2022年のベスト本を考えてみた

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

2022年も明日で最後。今年も1年いろいろあった。数えてみると、ここまで読んだ本は168冊。以前に読んだ本の再読も含めると総数は200冊ほど。行く年を振り返りつつ、今年出版された本の中からベストを選んでみた(出版月順)。

<ミステリ部門>

死の味 上・下 P・D・ジェイムズ 青木久惠訳 ハヤカワ文庫

今年はP・D・ジェイムズのよさを再発見。ダルグリッシュ警部シリーズを全作再読した中で、これはやはり名作と感じた。神々しさすら感じる作品。

殺しへのライン アンソニー・ホロヴィッツ 山田蘭訳 創元推理文庫

今年も賞レースに名を連ねる言わずと知れた話題作にして名作。とにかく面白い。読んでソンなし。

キュレーターの殺人 M・W・クレイヴン 東野さやか訳 ハヤカワ文庫

シリーズ第3作だが、失速するどころか面白さが加速。毎回奇想天外な発想に驚かされる。冷静に考えればトンデモ話だが、ハンパないリアリティが出色。


<ほっこり部門>

団地のふたり 藤野千夜 U-NEXT 

幼稚園時代からの友情を描いたこの作品、変わりつつある世の中で変わらないものがある幸せを感じさせてくれた。ふたりの今後も知りたい。

セカンドチャンス 篠田節子 講談社

純粋な趣味は楽しい。そして、いくつになっても成長は必要。思い込みは捨てて挑戦しつづけたいと感じる。

たとえば、葡萄 大島真寿美 小学館

いろいろなことが起きる世の中、自分にできることはないと思ってしまいがちだが、世界はきっとどこかでつながっている。そう信じたくなる1冊。

2023年はどんな年になるだろう。そして、どんな本との出会いがあるのか。来る年がよい年でありますように。







ぼんやり見ていてすみませんでした「フィギュアとは”生き様”を観るスポーツである!」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

すっかり過去の記憶となった北京オリンピック。今年、突如競技に復帰して周囲を驚かせた織田信成選手が書いたこの本、スケート愛が詰まっていて学びが多い。

プロフィギュアスケーターで、解説やタレント業でも活躍している著者が「フィギュアスケートの魅力を全方位解説!」した2冊目の著書。平昌から北京までの4年間で変わったこと、日本フィギュアスケートの礎を作った選手たち、北京オリンピックで観るべき選手とその技などを解説。さらに、羽生結弦選手(当時)について語る。安藤美姫さんとの対談も収録。

これまで数々の試合をテレビで観戦していたが、まさに知らないことばかり。特に技については「にわか」ではあるが、勉強になった。選手として活躍した人でなければ書けないエピソードは本当に貴重。実際の北京五輪は、ロシアのドーピング疑惑があってスッキリしなかったが、日本選手のメダル獲得や羽生結弦選手の果敢な挑戦もあって思い出深い。そして、その後のプロ転向も。日本選手の今後の活躍を応援したい。

織田信成 フィギュアとは”生き様”を観るスポーツである! KADOKAWA

フランスミステリの白眉?「黄色い部屋の謎」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

最近、昔読んだミステリの古典を読み返している。江戸川乱歩が選んだ探偵小説黄金時代のベストテンの第2位にランクインしたこの本、横溝正史の「本陣殺人事件」はじめ、さまざまな作品に影響を与えたフランスの密室ミステリだ。

フランスの古城グランディエ城の離れで、高名な科学者スタンガルソン教授の令嬢マティルドが襲われた。ところが、「黄色い部屋」と呼ばれるその部屋は窓にもドアにも内側から鍵がかかった密室だった。18歳の新聞記者ルルタビーユは密室の謎に挑むが、不可解な事件が相次いで起こる。パリ警視庁のラルサン警部も捜査を行うなか、ルルタビーユは真相にたどりつけるのか?

