藤田大道
15歳で1人、中国から来日した青年は、団地でつつましい生活を送っていた。祖母思いで控えめな性格。ある時、父から投げつけられた言葉に、包丁を手に取った。
5月20日、東京地裁立川支部。
実父への殺人未遂罪に問われた被告(23)は、グレーの長袖ポロシャツ姿で証言台に立った。被告は日本語が得意でなく、そばに通訳が寄り添う。
被告は昨年8月24日、自宅で実父(当時59)を包丁で刺して殺そうとしたなどの罪で起訴された。
通訳が読み上げる検察官の起訴内容を聞き終えると、被告は「間違いありません」と認めた。
犯行当時の心境をこう語った。
「我慢しきれず、爆発しました。父に死んでもらおうと思いました」
父との間で、そして日本での暮らしの中で、被告に何があったのか。冒頭陳述や被告人質問から、事件の経緯をたどる。
被告は2000年、日本人の父と中国人の母との間に生まれた。
3歳のときに両親は別れ、母と共に中国へ渡った。生活は苦しかった。母が日本の父に送金を頼む姿を何度か見た。金が届いた様子はなかった。
8歳になると、母は別の男性と再婚した。
間もなく、2人の間に女の子と…