鳥インフル予防の院内資料

 鳥インフルの予防関連で,当院では主にゾフルーザⓇを使用しております.あくまで過渡期のものなので,将来的に同じ事を言っているかどうかは分からないのですが,現状で利用出来そうな文献情報を元に,わずかではあるものの経験した症例により肉付けを行い,次のような院内資料を作成して,予防目的で来院した鷹の飼い主の皆様に渡しております.
 世間的に,診察室での診療を介して鳥インフルと接点を持つ獣医師というのは珍しいので,相互に意見交換をするほど情報がありません.当然ながら,この薬の鳥類への使用は適用外処方であり,副作用報告等もまだまだ手探りの中にあるので十分なものが出そろっておりません.情報の利用は自己責任でお願い致します.「わたらい動物病院という所では,こんな事をやっている」という,それだけの資料ですね.


猛禽類のバンブルフット;ひとまとめに「バンブルフット」と呼んでいる.

 近頃では,いわゆる毛引きを「Feather destructive behaviour(羽毛破壊行動)」と呼びます.基本的には,「包み紙を変えたら違って見える」というだけで,中身の病気が変わる訳ではないのですが,呼び名を変える事でより理解が深まるという効果があるので,この新しい名称も受け入れられ,次第に広まっている様です.

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わたらい先生の書棚

 ブログ上に分散していた記事を、ひとまとめにして利用出来るようにしました。pdfファイルです。どちらもA4で70ページ未満くらいの文章量です。改めて本にするつもりが無いので、無償提供です。ご自由に使ってください。引用や参考文献として使うときは、「わたらい先生」という人の著作物だと明記してくださいね。

自分で作った用語集
鷹詞拾遺集

『宮内省における放鷹』を口語文に起こしたもの。コメント付き(主と従が入れ替わるくらいの長~いの)。
『宮内省における放鷹』現代口語訳




今季にペットのタカ類であった鳥インフルの感染ならびに報道にあったオジロワシの治療報告から,鳥インフルの治療について自分の知識と経験の範囲で分かる/言えるのは,これくらいというまとめ(と言うかひとりごと).

2024-02-18 14.40.03

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鳥インフルの予防(今できること)と現時点における簡素なまとめ

 農水省の方で奨励している,鳥インフルの発生予防のガイドラインなんかを参考に,うんちくを作ってみました.

  • トリは、屋外にさらさない、屋外で飛ばさない;屋内飼育により懸念される有害事象があるが,それは仕方がない.
  • 施設への立ち入りの際は、靴底の消毒を行う.塩素系消毒薬が良い.消石灰を使うときは,アルカリに影響を受けない逆性石鹸を使う(図1,図2).
  • 施設への立ち入りの際は、着替える;屋外のホコリ等を持ち込まない.
  • 施設周辺の草を刈る:野生動物対策.
  • 野鳥の侵入を阻止する:野生動物対策(図3).
  • ネコや野鼠の進入路を塞ぐ:野生動物対策.
  • ゴミや餌になる物を屋外に放置しない:野生動物対策.
  • 衛生昆虫の発生と侵入を防ぐ.
  • 生き餌,あるいは死んだ直後の餌をその場で食べさせない;特にトリを与えない.
  • 家庭用冷凍庫なら,1ヵ月程度保存した後に,凍結融解した飼料中のウイルス粒子に増殖能は無いはず. 

 簡単な話,冷凍ウズラやヒヨコを飼ってきて家の中で過ごしていれば,鳥インフルも関係ないかなという話になります.
 玄関に消毒槽(消毒薬を染み込ませたタオル)くらいは設置しようね.
 庭を白い粉(消石灰)だらけにするかどうかは,まかせます:安価.
 全ての実施は難しくても,可能性を減らす事が大事なのです.

