聞き手・大坪実佳子
保育園で食べ物を無理やり口に押し込む、長時間にわたって食べさせ続けるといった事案が今年に入り、相次いで発覚しました。こうした不適切な保育を防ぐためには何が必要なのか。玉川大の大豆生田啓友(おおまめうだひろとも)教授(保育学)は職場に「語り合える風土があるかどうかがカギ」と言います。
――不適切な保育が起こる背景には、何があるのでしょうか。
背景にある要因は多様です。
中でも大きいのは、現場の多忙さと、保育士がみる子どもの数を国が定めた配置基準にゆとりがないことです。
それに加え、一部の現場では「~せねば」「~すべきだ」という思考停止もあります。
「すべての子が何でも同じようにできるようにさせるべきだ」という思考停止。
食に関しては「とにかく食べさせなきゃいけない」「残さず食べることが美徳」という思い込みや、過剰な価値意識。
多様性の逆です。
「食」はマナーや健康とつながるため、とても大切な一方で、厳しくしなければという旧来型のしつけ感が出やすいのでしょう。
全員に同じ量を全部食べさせるのは無理だと、現場の保育士もわかっているはずです。
なのに、そう言えないのはなぜか。
全国の保育園で今年に入り、完食の強要や、給食を無理やり口に入れるなどの不適切な指導が相次いで発覚しました。子どもの心に傷を残し、大人になってからも影響を及ぼすことがある「完食指導」。何が問題なのか、専門家とともに考えます。
それがパターン化してしまって…