特集
沖縄復帰50年
2022年5月15日、沖縄は本土に復帰して50年を迎えました。何が変わり、何が変わっていないのか。沖縄の歩みと「今」を伝えます。
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方言に込めた島の怒り 沖縄の言葉で歌うラップ、引き継がれる思い
2022/12/17 17:58 -
方言使うと叱責・平手打ち・罰金 沖縄、学校が強いた標準語
2022/12/16 19:05 -
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2022/12/15 18:53 -
発言
「復帰50年」沖縄の歴史映す鏡=新城和博 ライター・編集者
2022/12/15 02:01 -
演劇が突きつける「沖縄と本土の距離感」 復帰50年に問う
2022/11/12 12:00 -
喜劇で問う、差別 「人類館事件」題材、人の内面とは
2022/11/2 12:57 -
沖縄本土復帰50周年記念 「宮崎のオジイ、オバアに元気届けたい」 行橋の宮村さん、三線ライブ /福岡
2022/10/13 05:30 -
米兵の性暴力、刻む傷 戦争終結後もやまぬ「嵐」 「忘れぬ」女性ら年表に
2022/8/26 13:19
沖縄は2022年5月15日、日本本土に復帰して50年を迎えます。
戦後、27年間にわたって沖縄は日本本土から切り離され、米国の統治下に置かれました。米国統治下の沖縄では日本国憲法が適用されず、沖縄の人たちの基本的人権は著しく抑圧されました。米軍関係者による事件や事故も頻発しましたがまともには裁かれず、米軍を批判する言論は厳しく制限されました。一方で、沖縄を「太平洋の要石」として重要視した米軍は「銃剣とブルドーザー」と呼ばれる強制的な手法で住民の土地を奪い取って基地に変えていきました。
このような米国の圧政に対して沖縄では日本本土への復帰を求める声が高まり、日米両政府は1969年11月に沖縄返還に合意。そして72年5月15日に沖縄は本土復帰を果たしました。
あれから50年。インフラ整備が進んだ沖縄は観光を中心に発展を遂げ、独特の文化や芸能にも注目が集まるようになりました。しかし、米軍専用施設は復帰時から面積で34%減少したものの、今も全国の約7割が集中しており、沖縄の人たちの復帰前の願いからはほど遠く、「基地の島」であり続けています。95年には米兵3人による少女暴行事件が起き、県民の激しい怒りが広がりました。この事件を機に日米両政府は市街地にある米軍普天間飛行場(宜野湾市)の返還に合意しましたが、県内移設が条件とされたために返還はいまだに実現していません。
政府は普天間移設に向けて18年12月から名護市辺野古沿岸部の埋め立てを進めていますが、19年2月の県民投票では反対が約7割を占めるなど、辺野古移設に反対する沖縄県と推進する政府の対立が続いています。
もっと知りたい
連載
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「同化」の先に・沖縄復帰50年
明治時代に日本となり、太平洋戦争後に日本から切り離された沖縄。揺れ動いた日本との関係の中で、失われたものがあります。
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不条理今も・沖縄復帰50年
沖縄が米国統治下から日本に復帰して15日で50年。米軍基地の集中や貧困は解消されず、沖縄に対する差別は形を変えて存在する。今も続く不条理に迫る。
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日の丸の向こうに・沖縄復帰50年
沖縄は27年間の米国統治を経験し、1972年5月に日本復帰。変遷の中、人々は日の丸の向こうに何を見ていたのでしょうか。
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アメリカーと呼ばれて・沖縄復帰50年
沖縄の米軍基地は事件や事故、騒音をもたらし、厳しい視線が注がれてきました。米軍と沖縄、そのはざまで生きる人々の姿を追います。
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沖縄「復帰50年」の群像
沖縄が日本本土に復帰して2022年5月で50年。本土とは異なった戦後史を刻んでいる沖縄の「いま」を考えます。
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2022/12/17 17:58 1463文字沖縄独自の言葉を▽「主に使う」1・7%▽「共通語と同じくらい使う」12・3%▽「あいさつ程度使う」14・6%――。沖縄県が2021年度、県民を対象に調査した結果だ。県は13年度から調査を重ねるが、21年度はこの三つの選択肢を合計した「使う」人の割合が28・6%にまで減少し、過去最低となった。「分か
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方言使うと叱責・平手打ち・罰金 沖縄、学校が強いた標準語
2022/12/16 19:05 1389文字「標準語生活をしましょう」。そんな標語が書かれたポスターが街角や友人宅に張られていた。沖縄県宜野湾市の仲村元惟(もとのぶ)さん(85)が幼い頃、1940年代の記憶だ。 1879年に日本に編入され、「同化」政策が進められた沖縄。1937年に日中戦争が勃発し、国を挙げた戦争への協力が求められると、日本
