文學界2023年8月号より岸川真氏の短編を紹介

昭和64年1月4日、昭和天皇が体調崩し、世間は自粛モードに包まれている。
長崎の炭鉱で激しいストを行い、落盤事故の責任を取らされ失業した祖父。その後、雑貨店度で生計を立てていたが、大酒とタバコがたたり脳血栓で倒れる。

妻や娘の顔は忘れてしまうが、孫のマコトだけは忘れなかったことから、マコトが祖父の世話係になる。
従来から口数は少なく、知らん、飯、寝の三語くらいしか発しない。

祖父が携わっている文学同人誌が最終号を発行することになり、祖父とマコトは上京する。
祖父は、天皇への恨みを募らせ抗議の自害をすることを計画していた。
普段口数の少ない祖父も、旧友と会い珍しく言葉を発している。
しかし、文学仲間と考え方の違いをめぐって大喧嘩になり、深酒を飲み泥酔する。

翌朝起きると天皇が崩御していた。皇居広場に向かう祖父。自害するために刃物を持ってきていたが、仲間に隠されていたことに気づき、未遂に終わる。

自害が未遂に終わったまま、長崎に帰ることになるが、帰る車内で乗り合わせた自称営業マンと花札をする。祖父のイカサマがばれて揉め事になるが、気迫と口上でその場を乗り切ってしまう。

道中これまでに聞いたことがないほど言葉を発した祖父、それを見てマコトは祖父の死期が近いことを悟る。

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