誕生日に殴る蹴る いじめから10年経て始まる第三者委への不信感
毎日新聞
2023/6/20 18:02(最終更新 6/21 03:29)
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いじめ防止対策推進法が成立して21日で10年。いじめが疑われる状況を早期に発見し、組織的に対応するのが法の趣旨だが、被害が調査対象と認められず、長い年月苦しみ続ける当事者は、学校や教育委員会への不信感を拭えずにいる。
家に帰る車の中で、耳を押さえ、後部座席にしゃがみ込む。佐賀県鳥栖市に住む佐藤和威(かずい)さん(24)は、誕生日を迎えた6月13日、帰宅直後に嘔吐(おうと)した。車の窓から母校の中学生の制服を目にして、中学1年だった11年前に引き戻されたからだ。あの日、複数の同級生から「誕生日プレゼント」と言われながら殴る、蹴るの暴行を受けた。佐藤さんはいじめによる心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断され、今も治療を続けている。
2012年4月に市立中に入学した。その直後から▽エアガンで撃たれる▽「プロレスごっこ」と称して暴力を受ける▽多額の現金を脅し取られる▽顔に殺虫剤をかけられる▽カッターナイフを振り下ろされたり、包丁を向けられたりする――などの激しい暴力を受けた。10月に加害生徒の一人が学校に話して発覚。家族は佐藤さんの全身に残る傷やあざを見つけ、絶句した。佐藤さんはフラッシュバックなどに苦しみ、何度も自ら命を絶とうとした。
佐藤さんがいじめ被害を受けた翌年の13年にいじめ防止対策推進法は成立した。この中で、…
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