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「差別される」恐怖心が奪った誇り 方言札が語る祖国復帰の思い
2022/12/15 18:53 1639文字「あがー!」。突然、背後から蹴られ、生徒が思わず声を上げる。「あがー」は沖縄の言葉で「痛い」の意味。「今、方言しゃべったな」。蹴った生徒がにんまりして、「方言札」と書かれた長さ20センチ程度の木板を渡す。 ◇戦前の「同化教育」の産物、戦後も 1960年代後半、崎原恒新(こうしん)さん(79)=沖縄
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発言
「復帰50年」沖縄の歴史映す鏡=新城和博 ライター・編集者
2022/12/15 02:01 1288文字太平洋戦争後、米軍統治下を経て、沖縄が日本に「復帰」したのが1972年5月15日。それから50年という節目を迎えた沖縄が、どのような歴史を歩んできたのか。地元マスメディアは復帰50年の総点検といった様相で「復帰」を起点として、それ以前の米軍統治下の27年間、いわゆる「アメリカ世」と、再び沖縄県とな
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演劇が突きつける「沖縄と本土の距離感」 復帰50年に問う
2022/11/12 12:00 1534文字沖縄復帰50年の今年、演劇界でもさまざまな切り口で「オキナワ」を問う作品が上演されてきた。11~12月にもKAAT神奈川芸術劇場の「ライカムで待っとく」、エーシーオー沖縄・名取事務所の「カタブイ、1972」と続く。 ◇兼島拓也「現地に住む人の感覚を乗せる」 「ライカムで待っとく」(11月27日~1
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喜劇で問う、差別 「人類館事件」題材、人の内面とは
2022/11/2 12:57 1317文字沖縄の人が見せ物として大阪の博覧会で陳列された1903(明治36)年の「人類館事件」を題材にした戯曲が3~6日、那覇市で演じられる。戯曲は2021年2月にも上演されたが、当時は新型コロナウイルス禍の中、オンライン配信のみで、今回は8年ぶりに観客の前で披露される。劇中にはこんなセリフがある。「彼らは
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沖縄本土復帰50周年記念 「宮崎のオジイ、オバアに元気届けたい」 行橋の宮村さん、三線ライブ /福岡
2022/10/13 05:30 629文字◇80人参加、ともに歌い舞う リトル沖縄 沖縄の文化や歴史を紹介し、平和の尊さを伝える活動を続けている行橋市の三線(さんしん)奏者、宮村みつおさん(71)が8日、宮崎市の「リトル沖縄」と呼ばれる波島地区で、沖縄の本土復帰50周年を記念するコンサートを開いた。沖縄にルーツを持つ地域住民ら約80人が参
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米兵の性暴力、刻む傷 戦争終結後もやまぬ「嵐」 「忘れぬ」女性ら年表に
2022/8/26 13:19 1695文字太平洋戦争の終結から77年がたつ。戦争末期の1945年、沖縄は日米両軍の地上戦の場となり、住民の4人に1人が亡くなったとされる。終戦後も沖縄の苦難は終わらなかった。27年間、米国統治下に置かれ、住民女性が米軍関係者に襲われる「性暴力の嵐」が吹き荒れた。72年の日本復帰までに、市民団体の調査で判明し
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沖縄復帰50年 平和の維持、考えよう 学徒隊の手記朗読と絵本読み聞かせ 伊賀 /三重
2022/8/25 05:55 805文字◇劇団上野市民劇場が28日上演 沖縄が米軍統治から日本に復帰して50年の夏の28日、伊賀市の「劇団上野市民劇場」は1部を朗読劇「『ひめゆりの祈り』ひめゆりの塔をめぐる人々の手記より」、2部を絵本読み聞かせ「へいわってすてきだね」として、2022年の「ピースリーディング『八月の空に』」をハイトピア伊
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難解な沖縄の歴史 若手研究者が解説します 書籍、動画で発信
2022/8/14 16:00 1863文字唐(とう)ぬ世(ゆー)から大和(やまと)ぬ世 大和ぬ世からアメリカ世――。琉球王国の解体から50年前の日本復帰まで統治の体制がころころと変わってきた沖縄。その特異な歴史に関心を持ってもらおうと、30~40代の若手研究者らがあの手この手で発信を重ねている。多彩な執筆陣を集めて沖縄の近現代史の入門書を
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14色のペン
「沖縄は何千年分も国に奉仕した」 参院選・自民敗北の底流
2022/8/13 06:00 1619文字読者の中にも今年の夏、沖縄を訪れた人がいらっしゃるのではないでしょうか。太陽がまぶしい「楽園」は、国際関係の中で揺れ続けた島でもあります。いろいろな表情を見せる私のふるさと沖縄の姿を、多くの方々に少しでもわかっていただけるように、描いていきたいと思います。【那覇支局・比嘉洋】 7月の参院選は全国の
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9月の沖縄知事選が行方を左右か 辺野古設計変更で国を提訴
