ファクトチェックプログラム廃止の記事で誤情報を撒き散らすか
- Metaの第三者ファクトチェック廃止
- ファクトチェッカーの偏向・正当な政治的言論の封殺
- 日本メディアがMetaの背景情報を隠蔽・トランプやイーロン、Xへの責任転嫁
- 朝日新聞系の朝日インタラクティブ運営のCNET Japanは元記事を大幅編集
- 「ファクトチェック機能」の問題とする内容の改変、偽情報蔓延をイーロン買収を発端とする印象操作まで
Metaの第三者ファクトチェック廃止
FacebookやInstagramなどを運営するMeta社がSNSの運営方針を変更し、よりフリースピーチに舵を切り、ミスによる削除などを減らすと宣言しました。
その中で、【第三者のファクトチェックプログラムを廃止し、コミュニティノートモデルに移行する】という内容について、各メディアが大きく取り上げています。
が、しかし…隠蔽されている重要な背景情報があります。
ファクトチェッカーの偏向・正当な政治的言論の封殺
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2025年1月7日
会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグは『ファクトチェッカーの政治的偏向が酷すぎて、信用を構築するよりも破壊することの方が大きかった』と、動画で訴えていました。
Metaの当該リリースのブログ執筆者である国際問題担当社長のジョエル・カプランの記事本文でも…
We made what we thought was the best and most reasonable choice at the time, which was to hand that responsibility over to independent fact checking organizations. The intention of the program was to have these independent experts give people more information about the things they see online, particularly viral hoaxes, so they were able to judge for themselves what they saw and read.
That’s not the way things played out, especially in the United States. Experts, like everyone else, have their own biases and perspectives. This showed up in the choices some made about what to fact check and how.
独立したファクトチェック団体に責任を委ねたが、人々が自分で判断できるようになるという期待は実現されなかった。特に米国で顕著だが専門家らもまた他の者と同様にそれぞれのバイアスや観点を持っており、何をどのようにファクトチェックするかという選択に表れている、と書かれています。
また、「人々が正当な政治的言論や討論だと理解するような内容が、ファクトチェックされすぎてしまうようになった」ともあります。
Over time we ended up with too much content being fact checked that people would understand to be legitimate political speech and debate.
この話で重要なのは、Metaがこのような認識のもとに方針転換したということです。
が、日本のメディアの多くは、これらの認識を隠蔽し、あろうことか別の認識へ誘導するために発信内容を改変すらしていました。
そして、「Xでコミュニティノートが機能しているのを見てきました」と、ライバル企業が運営するSNSの仕組みから学んだということを明記しています。
We are now changing this approach. We will end the current third party fact checking program in the United States and instead begin moving to a Community Notes program. We’ve seen this approach work on X – where they empower their community to decide when posts are potentially misleading and need more context, and people across a diverse range of perspectives decide what sort of context is helpful for other users to see. We think this could be a better way of achieving our original intention of providing people with information about what they’re seeing – and one that’s less prone to bias.
なお、ザッカーバーグの動画では、中国が米国で有効に機能しているアプリが検閲を受けていることやEUが規制法を強めている事、南米が「秘密裁判所」を設け、企業に対し、すぐに解散を命じることができる状況にあることを訴えていましたが、アメリカ政府の支援によりアメリカ企業が検閲をはねのけ、それをグローバル展開せよ、と主張していましたが、この点にも触れていません。
日本メディアがMetaの背景情報を隠蔽・トランプやイーロン、Xへの責任転嫁
日本メディアの記事*1*2*3*4*5*6*7*8、海外メディアの記事(日本語版含む)*9*10、海外メディアの記事内容を日本側で編集した記事*11がありますが、1月8日12時までの記事だと例えば…
NHKの記事は、上掲の【ファクトチェッカーの偏向】【正当な政治的言論や討論だと理解するような内容が、ファクトチェックされ過ぎた】をいずれも触れていません。
複数のメディアで、「トランプ氏への配慮」、「アメリカではトランプ政権へ迎合的な動きだとする意見も」「トランプ氏との関係を改善する狙い」といった、枝葉末節に触れるところが見られました。
他方で、海外メディアはCNNは【ファクトチェッカーの政治偏向】【異なる考えを持つ人々を締め出すために利用されるようになった】を書いているし、韓国の中央日報も【ファクトチェッカーの政治偏向】に触れ、ロイター通信は、ファクトチェック団体の反論を掲載する過程で、ファクトチェックメンバーに偏見や過度の検閲傾向があると指摘されている状況を記述、ブルームバーグでも【ファクトチェッカーの政治偏向】【正当な政治的言論の封殺】が書かれています。
日本メディアで上掲の重要な要素を書いているのはTech系のITmediaと*12、大手だとTBSくらいでした*13。
朝日新聞系の朝日インタラクティブ運営のCNET Japanは元記事を大幅編集
あげくの果てには、朝日新聞系の朝日インタラクティブ運営のCNET Japanは元記事を大幅編集して、重要な要素を隠蔽していました。
この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
サマンサ・ケリー氏による元記事*14を読むと…
Meta faces ongoing criticism for its handling of misinformation; allegations of political bias; and criticism regarding the broader societal impact of its platforms.
