東京クロマ通信

クロマとはクロスマーケットの略。株式や為替、債券など各金融市場を横断するような話題のほか、イロハ的なことも書いていきたいと思っています。また、スタートアップ企業のストーリーなども載せていく予定です。マーケットはありとあらゆるものが影響しあう場です。金融市場に関する材料や話題を幅広く提供できれば幸いです。

2024年04月

日銀が30日夕、1日の当座預金残高見通しを発表しました。為替介入が反映される「財政等要因」は75600億円の不足でした。

短資会社3社の予想は、20500億円から23000億円の不足。円買い介入の場合は、資金吸収にあたり不足方向に数字が振れますので、52600億円から55100億円が介入規模の推計になります。短資会社の予想はあくまで「めど」ですが、大規模な乖離からすると、やはり29日に円買い介入が実施された可能性が高いとみられます。

*計算式:円買い介入の場合
「日銀見通し」─「短資予想」=「推計される為替介入規模」
75600億円の不足」─「20500億円~23000億円の不足」=52600億円~55100億円

直近では、財務省・日銀(為替の所管は財務省、日銀は実務を行うだけです)による米ドル売り・円買い介入は、22年に3度行われました。922日に28382億円、1021日に過去最大の56202億円、24日に7269億円です。

これに対し29日の推定規模は5.25.5兆円。221021日の過去最大56202億円に迫る規模だった可能性があります。

政府短期証券(FB)を発行すれば、いくらでも資金が確保できる円売り加入と違い、外貨を売って円を買う円買い介入には、外貨準備高という限界があります。外貨準備高は2月末で12814億ドル(約200兆円)と十分にありますが、全部を介入に使うわけにはいきません。

今週はFOMC(米連邦公開市場委員会)や4月米雇用統計などイベント目白押しです。米金利上昇を促す内容となり、ドル円が再び160円に向かう場合、日本の当局が為替介入を使って円安進行を押さえ込みにかかるのか注目されます。

海外投資家の日本市場に対する先物売買は4月第3週(注1)に、投機筋の円売り越しが17.9万枚に増加しました。同週のドル円は154円台で小動きでしたが、売り越し幅は過去最大の07年の18.8万枚に迫っています。日本株は2週ぶり売り越し、円債は11週連続での売り越しとなりました。

同週は日本株が大幅調整となり、日経平均は19日に前日比1011円安、週間では2455円下落しました。イスラエルとイランの対立が激化し中東情勢が緊迫化。リスク資産の株式などへの売りが強まったとみられます。ドル円はリスク回避のドル買いと円買いが交錯し小動きでした。

今週(4月30─5月1日)は、日本は大型連休の狭間で3営業日しかありませんが、内外でイベント目白押しです。30─1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)ではパウエル議長会見で利下げに対するコミットメントの強度が注目されます。
経済指標では1日に4月米ISM製造業景気指数と4月米ADP雇用統計、3日に4月米雇用統計と4月米ISM非製造業景気指数があります。FOMCとともに米金利の方向性を左右しそうです。
ドル円は為替介入とみられる動きで29日に乱高下しました。米金利が上昇しドル円が再び160円を目指した場合、再び介入があるのか注目されます。

円:投機筋は6週連続の売り越し増加
米商品先物取引委員会(CFTC)が26日に発表した4月23日終了週のIMM通貨先物の非商業(投機)部門の円先物のポジションは、ネットで前週比1万4300枚増の17万9919枚となった。6週連続の売り越し増で、過去最大の2007年6月26日終了週の18万8077枚に迫っている。
レバレッジド・ファンドもネットで同3709枚増の10万6089枚の売り越し。4週連続の売り越し増となった。

日本株:2週ぶり売り越し、現先合計で1.1兆円の大幅売り越し
大阪取引所が25日公表した4月第3週(4月15─19日)の先物の投資部門別取引状況では、海外投資家は株式指数先物(注2)を5551億円売り越した。2週ぶりの売り越しとなったが、年初からは累計で3兆4188億円の売り越しとなっている。
同週の現物は5924億円の売り越しとなり、現先合計では1兆1475億円と大幅売り越しとなった。

円債:11週連続売り越し、累計6.8兆円
大阪取引所が25日公表した4月第3週の先物の投資部門別取引状況では、海外投資家は日本の長期国債先物を6518億円売り越した。11週連続の売り越しで、その間の累計は6兆8571億円となった。

注1:株・債券と円では集計期間が一部異なる。
注2:日本株先物は、日経平均先物のラージ・ミニ・マイクロ、TOPIX先物のラージ・ミニ、JPX日経400先物、グロース市場250指数先物の合計。

 



ドル円が大きく動きました。日本時間29日午前に約34年ぶりとなる160円を一瞬突破した後、159円台前半でやや落ち着きを取り戻しつつあったのですが、午後に入って急落。一時155円付近まで約4円の大きな値下がりとなりました。

値動きから言えば、為替介入があったように見えますが、29日は日本が休日で薄商いだったほか、それまでドル円が急上昇していました。まとまったドル売り・円買いに対し過敏に反応しやすい状況であったため、為替介入が行われたかどうかは、現時点で不明です。介入警戒感もありましたし、円ショートポジションも溜まっていました。

神田真人財務官は29日、記者団から為替介入の有無に関して聞かれ「今はノーコメント」、「今は作業中だ」と話したと伝えられています。意味深ですが、コメントからも確認がとれていません。

ということで、今回も推計・推測していくしかありません。以下は1つの方法です。

日銀は毎営業日(午後6-7時ごろ:訂正)に、金融機関の手元資金の総量を示す日銀当座預金残高の翌日の見通しを発表します。その中に「財政等要因」という項目があるのですが、民間金融機関と政府との間の財政資金の受け払いを示すため、為替介入があった場合、これが大きく動くのです。

