第73回NHK杯決勝 藤井聡太NHK杯 対 佐々木勇気八段
こんにちは
叡王戦の挑戦者が決まりましたね。竜王戦、棋王戦に引き続き三度伊藤匠七段が藤井聡太叡王に挑戦することとなりました。挑戦者決定戦では難敵永瀬九段を破り堂々の挑戦となります。勝ちまくってますね。藤井竜王名人以外には負けてない印象です。ここまでのタイトル戦で1持将棋が最高の戦績で未だに勝ち星にたどり着いていません。どういった作戦・戦略で臨むのか注目です。藤井叡王としては、並行して行われる豊島九段との名人戦もあり大変だと思うのですが、ここまではそんな憂いを吹き飛ばすほどのタイトル戦での成績を収めています。伊藤七段・豊島九段に付け入るスキがあるのか4月から始まるタイトル戦は目が離せません。
<第9期叡王戦五番勝負 日程・会場>
第1局 4月7日 (日) 愛知県名古屋市「か茂免」
第2局 4月20日(土)石川県加賀市「アパホテル&リゾート 佳水郷」
第4局 5月31日(金)千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」
<第82期名人戦七番勝負 日程・会場>
第1局 4月10・11日(水・木)東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第2局 4月23・24日(水・木)千葉県成田市「成田山 新勝寺」
第3局 5月08・09日(水・木)東京都大田区「羽田空港第1ターミナル」
第4局 5月18・19日(土・日)大分県別府市「割烹旅館もみや」
第5局 5月26・27日(日・月)北海道紋別市「ホテルオホーツクパレス」
第6局 6月11・12日(火・水)愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
第7局 6月25・26日(火・水)山形県天童市「天童ホテル」
さて今回は、佐々木勇気八段が藤井聡太NHK杯を見事破り初優勝を飾ったNHK杯決勝の対局を振り返りたいと思います。
藤井聡太|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
佐々木勇気|棋士データベース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)
初手から
▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲7六歩 △3二金 ▲7七角 △3四歩
▲6八銀 △7七角成 ▲同 銀 △2二銀
▲4八銀 △3三銀 ▲7八金 △6二銀
▲4六歩 △7四歩 ▲4七銀 △1四歩
▲1六歩 △6四歩 ▲6八玉 △7三桂
▲3六歩 △6三銀 ▲9六歩 △9四歩
▲3七桂 △4二玉 ▲4八金 △6二金
▲5六銀 △8一飛 ▲6六歩 △5四銀
▲2九飛 △5二玉 ▲7九玉 △4二玉
▲8八玉 - 図1
振り駒で佐々木八段の先手となりました。面白い展開です。双方変化することなく現代角換わりの定跡形へと進みました。▲7九玉~▲8八玉とするところでは、▲6九玉と途中下車したり、▲7九玉の形で仕掛ける手順もあるところかと思います。この後の佐々木八段用意の作戦に注目といったところです。
図1から
△6三銀 ▲6七銀 △5四銀 ▲5六歩
△4四歩 ▲5九飛 △3一玉 ▲5五歩
△4三銀 ▲4五歩 - 図2 △同 歩
▲同 桂 △4四銀左 ▲4六歩 △6五歩
▲同 歩 △同 桂 ▲6六銀左 △6四歩 - 図3
後手△6三銀の待機策をみて佐々木八段も▲6七銀と銀矢倉に組み替えました。この後▲5九飛と中央に飛車を振り替え▲5五歩~▲4五歩(図2)と開戦していきました。銀が攻めに参加していないので軽い攻めに感じます。ジャブといったところでしょうか。その後後手も△6五歩~△6五桂と桂馬を捌き、先後同型に近い形となりました(図3)。玉と飛車の位置が違うだけですね。
図3から
▲6三歩 △7二金 ▲3五歩 △同 歩
▲2九飛 △7五歩 ▲1五歩 △同 歩
▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △2三歩
▲2九飛 △7六歩 ▲7三歩 △同 金
▲6二歩成 - 図4
中盤戦です。先手が一発▲6三歩とたたきの歩を入れた後、3筋1筋と歩の突き捨てをいれてから2筋で飛車先の歩交換を行いました。この間後手はじっと7筋の歩を進めます。7筋の歩が切れたのを見て▲7三歩と金頭を叩き、金を上ずらせて▲6二歩成とと金を作る戦果を得ました。と金は大きそうですが、歩損をしており形勢的にはまだ均衡がとれているようでした。
