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2017年04月30日

高校バスケ盛衰史、その後


 さて、久しぶりにバスケのお話でも致しましょうか。

ちょうど2年くらい前に「高校バスケ盛衰史」という記事を書いたのですが、ご存じありませんよね?

高校のバスケットボールには主な全国大会が年2回あります。
夏のインターハイと冬のウインターカップです。
そのうちウインターカップの出場回数をもとに今後強くなりそうな学校を予想する内容の記事でした。
   
高校バスケ盛衰史

今回はその続き。
インターハイ予選にしようかとも思ったのですが、まだ少し時期が早いようですね。

ちょうど関東大会予選の最中のようなのでこちらのデータで見ていきましょう。

東京都高等学校体育連盟 男子バスケットボール専門部のサイトに日程とかトーナメントシートがあります。

その中の「会場注意」のPDFを閲覧してみると、「春季大会(関東大会出場校)過去20年」という表があります。


これを見れば、関東大会予選の上位8校の順位をざっと把握できます。
それも過去20年分。 下の方に表の部分だけ引用させていただきました。

昔から現在に至るまで強い学校もあれば、昔は強かったのに今はそうでもない学校もあるのが見て取れます。
それと注目したいのは近年順位を上げてきている学校です。

昔から現在に至るまで強い学校の代表ともいえるのが京北です。
平成9年に2位だった京北ですが、去年こそ7位だったもののこの20年間ベスト8から漏れたことがありません。
しかもベスト4以上に入る事の方が多いという昔からの強豪校です。

2〜3位によく見かける國大久我山、4〜6位くらいでよく見かける日大豊山、それに早稲田実業なども昔からの強豪校と言えるでしょう。


一方、昔は強かったのに今はそうでもない学校の典型ともいえるのが世田谷学園

表の一番上。平成9年に1位だった世田谷学園ですが、一番下の平成28年にはなんとランク外でした。
表を詳しく見てゆくと表の上の方では1〜2位を争っていますが、年を経るごとに徐々に順位を落としているのが分かります。
ある程度の盛り返しはあるものの平成23年あたりからはランク外に甘んじることが多いようですね。
今年はまだ結果が出ていませんが、この表で見る限り下降線をたどりつ続けそうです。

平成9年から11年あたりまで上位にいた駒沢大高なども最近はランク外ばかりのようです。

逆に近年伸びている学校としては、まずこの10年くらい1位〜2位争いを続けている八王子
表の上の方では比較的下位に甘んじていた学校なのに、近年伸びてきているのが分かります。

この表で見るとちょうど右肩下がりの世田谷学園とは対照的に見えてしまいますね。

あと、10年くらい前まではランク外だった学校が着実に実力を伸ばしてきているケースもあります。
去年2位の実践学園を皮切りに、平成27年に2位だった日本学園、近年ベスト8に残ることが多い成立学園足立学園などです。