為替介入は2日後の決済となるので、介入があったと思われる日の翌日に日銀が発表する日銀当座預金残高の翌日見通しに反映されることになります。その中の「財政等要因」をチェックしてください。29日の介入有無を確認するのであれば、あす30日の夕方に発表される5月1日の見通しが判断材料になります。

この「財政等要因」はある程度予測ができます。税金の徴収日などが予めわかっているためで、短期市場のエキスパートである短資会社が予測数字を公表してくれています。介入があった場合、日銀発表の数字がこの予測数値から大きく乖離するので、その差額が介入額として推計できるわけです。

円買い介入の場合は、資金吸収にあたるので不足方向に数字が振れます。例えば、短資会社の予想が3000億円の不足であった場合、日銀当座預金残高での財政等要因見通しが1兆円の不足であるとすると、その差額である7000億円が介入規模となります。もし短資会社の予想が不足でなく余剰であれば、足し合わせてください。

ただ、短資会社による財政等要因の見通しはピンポイントで予測できるわけではなく、3社ある大手短資会社の予測には各社で違いが出ることもあります。あくまで「めど」であり、小規模介入だった場合、日銀と短資会社の予想乖離からの推計は難しくなります。

正式な為替介入額(外国為替平衡操作の実施状況)は財務省が後日発表しますが、あす4月30日午後7時に財務省から発表されるのは3月28日─4月25日分です。29日に介入があったかどうかは、来月の発表分になります。ただ、それも1カ月間トータルの累計数字ですので、再度介入的な動きがあった場合は、29日にあったかどうかはわからなくなり、8月上旬に発表される日次ベースの公表を待つしかなくなります。

(ドル円1分足チャート、期間:2024429日日本時間午前9時─午後345分)

USDJPY_2024-04-29_15-41-57

(出所:TradingView

*訂正:
日銀当座預金残高の翌日の見通し発表時刻を「午後5─6時ごろ」から「午後6─7時ごろ」に訂正します。

海外投資家の日本市場に対する先物売買は4月第3週に、投機筋の円売り越しが17.9万枚に増加しました。同週のドル円は154円台で小動きでしたが、売り越し幅は過去最大の07年の18.8万枚に迫っています。

円:投機筋は6週連続の売り越し増加
米商品先物取引委員会(CFTC)が26日に発表した4月23日終了週のIMM通貨先物の非商業(投機)部門の円先物のポジションは、ネットで前週比1万4300枚増の17万9919枚となった。6週連続の売り越し増で、過去最大の2007年6月26日終了週の18万8077枚に迫っている。
レバレッジド・ファンドもネットで同3709枚増の10万6089枚の売り越し。4週連続の売り越し増となった。



*日本株や円債を含めた詳細は30日にUPDATEします。

日銀が本日の金融政策決定会合で、国債買い入れ縮小の方法を検討すると一部で報じられています。「検討」なので、本日決定されるかどうかは不明ですが、膨れ上がったバランスシート(資産)の「ダイエット」がようやく開始されることになりそうです。

現在、日銀は1回あたりの国債買い入れ予定額をレンジで示しており、レンジ内でオファー額を減額することは、政策変更をしなくても、今でもできます。ただ、レンジ下限でオファーした場合、それ以上の減額は基本的にできないことになり、機動性を欠きます。

対外アピール度も低くなります。円安阻止を狙うのであれば、効果が薄いかもしれません。今後、長期間にわたってバランスシートを縮小しようというのであれば、レンジ全体もしくは下限を引き下げて、1回のオファー額を減らしていくというのが「王道」でしょう。

財務省の国債発行計画では、今年度から2年債を3000億円、5年債を2000億円、10年債を1000億円、それぞれ月間発行額が減額されています。それに見合った13年、3─5年、5─10年のオペを減らせば、国債の需給的には「中立」になります。

月間6000億円の縮小が1つのめどで、これよりも減額幅が大きければ、引き締め度が強いと判断できそうです。日銀の月間の買い入れ予定額は53100億円程度に減ります。日銀の保有国債償還額は、筆者の推計で月間58000億円程度なので、年間6兆円程度、日銀のバランスシートが縮小する計算になります。

その場合のシミュレーションを以下に作ってみました。現在と同様に、1─3年、3─5年、5─10年を直近のオファー額から上下750億円ずつ広げたレンジにしています。ただ、今後のことを考えて上下1000億円ずつのレンジに広げる可能性もあるかもしれません。


<予想:日銀長期国債買い入れ予定額>

    1回あたりレンジ(月回数)   オファー額(カッコは直近)
1年以下:              1500億円(1回)   1500億円
1-3年:    2250―3750億円(4回)   3000億円(3750億円)
3-5年:    3000ー4500億円(4回)   3750億円(4250億円)
5-10年:  3750-5250億円(4回)   4500億円(4750億円)
10-25年:1000-2000億円(3回)   1500億円
25年超:      500-1000億円(2回)     750億円
物価連動債:           600億円(1回)     600億円
                                                            計53100億円

月の実施回数を減らす方法もあります。1-3年、3─5年、5─10年のオペを1回ずつ減らせば、計1兆2750億円の大幅減額になりますが、債券市場関係者以外にはわかりにくく、対外アピール度がやや低いため、可能性は低いとみています。回数の増減とオファー額の増減を組み合わせるハイブリッド型は以前よく使われましたが、これもわかりにくいので、採用されないのではないでしょうか。

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