3月になると必ず思い出す歌がある。井上陽水の「桜三月散歩道」だ。『氷の世界』の中にも入っているよね。珍しく陽水のセリフも入っている。なんとも不思議なファンタジーのような世界だ。実のその別バージョンがあると聞いて、その作詞がフジオ・プロの長谷邦夫だと聞いて、そして実際に聴いてビックリっ!!!
この本でそのヒ・ミ・ツが明かされるっ!「赤塚不二夫、手塚治虫、石ノ森章太郎との出会いと別れ。山下洋輔、タモリ、筒井康隆、井上陽水ら異能たちとの交友―。数々の「伝説」を生んだパロディ・マンガ家の、そのありのままの半生記」そのエッセンスを紹介しよう。
・赤塚は、階上のアニメ会社。スタジオ・ゼロから、時代劇マンガを描いているので見てくれませんかとやってきた、とりいかずよし氏に、無理矢理スカトロジーマンガを描かせ、それが出世作の『トイレット博士』 につながっている。最初は「くちなし犬」なる時代物でスタートしたが、赤塚に言われたテーマが呪文の如くに効いてしまったのである。
・赤塚不二夫の個人誌『まんがNo.1』の第5号目のレコード付録は井上陽水氏の歌である。フジオ・プロ子会社フジ・ビデオのボスである井尻氏が、ぼくのところへ、デビューアルバム『断絶』を持ってきて、これがあまり売れずにいるんで、何かいい企画があったら使ってやってほしい、と言われた。新宿のちっぽけな喫茶店に井上氏は、ジーンズにスポーツシャツ姿で、何も持たずに、ぶらりと現われた。
「実はですね、赤塚不二夫がパロディ・マンガ雑誌の刊行を進めている最中なんですが、その雑誌に『冗談レコード』 なるフォノシート盤の付録を毎月つけるという編集プランがありまして、その製作をぼくが担当しているんです。日本ではまだこのようなモノは存在していないはずです。ぼくはあなたの『断絶』の歌声の美しさが忘れられない。悪ふざけや悪ノリではない、ちょっと上品な味わいを持った歌で、ユーモアを表現できないか 、と考え始めてしまいました」
「それで、ぼくの歌……ですか?」
「はい、作詞は朗読付きのものを長谷作詞で書かせていただきます。まず、それを読んでいただいて、気に入ったら歌っていただきたいんです。いかがでしょうか?」
「なるほど、分かりました。お引き受けしましょう」
「ぼくの故郷を舞台にしたラブソングを構想中です。書き上げましたら、すぐお送りします。ぼくは長いこと現代詩なんかを書いていましたが、それとはまったく違ったものを作詞するつもりです」
「ちょっと楽しみな企画になりそうですね。いずれ赤塚先生にもお会いしたいです」
「はい、ぜひ会ってやってください!」
録音当日、スタジオには編曲者の星勝氏と大野進氏が、ブースで打ち合わせをしているうちに、バイオリン奏者三人ほか、打楽器の方など順番に現れてつぎつぎと自分たちのパートを演奏収録して引き揚げていく。ラストにギターを持った陽水氏が現れた。ギターの演奏とともに、ぼくの作詞した「桜三月散歩道」を歌唱する。柔らかい素敵なメロディーだ!リズミックでもある。まったく文句ない出来栄えだった 。大野氏の朗読は、別の日に録るという。「おつかれさまでした。すばらしい歌で感激です!文句なしです!」
こうして5号も無事刊行された。レコード作品については、初の体験であったものの、予想以上の成果が得られたと信じる。しかし、マンガ雑誌としてのマンガ作品は、そうはいかなかった……としか言えないのかも知れなかった。
いやいやスゴい話だ!!陽水もすごいけど、長谷邦夫のスゴい!あのイラスト、そっくりだもんね。マンガファン必読っ!オススメです。(・∀・)