【春季大会(関東大会出場校)過去20年】
 1  位2  位3  位4  位5  位6  位7  位8  位
平 9世田谷学園京 北明 星日 大 豊 山駒 沢 大 高保 善八 王 子早稲田実業
平10京 北都 西早稲田実業駒 沢 大 高世田谷学園明 大 明 治國大久我山明 星
平11世田谷学園國大久我山都 駒 場駒 沢 大 高京 北都 戸 山早稲田実業中 大 附
平12日 大 豊 山桐 朋國大久我山京 北世田谷学園都 駒 場八 王 子都小金井北
平13世田谷学園八 王 子國大久我山日 大 豊 山早稲田実業京 北帝 京都 駒 場
平14京 北帝 京世田谷学園日 大 豊 山八 王 子國大久我山都 駒 場早稲田実業
平15國大久我山世田谷学園早稲田実業日 大 豊 山京 北都 駒 場八 王 子帝 京
平16國大久我山京 北都 駒 場早稲田実業世田谷学園日 大 豊 山東海大菅生八 王 子
平17八 王 子世田谷学園國大久我山都 駒 場早稲田実業京 北東海大菅生帝 京
平18京 北國大久我山早稲田実業東海大菅生八 王 子都 駒 場世田谷学園実 践 学 園
平19八 王 子東海大菅生世田谷学園京 北帝 京日 大 豊 山國大久我山都 駒 場
平20八 王 子世田谷学園京 北東海大菅生帝 京都 芦 花都 駒 場國大久我山
平21京 北八 王 子國大久我山日 大 豊 山世田谷学園東海大菅生早稲田実業都 駒 場
平22八 王 子京 北國大久我山世田谷学園早稲田実業都 城 東日 本 学 園専 修 大 附
平23八 王 子京 北國大久我山実 践 学 園足 立 学 園日 本 学 園成 立 学 園帝 京
平24京 北八王子学園國大久我山日 本 学 園成 立 学 園日 大 豊 山早稲田実業都 高 島
平25八王子学園京 北國大久我山早稲田実業実 践 学 園足 立 学 園成 立 学 園都 城 東
平26八王子学園実 践 学 園足 立 学 園京 北東海大菅生國大久我山成 立 学 園佼 成 学 園
平27八王子学園日 本 学 園東洋大京 北早稲田実業國大久我山足 立 学 園成 立 学 園世田谷学園
平28八王子学園実 践 学 園保 善国大久我山成 立 学 園日 大 豊 山東洋大京北都 小 平 南

東京都高等学校体育連盟 男子バスケットボール専門部 会場注意 より引用。

ところで、この様な強豪校の入れ替わりみたいな現象が起きるのは何故でしょうか?

これはバスケに限らずスポーツ全般に言えることなのですが、学校がスポーツで実績を伸ばすには条件が3つあると思います。
  •  まず学校側の指導が良い事。
  •  それから素質のある選手を集める事。
  •  さらに設備が整っている事。

この3つの条件をクリアしている学校は強くあり続けることができるのだと思われます。
逆にどれか一つでも条件を満たせなければ結果に影響が出始めるという事ではないでしょうか。

よい指導者がいる学校ならば、たとえ素質的にそこそこの選手の集まりでも実力を伸ばしてゆけるはずです。
進んだ学校ではフィジカル・トレーニングメンタル・トレーニングの専門家を雇っていると聞きます。
ある程度強くなれば、その知名度で素質に恵まれた生徒が入学してくることでしょう。

逆に特待生などで素質ある生徒を集めても、指導が悪ければどうにもなりません
やたらと走らせたり、やたらと大声を出させたり。
(余談ですがバスケの場合、試合の前に全部員で雄叫びを上げているのをよく見かけます。これなどは指導者が周囲の迷惑を考えていないのでしょうね。)

いまだに軍隊式のしごきをやっている学校も存在するようですし。
今時、昔のスポ根みたいに「血の汗流せ、涙をふくな」ではね。
強くなる前に生徒が自殺してしまいます。
実際、何年か前にそんな事件がありましたよね。

「桜宮高校体罰事件」に判決 - 被告の深い反省が逆に体罰問題の解決を難しくする?

最後に設備です。
いくら良い指導者と素質ある生徒がいたところで、練習場所や必要な器具に事欠くようではダメでしょう。

バスケの場合は体育館にコートがあれば良いのですが、他の屋内競技と場所のとりあいという事もありそうです。
また野球やサッカーなど広い場所をとる屋外スポーツの場合、校庭の狭い学校はその時点でハンデを負っているようなものです。

というわけで今回は、高校バスケの関東大会予選を例に、スポーツ教育の在り方を考察してみました。

まねき猫1.jpg


     





posted by セタケン at 12:34 | 私立幻想を打ち破る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年01月17日

私立の授業料を無償化するなら、チェック体制も強化せよ!


