パブリッククラウドを提供するアマゾン ウェブ サービス(AWS) ジャパン(AWSジャパン)は2020年10月8日、総務省が構築した中央省庁向けの「第2期政府共通プラットフォーム」がAWSのパブリッククラウド上で運用開始されたと発表した。
行政システムのクラウドシフトの始まりになる大きな出来事だが、実際に個別アプリケーションのクラウド化が進むか、コスト削減や効率化が進むかは、今後の政府の取り組みにかかっている。
政府共通プラットフォームは、各省庁が個別に情報システムを構築・運用するのは効率が悪いため、1つの基盤に集約して効率化を図るという考えで作られた。
既存の第1期政府共通プラットフォームは従来型のオンプレミスのデータセンターに集約する仕組みだった。今回稼働した第2期は、パブリッククラウドであるAWSベースのプラットフォームに刷新したうえで集約することになった。
現状は、まだ第2期政府共通プラットフォームという「容器」が稼働したにすぎない。ここに税や医療、社会保障などの具体的なアプリを載せるのはこれからだ。第1期プラットフォームやその他の基盤で稼働している個別のアプリを第2期プラットフォームへと移す作業は今後本格化する。政府はそのための工程管理の委託先として、2020年秋にNTTデータを選定している。
中央省庁のAWS採用に2つの壁
AWSジャパンで公共分野を統括する宇佐見潮執行役員パブリックセクター統括本部長は「ここまでに多くの時間と議論を要した」と振り返る。大きく分けて、信頼性・セキュリティーと、契約慣行の2つの壁があったという。
既に米国など外国政府では、政府の重要システムがAWS上で稼働するのは珍しくない。日本の官公庁でも、Webサイト公開やオープンデータ提供といった外部情報提供に関わるシステムには、既にAWSを含むパブリッククラウドが部分的に使われ始めている。だが、中央省庁の行政の根幹に関わるシステムでパブリッククラウドを使う前例がなかった。