「何者でもない私たち」の声が響く。肩書を超えたSNS発信の力

「何者でもない私たち」の声が響く。肩書を超えたSNS発信の力

誰しもがソーシャルメディア(SNS)を活用し、情報を入手・発信する今の時代。新型コロナウイルス感染症拡大で人と人の「つながり」がオンラインに移行する中、社会を映す情報インフラとしてSNSの存在意義はこれまで以上に高まっている。

一方、SNS活用には必ずしも正解があるわけでない。それ故に、自らが発信を続ける目的を見失ってしまう事もある。また、多くの人にとって情報発信はまだまだ敷居が高く、「自分の発信に価値があるのだろうか」と懐疑的な声も多い。それでも、SNSでの情報発信が仕事での機会や、思わぬつながりを生み出すことも。

戸田岸舞さんも、SNS上の発信が自らの可能性を開くきっかけになった一人だ。パートナーのキャリア転機に伴い米国で「駐在妻」となった2019年、戸田岸さんがSNS活用を始めたきっかけは、海外にいながら「ビジネス感覚を磨き続ける」ことだった。初めは探り探り情報発信のやり方を模索していた戸田岸さんだったが、思考錯誤しながらもSNS上での交流を続けた結果、それがきっかけでビジネスリーダーとの接点が生まれ、機会が広がっているという。

「フォロワー数は決して多くない(2021年7月時点で1000人以下)」と語る戸田岸さん。そんな戸田岸さんは、何故SNSで機会を得ることができるのか。正解のないSNS活用において、情報発信の「軸」として意識していることは何か。編集部が聞いた。

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――戸田岸さんがリンクトインで情報発信を始めたきっかけは何だったのですか?

最初のきっかけは、(リンクトイン・インフルエンサーの)薄井シンシアさんが開催した専業主婦を対象にしたLinkedIn活用のオンライン講座でした。

2019年に当時の仕事を辞めて渡米する時、私は「帰国したらまた働きたい」と考えていました。でも、自分はどうすれば将来仕事に戻れるか。そして、どういう状態で戻るのか。せっかくアメリカに行くなら、最低でも渡米前と一緒か、可能であれば前以上の自分になって戻りたい。そう考えていたんです。そのため、現地でリアルな人と人のコミュニケーションを行い、自らの五感で経験することを求めていました。

しかし、2020年に状況が大きく変化しました。新型コロナウイルス拡大で外出が禁止され、人とのコミュニケーションを肌で感じる機会も失われてしまった。加えて、自分が求めていたのがビジネスの接点でした。

そんな中、シンシアさんがセミナーを主催されると聞いて、「ビジネスSNS」であるリンクトインについて理解を深める機会がありました。当時、リンクトインは日本で今のように活発な使われ方がされていなかった。だからこそ、多くの人が知らない世界を経験してみる価値がある。シンシアさんがそう仰るのを聞いて、「今その場所を経験してみることで、新たな自分の可能性につながったり、変化が起きるかな」と思ったのがきっかけでした。


――「誰もやらないから、やらない」となる人が多い中、戸田岸さんは「誰もやっていない、だからこそやる」という発想になったんですね。

そこは、前職の経験も大きいかなと思います。もともと広告業界にいたので、世の中にないものを発信して、新しい選択肢を届けることに対する関心は高かったんです。そのため前例がないことへのチャレンジ経験が多く、その感覚は仕事から離れても大事にしたいと思っていました。

あとは、前例がないからこそ「こうでなければならない」という先入観がなかったのも大きかったです。今まで誰もやったことがないからこそ、やってみる価値がある。前例の有る無しに囚われなかったのは、そのあたりの感覚が大きかったのかも知れません。


――ソーシャルメディアを使って、前職で得たビジネス感覚を実践していこうという発想は面白いですね。

駐在妻として渡米準備を始める際、キャリアを止めない過ごし方について色々と調べたりもしたのですが、私にとってはどれもあまりピンと来るものはなかったんです。それよりも、みんなが当たり前に知っているようなことでないことを知る、という方が私には魅力的に感じました。米国で五感を使ったコミュニケーションで触れようとしていた感覚と同じように、日本ではまだ一般的ではなかったリンクトインの世界を経験してみることで、その経験を自分の言葉で語れるようになるかも知れない。そんな思いでした。


情報発信は「自分を知る」手段

――実際に情報発信を始めるのに、あまり抵抗はなかったのですか?