1907年(!)出版のこの本、新訳のおかげか読みにくさは感じない。特徴はいかにもフランスらしいその伝奇的な書きぶり。ちょっとルブランの怪盗ルパンシリーズを思いだした。かの「オペラ座の怪人」の作者だけに、最後に真相が解き明かされる場面もドラマチック。いろいろと回収できていない謎が残っているのだが、それは続編に記されているという。そちらも新訳希望。

ガストン・ルルー 平岡敦訳 黄色い部屋の謎 創元推理文庫


クリスマスにおすすめ「雪の夜は小さなホテルで謎解きを」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

クリスマスを扱ったミステリはいくつかあるが、これは大人も子供も楽しめる本。雪に閉ざされる地方の人も、そうでない人も、ひととき雪のホテルの滞在客気分を味わえることうけあい。

今日からクリスマス休暇。両親の営む小さなホテルにはこの時期にはひとけがない。12歳のマイロは両親と過ごすクリスマスを楽しみにしていた。ところが、今年に限って5人の宿泊客が訪れる。その誰もが何かを隠しているようだ。ケーブルカーの停車場に落ちていた古い地図が盗まれたことから、マイロは手伝いに来てくれたキャロウェイ夫人の娘ミディとともに謎解きをはじめる。

クリスマス・ツリーにプレゼント、ケーキやごちそう。雪に閉ざされた古い宿で、宿泊客が語るそれぞれの物語。各階の踊り場を飾るステンドグラス。わくわくするような設定に読み進めていくと、それぞれの宿泊客たちの謎が明らかになっていき、やがて家そのものにまつわる謎が明かされていく。スリルあり、驚きあり、実は養子のマイロの成長物語でもある。1冊にさまざまな要素が詰まっていて読んでソンはない。プレゼントにもおすすめ。

ケイト・ミルフォード 山田久美子訳 雪の夜は小さなホテルで謎解きを 創元推理文庫


トンデモ警部のクリスマス「クリスマスのフロスト」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

もうすぐクリスマス。この時期になると読みたくなる本が何冊かあるが、これもその1つ。1994年度にミステリランキングで1位を獲得した「不屈の仕事中毒にして下品きわまる名物警部フロスト」のデビュー作だ。

ロンドンから100㎞以上離れた田舎町デントン。そこでクリスマスだというのに次々と起こる怪事件。8歳の少女が姿を消したかと思うと、だれかが銀行の玄関をかなてこでこじあけようとする。下品きわまりないフロスト警部は捜査を開始するが、それが結局はとんでもない結果に……。

いきなりとんでもない事態から始まるこの本、そこから4日前の出来事に戻っていく構成が引きまれる。よれよれのレインコートに趣味の悪いえび茶のマフラー姿という一見刑事コロンボを思わせるフロストだが、コロンボのような正義を貫く姿勢はみあたらない。行き当たりばったりに見えるフロストが伏線となる事件の数々をみごとに回収していくのがこのシリーズの魅力。全部で6作あり、どれも読みごたえたっぷり。著者が亡くなりもう続編が読めないのが残念。

R・D・ウィングフィールド 芹澤恵訳 クリスマスのフロスト 創元推理文庫


ブッククラブ新刊は豪華クルーズの旅「危険な蒸気船オリエント号」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

オーストラリア発ミステリ第2弾は、豪華クルーズ船での事件を扱ったもの。その名も「オリエント号」とくれば、さっそく読んでみたくなる。

前回ブッククラブメンバーの殺人事件を解決したアリシアとその他の面々。今度は、メンバーの1人アンダースが船医を務めることになった豪華クルーズに格安で参加することに。現代によみがえった蒸気船オリエント号の船上では、盗難や乗客の行方不明など、またまた事件がメンバーを待ち構えていた。

イギリスからニュージーランドに向かう客船に5日間だけ乗船することになったメンバーたちが、それぞれの思いを抱えつつ船旅を楽しむ中で起きる事件。どうするのかと思っていたら、今回も、かの有名なクリスティ作品とリンク。さらに、アリシアのロマンスにも変化が? ミステリとロマンスの両立はなかなか難しいが、今後の展開に期待。

C・A・ラーマ― 高橋恭美子訳 危険な蒸気船オリエント号 創元推理文庫


新ジャンルを作った記念作「失踪当時の服装は」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

海外の警察小説といえばエド・マクベインの72分署シリーズなどが思い浮かぶが、これは1952年に「警察捜査小説」というジャンルを生みだした記念的作品。その新訳版を読んでみた。

1950年3月、アメリカのマサチューセッツ州にあるカレッジから1人の女子学生が姿を消した。周囲の聞き取りに失踪の理由は浮かばない。地元警察署長で叩きあげのフォードは、部下とともに地道な捜査を開始する。まったく進展がないまま、フォードはわずかな手がかりを追い、やがて……。