Metaは誤情報の取り扱い、政治的偏向の疑惑、Meta社プラットフォームのより広範な社会的影響に関する批判に継続的に直面している。
「Meta社は政治的偏向の疑惑という批判に直面」とぼかしていますが、日本向け記事ではそれすら存在してません。
Kaplan said that the fact-checking program, launched in 2016 to combat misinformation, evolved into a tool that sometimes stifled legitimate political debate.
カプラン氏は、誤情報に対抗するために2016年に開始されたファクトチェックプログラムは、時に正当な政治討論を抑圧する道具と化したと述べた。
ここはきちんと、ファクトチェックプログラムの重要な問題点を取り上げています。
元記事はリンクも複数貼って、読者の検証可能性を担保している。
が、CNET Japanの記事は英語の元記事へのリンクのみで、元記事にあるリンクは無し。
yahoo転載版だと記事へのリンクすら無し。
「メディア」とはいったい、なんなんでしょうか?
「ファクトチェック機能」の問題とする内容の改変、偽情報蔓延をイーロン買収を発端とする印象操作まで
呆れ果てることに、もっと酷い記事があります。
毎日新聞記事では「ファクトチェック機能は政治的に偏り過ぎ、米国では信頼を高めるどころか破壊することになった」などと、ファクトチェック団体や専門家といった運営主体の問題ではなく「機能」の問題として記述しており、元の発信内容とは異なる改変が行われています。
さらに、毎日新聞では以下の記述が。
トランプ氏の大統領選勝利に貢献したマスク氏は「言論の自由絶対主義」を自称しており、問題投稿のチェックを「検閲」と批判してきた。そのマスク氏に買収されたX(当時はツイッター)では、虚偽投稿が増加していると指摘されている。【ワシントン大久保渉】
虚偽投稿の増加とドナルド・トランプ氏やイーロン・マスク氏を関連付ける内容です。
既に書きましたがカプラン氏はライバル企業運営のXのコミュニティノートが機能していることを参考にして今回の変更に至ったと書いていますから、その趣旨を没却する内容です。
Yahooエキスパートによる平和博氏の記事*15では…
この方針転換は、米国のドナルド・トランプ新政権発足に合わせた政治的判断と見られる。
偽誤情報対策を「検閲」と位置付けて反発してきたトランプ新政権への移行が、方針の大幅見直しの契機であるとしている。
偽誤情報などへのコンテンツ管理の後退は、イーロン・マスク氏によるツイッター(現X)買収に端を発し、トランプ氏を中心とした共和党による反偽誤情報対策のうねりの中で勢いを増してきた。
いわばコンテンツ管理の「マスク化」だ。
などと、Meta社の記事の趣旨とは異なった自己の認識を書いています。
何をもって「コンテンツ管理」の「後退」とするのかは人それぞれだから、間違ったことは書いていない、ということなんでしょう。
トランプ氏やマスク氏が偽誤情報対策を全て検閲と考えていたとする情報は、見当たりません。現実に、Xはコミュニティノート機能があり、法的な理由での表示制限を行っています。トランプが大統領時代に発した大統領令では、特定の観点のみを検閲することに対して警告をしているのが分かります。*16
ファクトチェッカーの偏向については触れていますが、ファクトチェック団体による「偏見はない」という意見の紹介のためであり、それがかなりの文量を占めています。
流石は元朝日新聞社員で日本ファクトチェックセンター運営委員、というわけですね。
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*1:メタ、ファクトチェックを廃止「表現の自由守る」 保守派の批判受け 朝日新聞デジタル
*2:米メタ ファクトチェック廃止を発表 トランプ氏就任踏まえたか NHK
*3:「メタ」が“第三者機関によるファクトチェック”の廃止を発表 ザッカーバーグCEO「誤りが多発し検閲が行き過ぎていた」FNNプライムオンライン(フジテレビ系)
*4:「メタ」がファクトチェック廃止 トランプ氏に迎合か テレ朝news
*5:米メタ、ファクトチェック廃止 トランプ氏と関係修復狙う 時事通信
*6:メタ、真偽検証の「ファクトチェック」を米国で廃止へ…トランプ次期大統領に迎合との見方も 読売新聞ONLINE
*7:メタ、ファクトチェック機能を米国内で廃止へ 日テレNEWS
*8:「メタ」、“ファクトチェック”を米国で廃止へ トランプ氏との関係改善が狙いか ABEMA times
*9:米メタ、ファクトチェックを廃止 CEOは「有害なコンテンツが増える」と認識 CNN.co.jp
*10:トランプ氏の顔色をうかがうのか…米フェイスブック、ファクトチェック機能の廃止へ 中央日報日本語版
*11:Metaがファクトチェックを終了へ、「X」と同じユーザー主導型に CNET Japan
*12:Meta、第三者によるファクトチェック廃止へ 政治コンテンツ制限緩和も ITmedia NEWS
*13:メタ 米でファクトチェック廃止 ザッカーバーグCEO「トランプ氏と協力」 TBS NEWS DIG
*14:Meta Ditches Fact-Checking Program, Wants You to Pitch In With Community Notes Two weeks before a second Trump term begins, Mark Zuckerberg says "free expression" is the way to go.(魚拓)
*15:Metaがファクトチェックを廃止、「マスク化」するソーシャルメディアの行方は?
*16:Remarks by President Trump Announcing an Executive Order on Preventing Online Censorship
Issued on: May 28, 2020