 先日のニュースに、「東京都の小池知事が私立高校の授業料の実質無償化を表明」というのがありました。

<私立高>3割無償化 年収760万円未満対象、都が来年度


家庭の経済状況によって教育の機会が奪われることがあってはならない。すべての子供の可能性を広げる」という事ですが、「ちょっと待てよ」と言いたいですね。

 家庭の経済状況を言うなら、最初から公立に行けばよいのではないか?
 
 公立高校の授業料はすでに2010年度より無償化されています。
 
 私立は授業料以外にも何かとお金がかかるもの。
 (意味不明の寄付金とか。)
 経済的にゆとりのない家庭の子が、金のかかる私立を志望することがそもそもおかしいのです。
 
 どうもこれは「子供の可能性のため」と大儀を掲げつつ、実は私立校の経営者を助ける制度なのではないでしょうか。
  
 最近の公立校の躍進には目を見張るものがあります。
 加えて授業料も完全無料なのですから人気が高まるのも当然です。
 
 ・公立新設校が躍進、名門私立を脅かす存在に
 
 ・【公立中高一貫校の今 特集】(1)ゆとり教育の進化論、未来のリーダーを育てる6年制教育カリキュラム
 
 
 その影響をまともに受けているのが私立なのです。
 かつては私立の中高一貫校というだけで人気になっていたものですが、昨今はトップクラスの名門私立を脅かす公立校も出てきました。
 
 
 私立高の授業料無償化は公明党が強く要望していたそうです。
 公明党と言えばその母体は創価学会
 確かこの教団は多数の私立学校を経営していたはず。

 都議会において最大会派の自民党と対立している小池都知事としては、公明党の支持が欲しいのでしょう。
 それで今回の私立無償化という話になってしまったのでしょうね。
 
 逆に私立校の経営者から見ればこれ程ありがたい話はない訳です。
 生徒数の減少に歯止めをかけられるのでしょうし。
 
 経営が苦しくなった私立を、都民の税金で助けてあげる必要があるとは思えません。
 
 少子化で生徒数そのものが減少しているのですから、志望者数の減少した私立校はその役目を終えたものと判断するべきではないでしょうか?
 
 それに、私立校にはいじめ体罰などの情報が表に出づらいという問題があります。
 この件についてはいづれ記事にしたいと思います。
 
 ・偏差値の下がった進学校はお値打ちか?
 
 ・『尾木ママ』はかく語りき。
  
 私立は教育委員会の監督下にはありません。
 都の私学部私学行政課でも指導調査の権限は持っていないと聞きます。
 
 公的な資金より多額の私学助成金授業料の補助などを受けながら、公共の機関の監督を受けないのは如何なものか?
 
 
まねき猫1.jpg


     
posted by セタケン at 11:11 | 私立幻想を打ち破る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月21日

偏差値の下がった進学校はお値打ちか?

 
 偏差値が高くて、自分には手が届かない学校があったとします。
 でもなぜか最近になってその学校の偏差値が落ちてきて、なんとか入れそう。
 そんな時、あなたならどうしますか?
 
 「入りやすくなったのだから迷わず買い!」と、思った方には「ちょっと待て!」と言ってさし上げたい。
 
 偏差値が下がったということは、レベルの高い受験生がその学校を避けたということなのです。
 
 だからまずその原因を考えるべきなのです。
 
 卒業生の進学実績が落ちているのであれば、その学校は進学校としてのレベルが低下したものと見るべきでしょう。
 教え方のうまい先生や有名な講師などがお辞めになったりしていないかチェックが必要です。
 
 また、イジメや体罰などの不祥事が発覚したのが原因であれば、基本的にその学校は避けたほうが無難です。
 少なくとも、その不祥事に対する具体的な再発防止策が実施され、成果が出てくるまでは様子を見るべきでしょう。
 
 以下に不祥事の再発防止どころか事実の公表すらしていない学校の事例を上げてみます。
 
まねき猫1.jpg
 
 ちょうど去年の今頃だったでしょうか?
 とある雑誌にイジメ事件をスクープされた私立校がありました。
 (そう聞いて思い当たる方もいるとは思いますが、一応学校名は伏せることといたします。)
 
