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【シビル・ウォー アメリカ最後の日】感想(ネタバレちょいあり)/リアル過ぎる混沌の戦中ロードムービー

 

不穏度

30(100を満点として)

明日あってもおかしくない

基本情報

公開年:2024年

監督&脚本:アレックス・ガーランド

キャスト:キルスティン・ダンスト(リー・スミス)ヴァグネル・モウラ(ジョエル)ケイリー・スピーニー(ジェシー・カレン)

スティーヴン・ヘンダーソン(サミー)

上映時間:109分

あらすじ

<以下アマプラ紹介文から引用>

「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」

連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー

評価

「もしもアメリカで内戦が起こったら?」という、この時代リアリティありすぎな設定の「シビル・ウォー」。「シビル」は「Civil」。直訳すると「市民戦争」になります。とても面白かったです。いや、面白かったって言っていいのかしら…。

とにかくバンバン銃弾が飛び交うし、死体はゴロゴロ転がる。一昔前のハリウッド大作のような分かりやすい「正規軍VS悪」の構図ではないのにアメリカで大ヒットしたのは、市民が「目の前に迫る危機」への予行練習としてこの映画を観たからでしょうか…?

では以下、どこか面白かったのか?感想です〜(注!ちょっとネタバレあります)

感想

「意味不明」って意味不明?!

何度も言っていますが、人の感想を読むのが好きです。ネットを検索して自分と正反対の感想を見つけると「へえ〜、同じモノを観てもこんな風に受け取る人もいるんだ!」と映像作品の多面性に感動してしてしまいます。

んで、今回も「シビル・ウォー」を検索したら「意味不明」というキーワードが出てきまして。どうやら誰と誰が戦っているのか分からない、ということらしい。まあ、確かに。でも「『その混沌こそが戦争』って意味」じゃないですかね?!…て思うんですけどどうでしょう?

主人公は4人のジャーナリスト。伝説的戦場カメラマンのリー(キルティン・ダンスト、ぴったりです!)と相棒の男性記者ジョエル。そして太って足は悪いけど知恵と経験のある老ジャーナリストのサミー、リーに憧れて戦場カメラマンを目指す23歳女子・ジェシー。

アメリカは、テキサスとカリフォルニアの同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発中。混乱を引き起こした大統領はホワイトハウスに籠っているけど陥落寸前。

この4人は大統領のインタビューを撮るため、一台の車に乗り込みニューヨークからワシントンD.C.を目指します。映画は彼らが行く先々で目撃した映像を映し出します。確かに、この道中で出会う人たちは戦っているんですが、誰が誰と何のために銃口を向け合っているのか分からない。さらに我関せずと平和な生活を維持しようとしている不気味な街、女性と子供たちばかりの難民キャンプも出てきます。そしてそこかしこで煙の上がる街、雨のように火薬の降り注ぐ森(何だろう…?まさか焼夷弾ではあるまい?)を抜け、一行は最後にホワイトハウスにたどり着く…。ロードムービーの形をとって戦争の病理を見せていく方法は「地獄の黙示録」と同じです。

さらに面白いのが、23歳のジェシーの成長ストーリーにもなっていること。劇中、夜空に飛び交う曳航弾を見たジョエルが興奮して「勃起するぜ!」みたいなことを言います。前線に赴くジャーナリストってのは三度の飯より血と硝煙の匂いが好きなこういう連中なわけで、小柄でかわいいジェシーだってこの気質があるから参加しているんです。当然、危険な目にもあいます。

衝撃シーンは人類の歴史の象徴?!

ちょっとネタバレになりますが、象徴的なシーンが中盤にあります。

4人は謎の男たちに出会います。軍服を着てライフルを持っていますが、軍人かどうかも怪しい。なぜなら穴を掘って大量の死体を埋めているのですが、死体は軍服姿ではなく、一般市民のように見えるからです。

男はジャーナリストに問います。「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」…何が正解かも分かりません。答えを「間違えた」同行者は射殺されます。ジェシーも死体が積まれた穴の中に落とされる。間一髪のところで助けが入るのですが、この時ジェシーは、血に塗れた山のような死体を必死に踏み歩き、穴の淵に手を伸ばします。かなり衝撃的なシーンです。

これは人の死をも商売にする「戦場カメラマン」として生きる覚悟があるのか?とジェシーに問うた踏み絵であり、同時に先人の死の上に成り立っている「国家」そのものを表した画でもあります。

アメリカに限らず、争いとそれによる夥しい死の上に成り立っている近代国家。アメリカをこんな国にした責任は、23歳のジェシーにはありません。しかし死体の上を歩かなくては、今を生きられないのです。

そしてこの修羅場を生き延びた彼女は、最後は立派な戦場カメラマンになり、暴力が支配する新しい国の住民になります。そして老体は退場。…なかなかの皮肉です…。

余談ですが、、アメリカ人に恐怖のトラウマを植え付けた「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」と問う赤いサングラスの男、演じたのは、たまたま選ばれたキルティン・ダンストの夫なんだとか。

まあ、あまり難しいことは考えずとも緊張感あふれる面白い作品だと思います。ってか、一番知りたいのはこれを観たアメリカ人(共和党/民主党それぞれの支持者)の感想だな。

あと再度言いますが、キルティン・ダンスト良いです。正直、はじめて良いと思ったかもしんない。

「シビル・ウォー」はアマプラで観られます〜。

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  翻译: