1千万円だまされ、気づけば詐欺の協力者 恋心を利用された女の後悔

有料記事きょうも傍聴席にいます。

土居恭子
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 ストレスもあって、手を伸ばしてみたアプリ。

 恋愛感情を抱かせて金をだまし取る「ロマンス詐欺」の入り口だった。

 「マイク」たちから1千万円近くをだまし取られた。

 だが、「ジャック」と出会い、立場が変わる。

 詐欺グループに加担したとして法廷に立つまでに、何があったのか。

 4月17日、高松地裁での初公判。

 法廷に入ってきた被告の女(50)は、黒のジャケットにスカート姿、少し茶色がかった髪を束ねていた。

 傍聴席には、スーツ姿の夫がいた。

 被告が関与したとされるのは、詐欺グループによるマネーロンダリング資金洗浄)。

 自身の銀行口座に振り込まれたお金で暗号資産を購入し、別の人物らに送る。これを2022年8月に4回繰り返し、犯罪によって得られた約300万円の出どころをわからなくしたとして罪に問われた。

 検察官が、起訴状を読み上げた。被告は「やってしまったことは事実です」。ただ、犯罪の収益を隠そうとしたつもりはない、とも付け加えた。

 被告が暗号資産に換えた約300万円。そこにはロマンス詐欺に遭った別の被害者のお金が含まれていた。

 被告も、最初は被害者だった。

 加害者に転じてしまうまでの経緯を、検察側の冒頭陳述や被告の証言などでたどる。

結婚28年 寂しさ埋めたアプリ

 被告には結婚して28年ほどになる夫と、2人の子どもがいる。事件当時は関西のある都市で、夫と娘との3人暮らし。会社員として働きながら、ときには休日の一人旅も楽しんだ。

 はたからみれば、不自由のない生活。でも、7年前に転職した勤務先の業務は過酷で、プライベートでは夫婦関係に悩んでいた。

 休日には一緒に出かける家族が理想だった。でも、夫は仕事人間だった。

 22年に言語交換アプリに登録した。知り合った人とチャットなどで外国語を教え合うアプリだ。

 英会話を始めようと思っていたこともあるし、「寂しさを埋めるため」でもあった。

 アプリ越しの交流が始まった。

 被告はほどなく、「マイク」…

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