 この学校は仏教系の某宗教団体が経営する中高一貫の男子校です。
 20年位前まではレベルの低い底辺私立校だったのですが、この十何年かの間に急速に偏差値が上昇し、最近は中堅の進学校として認知されていました。
 
 いじめ事件の加害者が「校長の息子」だったというだけでも驚きなのですが、他にも問題をはらんだ事件だったようです。
 
 その年の5月に、4年生のひとりの生徒が5人ほどの5年生に全裸にされた挙句、その姿を撮影されてインターネットにUPされたのだそうです。
 イジメはその後も続いていたのですが、学校側が事件を“認識”したのはそれから半年もたってから。
 
 しかもイジメをした生徒たちへの処分は“大甘処分”と評されるほど軽いものだったそうです。
 
 その雑誌の記事では、学校側の被害者への対応を「“不誠実”としか言いようのない形」と表現していました。
 
 この学校の真の問題は、学校側が“大甘処分”を下した背景にあるようです。
 この学校が仏教系のとある宗教団体が経営するものであることは前述いたしました。
 
 当時5年生のいじめグループの中にその宗教団体の“高僧の息子”がいたのだそうです。
 学校に影響力を持つ“有力者の息子”“校長の息子”のツートップがいじめに加担していた事になります。
 校長や管理職にある職員としては彼らに厳しい処分を下せば自分たちの立場が危うくなる訳です。
 
 要するに管理職たちの保身を優先したがための“大甘処分”だったのです。
 
 その雑誌の記事では、現校長をさして「“親の七光り”で抜擢された人」と表現しています。
 大した実力もないのに若くして校長の座についた身としては、経営者一族に逆らえない立場だったと思われます。
 (ちなみにこの方の親に当たる人物は、同学校の何代かまえの校長で「非常に優秀な教育者」だったそうです。)

 おそらく経営者の教団側からみてもこの手の人物は都合が良いのだろうと思われます。
 なにしろ“身内”の不祥事をもみ消してくれるのですから。
 
 この雑誌の記事には、「校長のひとり相撲」とか「“独立した学校法人格を持つ存在”だから教団は強く関与できない」等という、教団側のうそ臭い言い訳も一応載ってはいます。
  
 しかし、経営者の教団側が本気でこの事件に取り組む気があるとは思えません。
 やろうと思えば、理事会に働きかけて校長はじめ当時の管理職をクビにするとか、同教団における僧侶としての資格剥奪や位の格下げぐらいは即座にできるはずなのです。
 なのに経営者が学校の方針に口をはさめないなんて誰が信じると言うのでしょうか?
  
 どうも、いまのところ教団も学校もただ事件の風化を待っているかの印象です。 
 
 でも、世の中そんなに甘くないわけで。
 
 この事件は同校においては“教団の有力者の息子”なら何をしても許されるという実態を露呈してしまいました。
 (この学校は教団僧侶の子弟、いわゆる“宗門生”なら優先的に入学できると聞きます。)
 
 少し頭を働かせれば分かることですが、みすみす我が子をいじめ集団のターゲットにされたいと思う親はいないわけです。
 必然的に学力優秀な受験生ほど、この学校を忌避するようになってしまいました。
 
 学校の管理職たちの保身を優先したがために、学校そのものは大いに評価を下げる結果となってしまったのです。
 
 はたして事件の風化が早いか、元の底辺私立校に戻るのが早いか。
 
 不祥事を徹底的に隠し通そうとする隠蔽体質を改善できない限り、この学校の未来は暗いことでしょう。
 
 
 以上、不祥事で偏差値を下げた学校の具体例でした。

 とにかく、
 「憧れの学校の偏差値が下がって入りやすくなった!」と
 単純に飛びつくことだけはオススメできません。
 
      

 





posted by セタケン at 14:59 | 私立幻想を打ち破る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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