2022/11/12
人の不幸の上に神の国は絶対に築けない
どんな宗教でも間違いを犯すことを知ってほしい旧統一教会に対して、宗教法人法に基づく「質問権」を年内に行使することを永岡文部科学大臣が表明しました。この調査で、解散命令に該当しうる事実関係が認められた場合には、裁判所に対して教団の解散命令の請求がおこなえるわけです。
面倒な手続きに思えますが、粛々とすすめて、一日も早く解散命令が出てほしいと思います。
ところで、このブログでは、キリスト教の歴史を取り上げています。一見、統一教会とは関係ない歴史を見ているのですが、それは「どんな宗教でも間違いを犯す」ということを知ってほしいからです。
宗教というのは基本的に神を伝える手段であるため、完全なる神と同じように宗教も完全なものと思いがちですが、それは全く違います。宗教は人間が作ったものであるがゆえに、間違いだらけなのです。
その間違いの結果が悲惨な歴史として現れます。
歴史上、キリスト教ほど多くの人を殺した残酷な宗教はなかったと言っていいと思います。
十字軍はその一例ですが、何よりも多くの人を殺したのは新大陸の植民地化でした。
中南米の植民地化が招いた悲劇
イベリア半島(スペイン)からイスラム教勢力を排除したカトリック両王の妻イザベラ女王の支援によってコロンブスが新大陸に到達すると、間もなく、スペインによるカリブ海諸国の植民地化が始まります。
カリブの島々でのんびり暮らしていた先住民たちはスペイン人たちに捕まり奴隷労働に従事させられます。キツイ労働に慣れない人々は次々と死んでいき、そこにヨーロッパから持ち込まれた天然痘によって大半の人が死ぬという状態に陥りました。
スペイン人たちは奴隷を求めてアメリカ大陸に渡り、やがてアステカ帝国やインカ帝国の支配層を皆殺しにして滅ぼし、中南米全域を支配しました。
そこで発見した銀鉱山などの開発に奴隷化した先住民を用いたのですが、特に悲惨だったのはボリビアのポトシ銀山でした。
標高4000mを超える高地にある、当時、世界最大の銀山では、数多くの先住民が奴隷労働に従事させられ、多くの人が劣悪な環境で次々に死んでいきました。その数は合計で数百万人に及ぶとも言われています。
一方、このような銀山から算出する膨大な量の銀はヨーロッパ経済を潤し、スペインを「太陽の沈まぬ帝国」と呼ばれるほど、他に類のない大帝国に押し上げたのです。
キリスト教にも虐殺の大きな責任がある
これがキリスト教の過ちなのか、信者とは名ばかりの強欲な人間の過ちなのかは議論があると思います。しかし、こうした無慈悲な植民地支配によって生み出された富が壮麗なカトリックの教会群の建設に使われ、やがては世界にキリスト教を伝える資金になったのも事実なのです。
それを黙認したキリスト教の聖職者たちにも植民地支配と虐殺の大きな責任があるのは間違いありません。
もしこれを「神のためにしたことだから許される」と考えるのなら、神を知らない愚か者としかいいようがありません。
人の不幸の上に神の国は絶対に築けないということを信仰を持つ人たちは知るべきです。
先住民を擁護する活動を続けた司祭
ただし、キリスト教はこうした過ちを生み出しただけではありません。
歴史上犯されてきた人間の過ちに対しては、必ず反対する動きが起こります。
そこに人間の持つ善の心が働くのです。
やがて、スペイン人の無慈悲な植民地支配に対して疑問を持つ人が現れます。
例えば、司祭であり植民者でもあったスペイン人のバルトロメ・デ・ラス・カサスという人がいます。
彼は、当初は新大陸で植民者として領地を持ち奴隷を使っていたのですが、スペイン人たちが奴隷を虐殺するのを見て疑問を持ち、回心します。
ラス・カサスは、所有する土地を返却し、奴隷を解放すると、先住民の保護に取り組みました。その活動はスペイン王室をも動かし、先住民を擁護する法律もできたのです。
やがて彼は、先住民の弾圧を批判する文書「インディアスの破壊についての簡潔な報告」を発表。この文書によってラス・カサスは、近代の先住民擁護運動の先駆者として高く評価されるようになりました。
ラス・カサスも重大な間違いを犯した
今日、キリスト教が世界宗教として評価されるようになるまでには、こうした歴史的な数多くの間違いと、それを正す動きがあったことを忘れてはなりません。
もう一度言いますが、宗教団体が間違いを犯すのは不完全な人間が動かしているのですから仕方がないのです。
大事なのは、間違いに対して疑問を持ち、反対の声を上げることです。それこそが、真の信仰なのではないでしょうか。
ちなみに、ラス・カサスも重大な間違いを犯しています。
先住民を奴隷化しないと労働力が不足してしまうという植民者の批判に対して、「それならアフリカの黒人を奴隷にすればいい」と言ってしまったのです。
アフリカの人々が数多く連れてこられ、奴隷化されているのを見たラス・カサスは、無知から出た自分の言葉を後悔したと伝えられています。
コロンブスも学んだスペインのサラマンカ大学の正面装飾
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