  1. ワクチン:×.ありません。
  2. 治療薬:△.エビデンスがあるのはゾフルーザⓇ,タミフルⓇ,ラピアクタⓇについて.ただし,治療目的の使用よりも予防目的(危険な行為に及んだ当日に飲ませる)の方が効果は高いと考えられる.かならず助かる様な都合の良い物ではない.もちろん,普段から毎日飲ませるような薬ではない.
2023-11-25 14.06.25-1

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『猛禽類治療マニュアル2024』

 2022年12月に出版した『猛禽類治療マニュアル2023』を、知見の更新と、自分自身の経験のアップデートを踏まえて修正し、2023年9月に『猛禽類治療マニュアル2024』として新しく出版し直しました。
 有り体に言ってしまえば、変わっていない箇所は全く同じ『2023』のままですが、『2023』で終わりにするつもりが、わずか1年経たない間に予想以上に色々あったので、急遽修正版を配布する事にした、『2024』とは、そういう本です。
 全体としては、誤字脱字の修正、文章の手直し以外に、追加でA4で26ページ分、全体の5%分くらい量が増え、更に改稿によって以前と内容が変わっている項があります。

 以下、『猛禽類治療マニュアル2023』の時の紹介です。

 情報ソースが無くなるのもまずいので、最後のつもりですが、2023年の1年間くらいはこの内容でやろうというつもりで既刊本をまとめた物を出版しました。例の如く、アマゾンのKindleストアで電子書籍のみ売っております。
 A4で572ページありますが(『2024』は600ページ)、のべで1,102ページあった既刊本の総文字数の1/3以下まで文章が減らしてあります。
 マニュアルの名の通り、写真が大きく見やすい感じで、アップデートした記事があります。新たなコンテンツが少しだけあります。今回は、薬用量の一覧も作ってみました。
 PCかタブレット端末での閲覧が推奨されます。論理目次、しおり機能、注釈など、各種機能を駆使して使ってください。そういう使い方をするための構成になっています。
 タブレット端末が、一番原稿に近い表示がされます。PCで閲覧するときは、「Aa」にある「ページ幅:」を操作して出来るだけに横に広げて閲覧すると、特に薬用量マニュアルが見やすくなります。逆に画像が拡大されすぎてボケてしまうときは、画面を縮小するとちょうど良い表示に戻ります。
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鳥類の来院の仕方について

 病院前死着は、痛ましい事故です。
 そもそも、診察の為に動物病院を訪れたはずの鳥達が、診察を受ける前に死んでしまっては、元も子もありません。
 死んではおらずとも“死にそう”にしての来院も同様だし、普段と著しく身体の状態が変化してしまっている患者を連れて来てしまっては、本来ならば健康である事を確認するはずの“健康診断”すら満足に行えません。
 ──はたして、その“異常な”検査数値は、本当に異常なのでしょうか?
 
 こうした問題を回避する為には、受診の際には、いくつかの点に注意しながら鳥達を連れて来院していただく必要があります。
2017-02-12 17.57.35
図1.最も安価で無難な輸送方法は、ダンボール箱に鳥を入れて蓋をしたら、“箱ごと”冷却なり保温しながら鳥達を連れてくるという方法である。ダンボール箱は使い捨てに出来るだけでなく、保温性や吸水性に優れており、遮蔽が出来て、鳥がぶつかっても怪我をする要素が少ない素材である。
 

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雛の誘拐について

 特に春先に多いイベントに、“雛の誘拐”があります。
 写真(図1)にある様な鳥達を捕獲して、動物病院に持ち込むのはNG行動です。
 つまり、やってはいけません。
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図1.スズメの巣立ち雛。巣立ちをした頃の雛鳥は、地面におり、脚力に問題がある様に見え、追いかければ飛んで逃げるものの容易に捕まえる事が出来るので、翼などに“怪我”をしている様にも見える。この病気や怪我をしている様に見える雛鳥の未熟な行動は、成長の途中で必ず現れる。それは、決して異常な事ではない。嘴が黄色いのは、その鳥達がまだ幼い証拠である。

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