類を見ない団体でした。
次第に、政治力、経済力、軍事力の面で力を持った超国家的組織に成長し、各地に管区と支部を置くネットワークを構成します。それは教皇直属でどの国家からも制約を受けず、今でいう銀行業を通して富を蓄え、中世で初めての常備軍というものでした。
しかしながら、あまりに大きな力を持った結果、それを恐れる者たちが現れます。1307年10月13日の金曜日、フランス王フィリップ4世はフランス国内のテンプル騎士団の管区と支部を一斉に摘発し騎士たちを逮捕し、これをきっかけにテンプル騎士団は消滅します。
設立から200年弱、まるで彗星のように歴史を駆け抜けました。だからこそ、多くの謎を残し(と人々が感じ)、多くの伝説が生まれ、まだ地下で生き残っている(それがフリーメイソンであるとか)といった話がまことしやかに語られるのでしょう。
ですが、史料が示す姿には何も神秘的なものはなく、独自性と時代の要請がかけ合わさった結果として生まれた、空前絶後の集団だったと見るべきでしょう。非常に丁寧に調査されている結果が、新書のボリュームでコンパクトにまとめられていて、とても贅沢な本です。佐藤賢一氏は、西洋史を描かせたら抜群だと思います。

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マイノリティデザイン 「弱さ」を生かせる社会をつくろう コピーライターが福祉の世界に飛び込んでみたらできたこと

マイノリティデザイン 「弱さ」を生かせる社会をつくろう コピーライターが福祉の世界に飛び込んでみたらできたこと

2021/09/19 00:22

見えない息子と向き合って

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広告代理店に勤める筆者が授かった長男が、目が不自由であることがわかってからの奮闘記(活躍といってもよいかも)です。
「父親がキレイなCMをつくったところで、視覚障害のある息子は見れない」という苦悩から、「マイノリティに「広告的なやり方」で光を当てられないか?」と考え、苦手/できないこと/コンプレックス/障害といった「弱さ」を、”克服しないといけないもの”ではなく”社会が解決すべき課題、むしろ「伸びしろ」”と発想を転換し挑戦と企画を重ねていきます。
「当事者の声を聴くこと」、そして「まずはやってみること」という筆者の姿勢はとてもいいなと思いました。抽象的なターゲットやペルソナを設定するのではなく、目の前の困りごとを解決する。例えば、車椅子の車輪に巻き込まれず脱ぎ着もしやすいスカートが欲しい、そんな声に応えようとユナイテッドアローズと協働した「041(オールフォーワン)」。それが結果として、機能性もデザイン性も兼ね備えた商品の開発となります。初めからマスを相手にしようとすることの限界と、マイノリティに着目してそこから展開していくことの可能性の双方を感じました。
写真でも見えるかなと思いますが、この本のカバーには小さな凹凸があります。点字です。調べてみたら「マイノリティデザイン」と書かれていました。視覚障害を持った息子さんへの思いを感じました。わたしにとっても「なんて書いてあるのだろう?」と思って調べ、点字を読むことに挑戦するきっかけになりました。(わたしには指先の感覚だけではわからず、結局凹凸を目で確認したのですが…)
この本のメッセージを象徴すると思ったので付記します。

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王妃の離婚

王妃の離婚

2021/09/19 00:21

正義はどちらに

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フランス王ルイ12世と王妃ジャンヌ・ドゥ・フランスの離婚訴訟に題をとった法廷小説です。第121回直木賞受賞作。
主人公は若さ故の奔放さのために高い代償を時の王ルイ11世に払わされた過去があり、その娘であるジャンヌの離婚裁判を、復讐に似た情念で見届けるために、間接的な復習を果たすために裁判を傍聴します。が、その不公正さに憤り(と一言では簡単には書けない葛藤があるのですが)、ジャンヌの裁判の弁護を引き受けることに。
そこから先は胸のすく啖呵あり、アクションありのエンターテインメントでもあるのですが、そこは佐藤賢一、単なる娯楽には止まりません。過去には自分を傷つけ深い恨みを抱いた相手を、目の前の裁判を進めるためには信頼しなければならない、そんな相反する感情、葛藤を見事に描いています。緊張感とドキドキが止まりませんでした。
ラストは、わたしは救いがあったように思いましたが、どうでしょうか・・・