実は、最初の投稿を始めるまで、1週間ほど他の方の投稿をずっと眺めていました。それまで一般に公開する形で個人アカウントのSNSを活用しなかったので、まずは表現の仕方や、言葉遣いなどを見て、自分が読んだ時にどう感じるか、自分の感覚で抵抗なく受け入れられるかを自分の感覚とすり合わせていきました。その中で、建設的なコミュニケーションを目指す方の投稿は、読むだけでもとても勉強になること。その表現方法も、1つや2つではなく、色々なアプローチがあることを学びました。

一番最初に投稿したのは、2020年8月に開催されたシンシアさんのイベントに参加した時のレポートでした。私の中でそれが「私ごと」と言うか、イベント参加者としての当事者目線での発信ではありつつも、少しでも多くの方の参考になりそうなテーマだったので、これだったらビジネスSNSに投稿しても大丈夫かなと思ったんです。

その後、レポートからシンシアさんとのご縁ができ、First Step編集長に任命頂いたことで、専業主婦期間を過ごす立場からの発信を、他のユーザーの方々にご注目頂けたり、励ましの言葉を頂いてきたことも、その後の私に大きな影響を与えて頂きました。

その次の投稿は、編集部が当時開催していた #おうちオフィス でした。空き箱を目線を上げるPC台として使った写真を載せたもので、最初の投稿よりも自分のプライベートに近い部分を投稿したものだったのですが、読んだ方が多くのリアクションや反響を下さって。その時に自分の中の潮目が変わったというか、「自分らしさ」を出すことへの抵抗感が薄れたきっかけになったんです。

個人的に、ビジネスSNSでの情報発信って仕事マインドの自分に近いかなと感じていて。仕事の時の自分って、プライベートな自分とは少し違いますよね。色んな人の建設的なやり取りや交流を体験する中で、私にとっては投稿を続けることで、自分が鈍らせたくないビジネス感覚に活かせる体験ができそうだという実感がありました

加えて、投稿を続けていくことで自分が社会や世の中で今タイムリーなことについて学んでいる、という足跡を残しておきたかったというのもありました。自分がその時に何をして、どう考えていたのか、という記録を残すことで、駐在帯同から帰った時に仕事を離れていた期間の経験について話せるようにしておきたかったのです。

もちろん、ノートに自分だけの日記として記すこともできたと思います。ただ、それだと人の反応が得られない。人に見せない安心感がある一方で、自分の考えを人に見てもらうことによって得られる反応とか、客観的な視点や考え方に触れる機会がなくなってしまう。もしかしたら自分では価値や可能性に気付いていないことが、周りの人にとっては新しい視点だったりするかも知れない。自分と社会が結びつく機会になるという意味でも、日記ではなく投稿で残してみることに興味を持ちました。


「自分が持っているもの」を自覚する

――投稿を始めることで、戸田岸さん自身が「専業主婦」としての自分の声の価値に気づくことができたのですか。

実は私、「専業主婦」の声を代弁するにはまだまだそのキャリアが浅いと思っていて。他の方で10年以上専業主婦のご経験を持つ方に比べると、専業主婦としての私のキャリアとしては2年程度と比較的まだ短いので。

なので、そこは「無いものは無い」として割り切って考えています。今の自分ができることとできないことを理解して、受け止めることって大事だと思っていて。無いものばかりに目を向けると、人が持っているものを羨ましく思ってしまう。それよりも自分にあるものが何かを考えて、それを足がかりに行動に移すことが大事だと思っています。自分にあるものに気づくと、そこに軸足を置くことができる。そして、自分が何を持っているかは、案外人とのやり取りの中で改めて認識できたりするんですよね

駐在妻でも専業主婦でも、性別や年齢を問わず、大事なのはその人の言葉がどう響くか。大切なのは、いろんな肩書や立場よりも、その人がどんな言葉を発信しているかだと思うんです。

私は、ソーシャルメディア上で発する言葉が肩書きや立場を超えてそのまま届くようになれば理想だと考えていて。例えそれが専業主婦の発信だとしても、10歳の子どもの発信だとしても、その内容が良いものは良いし、共感できるものに対しては素直に共感できるようになれば良いなと思っています。とはいえ、私自身も人の投稿を見て自分の中のバイアスに気がつくこともあって。投稿から「きっと、こういうバックグラウンドの方なのだろう」と思ってプロフィールを読むと、全然違ったりとか。発信している人の肩書きや立場でその言葉をふるいにかけるのではなくて、その言葉を素直に受け取ったりできる場所であって欲しいし、自分もそうでありたいと思っています。


――戸田岸さんから見て、今のリンクトインはそういう場所になれていますか?