2022/8/12 22:01 927文字米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画で、軟弱地盤の改良を巡る政府と沖縄県の争いは12日の県の提訴で法廷闘争に発展することになった。 地盤改良のために防衛省が申請した設計変更を不承認とした県の処分は、移設阻止に向けて知事が切ることのできる「最後のカード」ともされ、玉城(た
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辺野古設計変更、沖縄県が国を提訴へ 国交相に裁決取り消し求める
2022/8/12 10:42 755文字米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画に関し、沖縄県は12日、防衛省の設計変更申請を不承認とした県の処分を取り消した斉藤鉄夫国土交通相の裁決は違法として、斉藤国交相に裁決の取り消しを求める訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。移設先の埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤改良を
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日本復帰50年 沖縄から笑いを発信、若手芸人が目指すもの
2022/7/24 08:30 3322文字沖縄は笑いと芸能の島でもある。琉球王国の時代に独自の文化が発展し、沖縄戦で壊滅的な損害をこうむったが、傷ついた人々を癒やしたのも、沖縄の笑いであり芸能だった。日本復帰から50年。沖縄の笑いの最前線にいる若手芸人に、その思いを聞いた。【油井雅和】 ◇「県産品の笑い」を全国に~ありんくりん 沖縄のお笑
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米国統治、復帰運動、ブーム…沖縄県史「現代」編刊行 77年の厚み
2022/7/20 00:00 856文字太平洋戦争末期の沖縄戦(1945年)から2020年ごろまでの戦後史を最新の研究成果を基につづった沖縄県史の「現代」編が県教育委員会から刊行された。戦後沖縄の歴史を網羅的に記述した初めての県史で、沖縄の日本復帰50年の節目に合わせて発刊された。20日に販売を開始する。 「現代」編はB5判でオールカラ
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沖縄「復帰50年」の群像
新たな決意と重い支援 ひめゆり平和祈念資料館の基本理念、語り継ぎ
2022/7/5 07:30 5912文字ひめゆり平和祈念資料館(沖縄県糸満市)も新型コロナウイルスの影響を受けた。2年続きの来館者の激減、それに伴う減収。資料館の運営に暗雲が垂れこめたが、窮状を知った支援、声援が相次いでいる。ロシアのウクライナへの侵攻を機に日本でも軍事優先の言説が一部で広がるが、だからこそ資料館の存在意義を再認識した人
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私が思う日本
日本から失われる「熟考」 沖縄復帰を巡る演劇が問いかけるもの
2022/7/3 10:00 2123文字東京に駐在する外国メディア特派員らの目に、私たちの社会はどう映っているのだろうか。韓国、フランス、英国、バングラデシュ、シンガポールの個性豊かな記者たちがつづるコラム「私が思う日本」。第55回はルモンド紙(フランス)のフィリップ・メスメール東京特派員が、今年5月に日本復帰から50年を迎えた沖縄の劇
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「平和な空」願い 宮森小の米軍ジェット機墜落事故63年 沖縄
2022/6/30 11:22 510文字沖縄が米国統治下にあった1959年6月、沖縄県石川市(現うるま市)の宮森小学校に米軍ジェット機が墜落し、児童ら17人が亡くなった事故から63年の30日、同小で慰霊祭があった。約50人の参列者は犠牲者の名前が刻まれた「仲よし地蔵」に手を合わせて冥福を祈り、事故のない「平和な空」を願った。 慰霊祭は遺
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米国統治下で吹き荒れた「性暴力の嵐」 地上戦後も続いた沖縄の苦難
2022/6/30 05:00 1695文字太平洋戦争の終結から77年がたつ。戦争末期の1945年、沖縄は日米両軍の地上戦の場となり、住民の4人に1人が亡くなったとされる。終戦後も沖縄の苦難は終わらなかった。27年間、米国統治下に置かれ、住民女性が米軍関係者に襲われる「性暴力の嵐」が吹き荒れた。72年の日本復帰までに、市民団体の調査で判明し
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「兄弟の証し残したい」 会えなかった兄の名平和の礎に刻み、平和願う
2022/6/23 17:43 827文字沖縄戦で最後の激戦地となった沖縄県糸満市摩文仁(まぶに)の平和祈念公園には23日朝から多くの遺族らが訪れ、犠牲者の名前が刻まれた「平和の礎(いしじ)」の前で手を合わせた。宜野湾市の具志堅哲(てつ)さん(70)もその一人。今年新たに刻まれた兄の清さんの名前を指でなぞり、「これからは家族をここに連れて
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