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剱岳−線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む

剱岳−線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む

2021/07/30 21:14

ファースト・クライマーは誰か

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明治時代、まだ未踏峰と考えられていた剱岳に、日本地図の空白域を埋めるため、日本陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎率いる測量隊が命がけの登頂に臨み山頂にたどり着きます。ですが、そこで彼らは錫杖頭と鉄剣という古代の仏具を発見します。
「剱岳に最初に登ったのは誰なの」。新田次郎の『剱岳ー点の記』のテーマでもあったミステリーに探検家の高橋大輔が挑んだ一冊です。
山岳信仰を手がかりに、乏しい史料を一つ一つ積み重ね考察していくとともに、実際に高橋自身が剱岳に登ってみることで、どのルートから山頂にたどり着いたのかを考察していきます。
高橋は5W1Hの仮説をまず立てて、それを史料や地元の人たちの記憶、実際に剱岳を歩いての体験に照らして検証していくのですが、初めに立てた仮説にこだわるのではなく、整合しない点があれば仮説を更新していきます。その柔軟性が素晴らしいなと思いました。

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渡りの足跡

渡りの足跡

2021/07/25 21:24

自然の中から自分を見つめる旅

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バードウォッチングを趣味にしている梨木さんが渡り鳥の姿を追いながら、鳥の「渡り」や人々の移動・移住について思索を巡らせる紀行文です。
「自分の庭に毎年来ているジョウビタキ(スズメほどの大きさ)が、実はいつも同じ個体で、夏にはシベリアにいるのだ、ということがわかったときの言うに言われぬ喜びは他を以って代え難いものだ。そのときに湧き起こるこの小さな他者への畏敬の念は、傲慢な人間であることの罪から、少し私を遠ざける気がする。」(P.96)
目の前の小鳥が危険を冒して何千キロも飛んでやってきたのだと思うと、見る目が変わるとともに、なぜそこまでして・・・と思わされます。
鳥に限らず、山の大きさ、星の輝き、海の広がり、震えるほどの森の暗さ、野生動物と対峙した時の不安感などなど、自然に触れることで、自分自身の小ささ、あるいは人間というものの生物としての弱さを再認識し謙虚さを取り戻せるように思います。自然という、はるかに大きなもの・ままならないものに向き合って自分自身を相対化、客観視することの大事さを思い出す1冊でした。

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ラファエロ カラー版 ルネサンスの天才芸術家

ラファエロ カラー版 ルネサンスの天才芸術家

2021/06/27 12:59

単なる「天才」ではないラファエロ像

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2020年が没後500年となるラファエロの画業が、たくさんのカカラー図版とともにコンパクトにまとめられていて、入門書として良いものだと思いました。
ラファエロといえば聖母子、というイメージもあるかと思いますが、ローマで年代的にはもっとも遅く描かれた《小椅子の聖母》は明らかにフィレンツェ時代に描かれたものと異なり、ミケランジェロやダヴィンチその他の芸術を吸収しながら変化し続けたことが感じられます。
「彼は単なる儚げな夭逝の画家ではなく、若年のうちから古今の芸術を熱心に学び、ステップアップした野心家であった。宮廷の貴族たちと交流をもつ宮廷人でもあり、さらに、周囲の芸術家たちをまとめる監督者、古代ローマの芸術と都市について調査を行う考古学者でもあった。」(P.202)
孤高の巨人だったミケランジェロ、周囲の理解とサポート、運に恵まれなかったダヴィンチと比べると、単なる「天才」ではないラファエロ像が浮かんできます。

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オンライン書店e-honとは

e-hon

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「e-hon」は書籍、雑誌、CD、DVD、雑貨といった多岐に渡る商品を取り扱う総合オンライン書店です。130万点以上の取り扱い点数、100万点以上の在庫により、欲しい商品を買い逃しません。honto会員向けにお得なキャンペーンを定期的に実施しています(キャンペーンに参加するにはMy書店をhontoに設定して頂く必要があります)。
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