うーん…どうでしょう(笑)。正直に言えば、まだ肩書きに依る部分が多いかなと思います。たとえフォントサイズが同じでも、肩書きにCEOと入っている人の声はどうしても大きく見えてしまうんですよね。もちろん、会社や業界でリーダーの方々というのは発言の機会も多く、言葉に強いものがあるのも事実です。

一方、私としてはそういう方々とご縁を持っていけるような自分でありたいと思っていて。それが、私がリンクトインでの機会に恵まれてきた理由なんだと思うんです。例えばシンシアさんであったりとか、Funleash代表の志水静香さんだったり、アメリカのシリコンバレーで活躍されるNFT社共同設立者兼会長のカプリンスキー真紀さんなど、素晴らしいインフルエンサーの方々と自分に接点が生まれるなんて、以前は全く想像できなかった。そういう意味では、「何者でもない私たち」にとって機会が得られる場所だと言えるかも知れないですね。

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次回の記事では、戸田岸さんが経験したインフルエンサーの方々との「つながり」や、実際にどのような機会を得ているのか、ソーシャル時代の「つながり」がキャリアにどうつながるか、等について伺います。あなたは、自分自身が持つ肩書きや立場を超えた「強み」は何だと考えますか?↓コメント↓でお聞かせください。

三浦知砂 Chisa Miura

余裕時間を産み出す料理教室主宰。企業の福利厚生として、zoomやリアル会場での料理レッスンも承ります。パーティ料理や日々の作り置きなどの料理代行も承ります。【時短技を活かし三時間で20品】 目から鱗の料理法に注目され、高校の先生になった経験のある変わり種です。

3年前

私自身、ビジネスに特化したSNSという認識さえ微妙なまま あるイベントのスポンサー企業だったLinked Inさんとのご縁を期に登録。 ラーニングなどの学びメイン、そして 他の方の投稿から刺激をもらう。学びの場としてだけ使いはじめました。 ある方から、せっかくの場だから あなたが持つ知識の中から、人に役立つ投稿を少しずつ やってみたら?と御助言いただきました。 発信することで、自分を客観視する事もできました。 ほんの一部の方にでもお役に立てたり 共通してもらえたり 発信をきっかけに、ステキなご縁が繋がった事 "やってみる"は、なにかしらに繋がりますね😊

齋藤 勇一

モノづくりを翻訳×仕組み化=生産性をカイゼンする人。子供との遊びをビジネスに例える「パパ工務店シリーズ」を2021年から投稿中。KAWAJUN、リテールソリューション事業部。小売店舗向け販促備品の品質管理。

3年前

経験の年数ではなく「良いものは良い」ですね☺️LinkedInでは「人柄に共感する」が、つながりを持ちたいと思えるかどうかの、大切なキーワードだと感じます。

田中 Tanaka 牧 Tsukasa

***ただいま就活中!***会社を変えたいと思う方、コンサルにはできない、中に入って解決策を計画、実行、フォローします!

3年前

村井 秀輔さん、共有ありがとうございます。 戸田岸さんとシンシアさんは同じ匂いがします。二人とも、新たな自分の社会的地位には不安だったと思いますが、「でも、これやりたい」を諦めなかったことは同じ。 勿論、二人の時間軸は違うのですが、戸田岸さんにとってシンシアさんというロールモデルがいたことによって、何かしら時間短縮できた感はあります。 こうやって、「専業主婦」と、その他大勢の境界線が段々薄れていくんですね。いいことです 😃

鈴木 祐美子

LinkedIn TOP VOICE | ZEIN株式会社 People & Organization | 中途採用リード | キャリアコンサルタント | 産業カウンセラー | LinkedInラーニング講師 | 元専業主婦(7年)

3年前

村井さん、戸田岸さん、素敵な記事でした!ありがとうございます。何者でもない、と認めることは辛いかもしれないし、勇気が必要なことかもしれませんよね。しかし何者でもない人が、一生懸命何かを訴えることが、他の人に勇気を与えるのではないかと思っています。そこからしか始まらないし、自分を認められないなぁと自分自身に対して思います。

薄井シンシア Cynthia Usui

Customer-centric hospitality professional with a talent for initiating and implementing organizational change and enabling women to rejoin the workforce; published author; keynote speaker; media personality

3年前

Shusuke Murai 日曜日の8時半のイベント、良く引き受けてくださったね。どうもありがとうございます!でも、あのイベントに参加された方々、今、リンクトインで活躍していますよね。The early bird catches the worm ですね。

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