1980年奈良県生まれ。大阪市立大学経済学部卒。大阪市立大学大学院経済学研究科修了、博士(経済学)。同志社大学政策学部講師、大阪市立大学大学院経済学研究科准教授、同教授を経て現職。著書に『人口・家族・生命と社会政策』(2010年)、『<優生>・<優境>と社会政策』(2013年)、『人口論入門』(2017年)がある。俳人としても活動しており、句集に『夏帽子』(2010年)、『砂の輝き』(2014年)、GOLDFISH'S SIGH(2021)がある。
「天才と狂気は紙一重」という言葉は、時代思潮としての優生学に関心が集まった近代から使われている。私は院生時代に戦前の優生学と優境学に関する文献を集中して読んでいたとき、当時から天才そのものへの興味だけでなく、天才がどんな形で社会に現れるか、
知人とミカンの価格高騰の話をしていたら、車内販売や給食で食べた冷凍ミカンも懐かしさが漂うものになったという話も出てきた。日常の暮らしの中に溶け込んでいたはずの<皮がむきやすく、甘く安価であるところから、手軽に食べられる>ミカンがもたらしてく
2025年1月17日の今日は、阪神・淡路大震災から30年の節目になる。 「震災当時を思い出すと、今も涙があふれる。しかし、当時のような全てがつらく感じる『激情的な悲しみ』ではない。30年の年月をかけて悲しみがわき出る波のようなものが少しず
地震で大切な人を亡くすというような過酷な体験について、その体験をしていない人が聞くのは覚悟がいる。体験をしていない人が頼めるのは、想像力しかないからだ。私も阪神・淡路大震災の体験者だが、震源地からは距離があって地震で大切な人を亡くすというよ
貯金がどのように習慣化されたかという問いを追究した吉川卓治『「子ども銀行」の社会史:学校と貯金の近現代』(世織書房、2016年)は、教育機関を通じての貯蓄思想の啓蒙、貯蓄増強方策であるようにも見える「子ども銀行」(学校の特別活動の一環として
応援対象を「推し」と呼んでみたり、深くハマることを「沼に落ちる」と言ってみたり。 多様性が強調されたり個性が重んじられたりする一方で、同調圧力を感じることが少なくない。そんな時代を生きているなかで、他人の意見に惑わされずに夢中になれること
受験は人生の大きなターニングポイントだが、その合否で人生が決定してしまうわけではない。志望校に入れなかったことによって新たな人生が開けることもある。だから、人生は面白い。失敗や苦労も含めて人生における重大な転換期を乗り越え、生き抜くことの価
民泊は「地域の活性化」のような良い影響と「住民トラブルがある」といった悪い影響の両面がある。「空き家が目立ち、それが地域の衰退につながる」、「荒れ果てた空き家が増えて、景観が崩れる」というような共通認識がある程度形成されている地域とこの記事
初鴉(はつがらす)「生きるに遠慮が要るものか」 花田春兆 新年の初めに聞く鴉の鳴き声に生きることそのものに遠慮を強いられている人の声を重ねた。1996年に発表された「揺るる繭玉(まゆだま)」(30句)のなかの1作で、同時発表作に<車イス
「刷新のスピードが速すぎて、熱狂し、余韻が広がる前に次の人が現れてしまう、というようなことはあるんだろうな、と思います」と。 この記事を読んで、流行のもつ積極的、また、消極的な意味について考えている。流行は新しい文化を創ることにつながるの
戦時中の人口論、人口政策論について文献調査をしていたときによく見かけたのが“日本民族の母”という言葉だ。この記事を読んでいて市川房枝編『戦時婦人読本』(昭和書房、1943年)を思い出したが、同書のなかで市川房枝は戦時下の婦人には「民族の母と
梅田スカイビルとJR京都駅ビルはともに空を映し出して、それを眺めていると空に溶け込むような不思議な感覚を味わうことができる。先日JR京都駅ビルを訪れたときにも、ビルに映し出された京都の空をぼんやりと眺めていた。いずれも、都会の忙しなさのなか
大北風(おおぎた)にあらがふ鷹(たか)の富士指せり 臼田亜浪 冬の強い北風に逆らって富士山の方向へ向かう鷹の飛翔。大北風という季語がもたらす厳しさや身の引き締まる気分がこの句を貫いている。初夢に見ると縁起がいいといわれる「一富士(ふじ)
京都の市街地に高木が密集して大きな蔭を作っている。見下ろすとそんな風に見える下鴨神社の境内にある相生社は、古くからの植生が今に伝わる糺(ただす)の森を貫く表参道を進むと見えてくる。植樹活動も継続的に行われてきた糺の森では大樹のそばで若木が少
私も、この絵本の読者だ。「まめまめしくくらせますように」というようなやわらかくてリズム感のある表現と美味しそうな絵の組み合わせで、なぜその料理が縁起物としておせちに入っているのかが心を込めて紹介されている。おせちのあり方は時代とともに変わっ
記事の内容を強くうったえる写真もじっくり楽しみたい。そんな記事だ。 京都で年越しを迎えると、あちこちから鐘の音が聞こえてきたりする。除夜の鐘の音を聞いてすがすがしい気持ちで新年を迎えたい。そんな人々の思いに応えるための除夜の鐘を撞き損ねた
孤独感について、<どうやって過ごそうかと考えはじめると、どこかへ逃げ出したくなってしまう。逃げるわけにはいかないと思い直して、とにかく早く過ぎてほしいと思う>と表現した人がいたことを思い出している。年末年始のような寂しさを感じやすい時期こそ
文学フリマには、作家さんや作品との<偶然の出会い>がある。思わぬ作家さん、思わぬ本との出会いだ。短歌や俳句といったサークルや短詩系の出店も多く、短歌や俳句に関わっている人たちの間でも文学フリマが話題になることが増えた。文学フリマは、文学が好
季節の挨拶に使われたり、俳句の季語として詠まれたりする二十四節気。昔から伝わる季節の移ろいを細やかに感じ取って、それを食卓に並べて味わう。季節と分かちがたく結びついている食べ物の旬を知り、その時期においしいものを食べることは、栄養的にも味覚
海上ではなく海底というように、見えない脅威、見えにくい脅威というのは意外と多い。国際通信のほとんどが経由している海底ケーブルは、海外とつながるために欠かせない存在だ。だとすれば、海底ケーブルは有事の際の攻撃対象だろう。戦争を身近に感じざるを