流しのブルペンキャッチャー 垣間見たプロ入り前の大谷翔平の素顔
毎日新聞
2021/11/17 06:30(最終更新 11/17 06:30)
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10年近く前の豪速球の記憶はいまも体が鮮明に覚えている。18日(日本時間19日)発表の米大リーグの最優秀選手(MVP)で、ア・リーグの最終候補に名を連ねるエンゼルスの大谷翔平選手(27)。スポーツライターの安倍昌彦さん(66)は取材で、これまで大谷選手を含めて200人を超えるドラフト候補の球を受けてきた。「流しのブルペンキャッチャー」で知られる安倍さんに当時の思い出を語ってもらった。【聞き手・岩壁峻】
怖かった154kキロの衝撃
今季の大谷選手の活躍には「やられたな」の一言です。投打の「二刀流」について否定的な考えだったからです。大谷選手は豪速球を投げるがゆえに、肩周りの筋肉や靱帯(じんたい)に負担のかかる「ルーズショルダー」(肩関節不安定症)の懸念が指摘されてきました。実際にそうでなければいいのですが、肩の消耗を考えると二刀流ではなく、例えば最初の10年は投手、その後10年は打者というように役割を分担すれば、20年はスーパースターでいられると思っていました。まさか、ここまで見事に両立させるなんて。これほどの活躍を見せられたら文句は言えません。爽快感すらありますね。
大谷選手の球を受けたのは、岩手・花巻東高3年時の2012年秋。正直に言えば、当時の経験をどう表現していいのか分かりません。その夏の岩手大会で160キロをマークした後のことです。公式戦を引退して緊張感から解放されていた時期です。直球は空気を切り裂くようなきれいなバックスピンがかかり、回転軸は全くぶれていなかった。球が離れた瞬間、ミットに突き刺さる感じでした。
とんでもなく速い球でした。まばたきすらできません。そばにいた野球部のコーチがスピードガンで測ると154キロ出ていました。怖かったです…
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