毎週末に子どもを体操教室に送っているのだが、その時にいつも気になる看板が目に入るのである。
「100人食べて100人が美味いと言った伝説のお菓子」
看板にはそうデカデカと書いてあるのである。なんという自信だろうか。
まさかの美味い打率10割達成。今年のドラフト会議に掛からなかったことが不思議なくらいの安打製造機的お菓子が娘の体操教室の近くにあるのだ。
この看板を見るたびに私は実家の近くにあった「街道で2番目に安い」という看板を掲げたガソリンスタンドを思い出すのである。
子どもの頃に「なぜ1番でなく2番を宣伝してるのか?」と疑問に思って父親に聞いたことがある。
父からは「1番安いって書いちゃったら嘘だとすぐバレるから。2番目だったらバレにくい」という返答だった。
子どもながらに大人とはなんと不誠実で姑息なものかと思ったものだが、このお菓子の看板についてはそんな逃げ道を一切持たずに、美味い打率10割を堂々と宣言しているわけである。
しかし、100人が食べて100人が美味いという状況は果たしてありうるのだろうか。
共産圏の国ならまだしも精神活動の自由が保障されている日本において「全員が美味い」という状況が果たしてあるのか。食べた人の中には「普通」もしくは「まずい」と感じた人もいるはずである。
基本的に疑り深い性格である私は、この宣伝について適切な調査が行われなかったか、もしくは深刻な人権侵害が行われている可能性があると睨んでいる訳である。
適切な調査でない場合、こんなやり取りがされたのではないかと予想している。
まずは極端な2択で迫ったパターン。
店「美味いですか?それとも、死ぬほどまずいですか?」
客「(そのどちらかで言えば)美味い」
店「なるほど、美味い、と」
もしくはかなり強引な誘導尋問が行われた可能性もある。
店「このお菓子の感想を、次の中から選んでください。
A 美味い
B デリシャス(美味い)
C セボン(美味い)
D ブォーノ(美味い)
E ラサイ(美味い)」
客「…じゃあDで」
店「なるほど。ブォーノ(美味い)、と」
このような強引な誘導の結果100人に美味いと言わせることに成功したのではないかと予想している。
中にはかなりの捻くれ者もいた事だろう。そんな時にはかなり強引な手段を使ったことも考えられる。
店「美味いですか?」
客「甘いもの苦手なんです。だから、まぁちょっと言いにくいんですけど…」
店「ちょっとこれ見てください」
店員の手に握られた携帯。そこに写っているのは囚われ、刃物を向けられ泣き叫んでいる自分の妻子の姿である。
店「もう一度よく考えてお答えください。美味いですか?」
客「……う、美味いです…」
こんなやりとりが100回繰り返されたのではないかと考えているわけである。
恐ろしい、あまりにも恐ろしい洋菓子屋である。この看板からはそんな重大な事件の匂いがして仕方がない。
ちなみに今週末も体操教室が控えている。調査がてらに寄ってみようかと思っている。
PS.久しぶりの投稿がこんなんですいません。読んでいただき、ありがとうございました。