物価高を受けて賃上げが進む他産業との賃金格差が目立つ介護業界。人材不足にも拍車がかかっている。政府は介護職らの報酬を月6千円増やす方針だが、対策として十分とは言えない。報酬の増額には介護保険料の引き上げが必要で、負担増との難しいバランスをとることが求められる。
人材不足がとりわけ深刻なのが訪問介護だ。ヘルパーの有効求人倍率は2022年度に15・53倍に達した。影響は利用者にも及びだしている。
「すでに訪問介護では、介護職員の不足によりサービス提供をお断りせざるを得ないようなケースや、施設では空室があるにもかかわらず、利用者を受け入れられない状況が広がっている。このままでは担い手不足によって、介護保険制度は崩壊してしまうんじゃないか」
10月18日。介護従事者の労働組合「日本介護クラフトユニオン」の染川朗会長は、処遇改善などを求める60万筆超の署名を武見敬三厚生労働相に提出。その後の記者会見でこう訴えた。
今年8月の有効求人倍率は、全…