いや〜すごい本に出会ったなあ。あまりに夢中になってこの本は「海峡を渡って」横浜から福岡へ、そして大阪まで持っていっちゃったよ!(笑)(^_^)
バイオリンの世界ってすごい、職人の世界ってすごいわー!
「14歳で来日して福岡県で夜間中学を卒業。その後明治大学英文学科を卒業したが、英語教師への道は韓国籍のため叶わなかった。失意の中で聴いた糸川英夫氏の講演で、
「名器ストラディバリウスの再現は不可能」という言葉に触れ、以後ヴァイオリン製作を志す。世界でたったの5人だけ。ひたすらバイオリン製作に励んだ在日韓国人が、世界に冠たる“無監査マスターメーカー”になり故郷へ錦を飾る。哀惜のドキュメント!」そのエッセンスを紹介しよう。
・今では、子供の想像力を育むためにおもちゃを買い与えるというが、はたしてこれがどれほどの効果をもたらすのであろうか。むしろ、あえておもちゃのない状況を作り、自分で工夫をさせる。そちらのほうがよっぽど創造力が養われるのではないかと思うのだが。
・音というのは、実に正直だ。手間ひまを惜しまず愛情や工夫を注がなければ、それなりの結果しか出てこない。音が小さく、荒くならないようにするのはどうすればいいのか、創意工夫し苦心惨憺する。同じバイオリン製作者の仲間でも、こういった工夫を怠った人間は、結局、最後にはこの道を離れていった。
・最高峰は今も昔もストラディバリウスだが、この仕事はなぜ暗中模索かといえば、いわゆる名工、匠、巨匠と呼ばれる人たちは、バイオリンの作り方のコツ、秘技、奥義を、自分の息子ははじめ弟子にも誰にも教えずに死んでゆくからだ。つまり、新しくバイオリンを産み出す人間は、常に自己流でやっていくしかない。頭をあっちにぶるつけ、こっちにぶつけ、常に実験や試行錯誤を繰り返しながら、自分なりのバイオリンの製作法を構築していかなければならない。暗中に光る一点の灯明を求めて右往左往し、辛酸をなめ、苦杯を喫し、そうして一歩、また一歩と進んでいくのである。
・糸川英夫の「バイオリンの神秘」の講演で、あくまでも物理学的な立場から、名器ストラディバリウスの音は主にどんな波長から成り立っているのかを理論的に解明しようとしていた。300年以上前にイタリアで作られた名器に共通した波形と、新しいバイオリンの波形を比較分析してみせるなど、大変興味深い内容だった。本体の厚みを変えてみたなど、様々な試行錯誤の結果を披滴し、理論的には同じ波長がだろうと思ってやってみたが燦々たる結果になった、少しは音がよくなるが、弾き比べてみるとまるで別物だった、等同じ。氏は、ストラディバリウスの音の解明は永遠に謎であり、神秘であり、人間の力が及ばないものだと結論づけた。人間は、いずれロケットを作って月には行けるようになるとしても、ストラディバリウスの技術を再現するのは至難の業で、ほぼ不可能だろうと氏は結んだ。
・私の人生を支えているのは、バイオリンを作るという夢だ。たとえどんなに苦労しようとも、自分の好きな道だから耐えていく自信はある。ただ、彼女にsの苦労を分かち合ってもらえるかというと、自信がなかった。自分だけならどうとでもなる。だが、結婚したからには彼女を養う責任も出てくる。
・私は寝るまを惜しみ、何かに取り憑かれたかのように、一週間に六挺(ちょう)のペースで作った。これはバイオリン製作の常識からして信じがたいペースである。楽器店やバイオリンの先輩職人に「とにかく数をこなせ。そうすれば、おのずと見えてくる」と言われたことがある。職人は、技術を頭で覚えるのではなく、体で、指の感触を覚えていく。結局、どれだけの経験があるかということがいちばんものを言うのだ。そのため私は、生活のためにはもまた腕を上げるためにも、不眠不休でバイオリンを作るほかなかったのだ。
・私はわずかな調整だけで、バイオリンの音をその三倍の値段がつくバイオリンの音と同じレベルまで上げることができる。やり方によってそれほど変わるものなのだ。これは感性のなせる業で、簡単に技術を盗めるようなものではない。ストラディバリウの場合は、自分の息子にも伝授しなかった。その気持ちだけは私にもいまだに謎だ。
・職人の技術というものは普通の人には見えないものが見え、考えられないことが考えられるようになるまで研ぎ澄ませてゆかなければならないものだ。そしてそのためには、ひとつの技術をとことん掘り下げることが必要だ。まずは常識の範囲を飛び出してみなければならない。
「100ページの参考書の丸写し」「小捨て場」「北からやってきた息子」「指切りげん万(現金(ナマ))」「バイオリンを作る農夫」「バイオリン売り」「バイオリンを食べる男」「空を飛んだバイオリン」など。
えっ?これ漫画化になっているの?映像化されてるの?観たいなー!超オススメ、いや挺(ちょう)オススメです。(笑)(^ω^)