若松真平
福島県いわき市でカフェを経営している、ぴのさん。
3姉妹のわがままな末っ子で、姉たちに心配をかけて大人になった自覚がある。
結婚するとき、年が4歳離れた一番上の姉は手書きのレシピノートをくれた。
豆腐ハンバーグや手羽先バーベキュー、チンジャオロースなどの作り方や分量を、わかりやすく手書きしてくれたものだ。
ある意味、母親よりも母親らしい世話焼きで、その愛が少し重くて距離を置こうと思った時期もある。
そんな姉が2016年8月にがんと診断され、翌年10月にこの世を去った。
◇
亡くなる数カ月前、図書館で借りた漫画を病室に届けたことがある。
手塚治虫が描いた「ブッダ」全12巻だ。
もう一度読みたいから、とリクエストされて持って行ったが、数日後にはこう言われた。
「おかしいなぁ、本の内容が全然入ってこないんだよ」
今思えば、すでに読む力がなくなっていたのだと思う。
病床の姉から「死後の世界はあると思う?」と聞かれたこともあった。
「あると思うし、生まれ変わりもあると思う」と返して、こう付け加えた。
「もし私より先にお姉ちゃんが死んだら、何かのサインを使って『死後の世界はあるよ』と教えてね」
軽い気持ちで交わした約束だったが、亡くなって2週間後、本当に知らせが届くことになった。
その日は、子どもが通っている学校でバザーが開催されていた。
姉が亡くなって間もないこともあって本当は休みたかったが、手伝いが決まっている。
それに、何かをして気を紛らわせたいという気持ちもあった。
開始前にバザーの提供品を並べ…