図4から
△8六歩 ▲同 歩 △4五銀 ▲同 歩
△7四桂 - 図5 ▲4四歩 △同 銀
▲6五銀 △同 歩 ▲3四銀 △8六桂
▲4三桂 △2二玉 ▲3一角 - 図6
と金を作られましたが藤井NHK杯も飛車先を突き捨ててから△4五銀で桂馬を食いちぎり、奪った桂馬を△7四桂(図5)と打ち込みます。銀取りとともに△8六桂を狙っています。厳しそうにもみえますが、佐々木八段は想定範囲なのか指し手は止まらず、▲4四歩から攻め合いを挑みます。研究範囲なのでしょう玉頭に迫った△8六桂にもひるまず▲4三桂~▲3一角(図6)と迫ります。激しい展開のまま終盤戦へ突入していきます。
図6から
△1二玉 ▲1五香 △1三歩 ▲8七金
△2四銀 ▲7一と △8二飛 ▲7二と - 図7
△同 金 ▲2二歩 △9八桂成 - 図8
▲3一角に対して後手△同飛とすることもできず、△1ニ玉と耐えます。▲1五香 △1三歩を決めてから、▲8七金~△2四銀と双方玉頭を厚くします。ここら辺がプロの呼吸なのでしょうか。この局面で指された▲7一と~▲7二(図7)とは見えにくい手に思えます。後手玉と反対方向にと金を動かす手ですが、△同飛は8筋から後手の飛車が外れ▲8六金と桂馬を取られますし、本譜の△同金も2段目の飛車の利きが遮られ後手玉の守りが弱体化しています。100手近くになっていますが研究手だとしたら驚愕です。佐々木八段リードしたかにみえましたが、▲2二歩は若干緩手だった可能性があり、ここから藤井NHK杯の猛攻が始まりした。まずは△9八桂成(図8)から始まります。
図8から
▲同 香 △9九角 ▲7八玉 △6六歩
▲5六銀 △3一金 ▲同桂成 △6七角
▲同 銀 △同歩成 ▲同 玉 △8七飛成 - 図10
あっという間に形勢は逆転してしまいました。この瞬間は後手玉が絶対詰まない格好となっており、後手の攻めはかなりの無理が許されます。瞬く間に先手の守り駒が剥がされ△8七飛成(図9)と王手をかけられた局面は先手絶体絶命のピンチです。しかも藤井NHK杯が攻めています。
図9から
▲5八玉 △6七銀 ▲4七玉 △5六銀不成
▲3八玉 △5五角成 ▲2四飛 - 図10
△3七金 ▲2九玉 △2八金 ▲同 飛
△同 馬 ▲同 玉 △2六飛 ▲3九玉
△2七龍 ▲3八銀 - 図11
このまま藤井NHK杯が寄せ切ると思われたところで事件が起きました。△5五馬と詰めろをかけた手が良くなかったようで、この瞬間▲2四飛が詰めろ逃れの詰めろとなりました。一瞬の出来事でした。再度逆転です。△5五馬では△6六馬として△4八馬からの詰めろをかけるのが明快だったようです。▲2四飛は、先手玉が2九に逃げれるスペースを作った手で、本譜も後手からの詰みを逃れています。佐々木八段の鋭い切れ味が出ました。藤井NHK杯も2筋に龍飛を連結させ攻防に利かせますが、▲3八銀としっかり受けて先手玉は寄りません。
図11から
△2八龍 ▲4九玉 △4七歩 ▲5八金
△4八歩成 ▲同 金 △4七歩 ▲5八金
△4八歩成 ▲同 金 △4七歩 ▲5八金
△4八歩成 ▲同 金 △4七歩 ▲5八金
△3六歩 ▲4六角 - 図12 △3八龍
▲同 玉 △3七銀 ▲同 角 △同歩成
▲同 玉 △3五銀 ▲1三香成 △同 玉
▲1五飛 - 図13 △1四歩 ▲3五飛
△1七角 ▲2四銀 △同 玉 ▲2五金
△同 飛 ▲同 飛 △3四玉 ▲5二角
まで169手で先手の勝ち
藤井NHK杯は持ち時間が無くなり大ピンチですが、大量の持ち歩を打ち捨て時間を稼ぎ何とか妙手をひねり出そうとしました。しかし、佐々木八段の指し手は正確で、▲4六角(図12)の詰めろ龍取りが厳しく刺さりました。以降藤井NHK杯最後の猛攻も佐々木八段が冷静に凌ぎ、後手玉を即詰みに打ち取りました。昨年決勝の雪辱を果たす見事な初優勝となりました。
一局を通して、佐々木八段用意に用意を重ねた作戦が功を奏してリードを奪いましたが、一瞬の緩手を突いて藤井NHK杯があっという間に勝勢までもっていってしまいました。そのまま寄せ切るかと思われた瞬間、今度は藤井NHK杯に緩手が出てしまい、これを見事に佐々木八段が咎め見事に寄せ切りました。終盤の攻防、ドラマがあり大変面白い将棋でした。両者の切れ味凄まじかったです。佐々木勇気八段おめでとうございました。
今回は、この辺りで失礼します。
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