「買わなくても、見るだけでもいいですよ」。職員の明るい声に誘われ、お年寄りが集まってきた。

 福島県南相馬市小高区にあるデイサービス施設で6月末、地元でとれた野菜の販売会があった。

 施設を運営する「彩葉(いろは)」の社長で、介護福祉士の大井千加子さん(62)は「自然豊かな地域に戻った利用者に、新鮮な野菜を食べてもらいたい」と話した。

 小高区は7年前に東京電力福島第一原発事故の避難指示が解除された。戻った人口は約4千人と、事故前の3割。その半数近くが65歳以上だ。彩葉から100メートル先の県道では今も時折、除染トラックが行き交う。

腰の高さに達した津波こらえながら

 12年前、大井さんは隣接する同市原町区の介護老人保健施設「ヨッシーランド」で入所部門の介護長だった。

 海岸から約2キロの施設には入…

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