トルコのお話で、ある村にたどり着いた旅人。どの家も鍵を3つもつけていて、
けちんぼうばかりが住んでいるケチケチ村でした。
お腹が空いてドアを叩いても、何もないよと追い返されてしまう。
本当はどっさりと食べるものがあるのに。
旅人はある家のドアをノックすると、中からおばさんが顔を出しました。
スープを一杯だけわけてください。そして泊めてもらえませんか?と旅人が言うと、
食べ物は自分のものしかないんだと断るおばさん。
庭を覗くと窯でパンを焼いていて、庭にはどっさりトマトがなっています。
”食べ物がないなら私がごちそうしてあげましょう”と旅人。
どうやって?何も食べ物をもっていないのに。
とびきりに美味しい石ころスープを作りますよ。
ちっともお金がかからないスープです。と伝えると、おばさんは興味を持ってくれました。
一番大事なのは、おいしいスープの素になる石ころ。
旅人は世界を歩きまわって見つけた石ころを取り出し、
大きな鍋を借りて、お湯を入れ、まるい石を入れ歌い出しました。
おばさんは不思議そうに鍋を覗き、石ころしかはいっていないじゃないか!と。
旅人は何も入れないほうがうまいんですよ。まぁちょっと塩コショウ足してもいいけど。
するとおばさんは塩とこしょうを持ってきて、入れました。
それから唐辛子の粉と、ハッカの葉っぱも持ってきます。
そのうちに、歌を聞きつけた村の子どもや大人が集まって来て、
石ころしか入っていない鍋を覗くと、他に何もいれないの?と。
旅人は何も入れないスープが大好きなんです。じゃがいもを入れる人もいるけど、
なくてもけっこう。あってもけっこう。
するとジャガイモを持ってくる人、ニンニクを持ってくる人、玉ねぎにネギ、
みんな次々にスープに入れる具材を持ち寄ります。
そして村中のみんなが集まり、完成したスープを一緒に食べました。
3つの鍵をつけて、ほとんど交流がなかった村の人々は石ころのスープで一つになり、
料理の美味しさや、みんなで食べる喜び、語り合うかけがえのない時間を
分かち合うことの素晴らしさをユーモアたっぷりに伝えてくれる絵本です。
旅人は石ころと一緒に、目には見えない幸せをプレゼントしてくれました。
お金がなくても、モノを所有しなくても、豊かに簡単に幸せになれる方法があることを
教えてくれる一冊です。
【文:ジュディス・マリカ・リバーマン 絵:ゼイネップ・オザタライ
訳:こだまともこ 出版社:光村教育図書 】