リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

同性カップルが子ども「問題ない」 産婦人科で広がる 岡山大調査

朝日新聞 足立菜摘 2024年12月5日 5時00分

同性カップルが子ども「問題ない」 産婦人科で広がる 岡山大調査:朝日新聞デジタル

 日本産科婦人科学会(日産婦)が認めていない同性カップルへの生殖医療について、産婦人科の医療施設で「倫理的・社会的に問題がない」とする考えが徐々に広がっていることが、岡山大の研究チームの意識調査でわかった。男性カップルのために、事実上の代理出産を実施している施設もあった。

 チームは今年2月、日産婦に登録する1050医療施設の院長や産婦人科の責任者にアンケートを送付し、375施設(36%)から回答があった。

 女性の同性カップルが、生殖医療で子どもを持つ場合、提供された精子が必要になる。しかし、日産婦は会員への会告で、提供精子による人工授精を法的に婚姻した夫婦に限っている。男性の同性カップルの場合は、代理出産が必要になるが、日産婦は、同性カップルに限らず代理出産を認めていない。

 だが、今回の調査では、女性の同性カップルが提供精子による人工授精を受けることについて、45・1%の施設が「倫理的・社会的に問題ない」と答えた。2018年の前回調査から9.5ポイント上がった。「実施する可能性がある」と回答した施設も11施設から21施設に増え、3施設は実際に実施していた。

 こうした変化について、調査を実施した岡山大の中塚幹也教授は「カミングアウトする人が増えたことや、子どもを持ちたいと希望して病院に来る人が増えていることなどが影響しているのではないか」と話す。


前回調査ではなかった「代理出産を実施した」施設も
 また、男性の同性カップルのために代理出産に携わっていた施設もあった。

 1施設が、男性カップルの精子代理母に人工授精していた。2施設が、提供卵子と男性カップルの精子体外受精し、代理母に出産を依頼していた。いずれも、18年の調査では見られなかったケースだ。

 代理母への人工授精を「実施する可能性がある」と答えた施設も18年の8施設から12施設に増えた。

 中塚さんによると、回答のあった事例は、男性カップルが女性カップルと婚姻関係になる「友情結婚」などの協力関係を結んだ上で、人工授精や体外受精をしている可能性もあるという。代理母になる女性と婚姻関係にあれば、必ずしも代理出産の定義には当てはまらないが、事実上の代理出産として回答したことになる。海外では男性カップルの母親が代理母となる例も知られている。

 代理出産は法的には禁じられておらず、罰則はない。そのため、ごく一部の施設が日産婦の会告に反して実施していると見られる。

 ただ、同性カップルなどに対する生殖医療は、今後大きく後退する可能性がある。

 与野党は、「特定生殖補助医療法案」の国会への提出を目指している。第三者が提供する精子卵子を使った「特定生殖補助医療」のルールを定めることが目的だ。


規制の流れ、危険なやりとり増加の懸念も
 提出予定の法案では、精子卵子の提供を受けられるのは、法律上の夫婦のみに限定される。法案を作成した超党派の議連では、公明党などが事実婚の男女や女性の同性カップルにも対象を拡大すべきだとの姿勢を示したが、自民党の理解が得られず見送られた。

 中塚さんの別の調査では、第三者精子卵子による生殖医療を認めてもよいと思う対象について、「同性パートナーシップ証明があるカップル」と回答した施設は35・2%、「対象を制限すべきでない」は13・9%だった。

 提出予定の法案では、法に違反した医療機関への罰則も定められている。ただ、中塚さんは「今は子どもが欲しいという同性カップルが増えてきていて、法案が通ったから子どもを持たない、となるわけではない」と話す。

 代理出産が必要になる男性の同性カップルと異なり、女性の同性カップルでは、現在も精子バンクなどからの提供精子で子どもを持つ人が一定数いる。法が成立して、認定を受けた精子バンクからの提供や医療機関の介入が完全にできなくなると、SNSを通じた精子の提供など、危険なやりとりが増えることが懸念されている。

 中塚さんは「水面下での危険な精子のやりとりなどを避けるためにも、何らかの条件は必要だが、女性カップルへの特定生殖補助医療も認めた方がよいのではないか」と指摘する。

 国内では、同性カップルなど性的少数者(LGBTQ)の当事者が子どもを持つハードルは非常に高い。しかし、今回の調査では、当事者が子どもを持つことについて、19・2%が「肯定的」、46・7%が「どちらかと言えば肯定的」と答えた。肯定的な回答は計65・9%で、18年の前回調査から4・3ポイント増えた。

 当事者のカップルが子どもを持つ方法として行ってよいと思うものを選ぶ設問では、「里子・里親制度」は80・8%、「特別養子縁組」は76・5%、「生殖医療」は36・8%だった。