アメリカの犯罪ミステリといえばプロファイリングなどの科学的な側面から犯人を追跡する印象があるが、本書に人目を惹く技法は出てこない。怪しい動きをする人物もいなければ、名探偵も登場しない。しかし、とにかく読ませる。それぞれの人物と警官たちの捜査を丹念に描くことで、これほど面白い小説ができることがうれしい発見。さらに、フォードの執念が実る瞬間はまさに謎解き。読んで損はない。

ヒラリー・ウォー 法村里絵訳 失踪当時の服装は 創元推理文庫

断捨離は永遠の課題「たりる生活」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

累計34万部と多くの読者に支持されている群ようこさんの「生活」シリーズ。第5弾となる本作では前期高齢者となった群さんが愛猫を見送ったあと、一人暮らしには大きすぎる部屋から引っ越すことになる。興味津々で読んでみた。

ひとつの階に2部屋だけのマンションに住んで27年。愛猫「しいちゃん」を見送っていよいよ引っ越すときが。「高齢者」となっての家探し、ダインサイジングのためのものの処分、引っ越し後のあれこれなど、「身軽な生活」を送るための日々を描く。

高齢者は部屋を借りにくいという。それは結局、信用度? 安いところにはワケがあり、自分に合う物件は狭まっていく。無事家が決まってからの、ものを捨てていく描写はなかなか壮絶。自分を振り返っても「もったいない」「いつか使うかも」は呪いの言葉。キッパリ捨てていく著者の潔さに勇気をもらい、新しい家でのあれこれにふむふむとうなずきながら、あっという間に読了。「たりる生活」に幸あれ!

群ようこ たりる生活 朝日新聞出版


たまには古典も「赤毛のレドメイン家」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

江戸川乱歩が選んだ探偵小説黄金時代のベストテンの堂々第1位がこちら。1922年刊行の古典作品を新訳で読んでみた。ふつうならあらすじが書いてある開きの部分に、乱歩による解説が載っているところも力が入っている。さすが創元推理文庫創刊60周年記念作品。

スコットランドヤードの刑事ブレンドンは、日暮どきのダートムアの荒野で1人の女性と出会い、恋に落ちる。その数日後、助けを求める手紙を受けとったブレンドンは、その女性ジェニーの叔父ロバートによる事件を追い、ダートムア、ダートマス、そしてイタリアへと赴く。

だいぶ前に読んだことがあって事件の真相はおぼろげに憶えていたが、それでも不思議な魅力があるのが乱歩を激賞させた名作ゆえか。まず遠景からとらえる映像的な描写、さらに人物の描き方、その奥行き。解説でも紹介されていたように、ミステリにとどまらない小説としての面白さがある。読んでいて、クリスティのある作品を連想した。著者は若き日のクリスティと交流があったようだが、もしかして、この作品の影響?などと妄想を楽しむのも面白い。まさに万華鏡的作品。

イーデン・フィルポッツ 武藤崇恵訳 赤毛のレドメイン家 創元推理文庫


待望のバディ・ミステリ第3弾!「疑惑の入会者」

これまで6000冊以上の本を読んで記録してきた。

第二次大戦後のロンドンで、女性2人が経営する結婚相談所をめぐるミステリ「ロンドン謎解き相談所」シリーズの第3弾がこの本。「世界を人でいっぱいに!」を合言葉に、2人は今日もマッチングと謎解きに励む。

元スパイのアイリスと、上流階級出身のグウェンが営む<ライト・ソート結婚相談所>に、初のアフリカ系の相談者がやってきた。しかし、人に対する直観が鋭いグウェンは、その男、ダイーレイが本当のことを言っていないと感じる。一方、グウェンの義父がアフリカの鉱山から帰国し、息子のロニーを寄宿学校に入学させると言う。専横な義父に家族が振りまわされるなか、義父のクラブでアフリカ系男性の遺体が発見され、グウェンとアイリスも巻きこまれていく……。

本編のほかに、アメリカで販促用に書かれたという短編も収録されて読み応えたっぷり。義母を説得したと思ったら、さらに強硬に立ちはだかる義父とグウェンがどう対決するか、戦時中のトラウマにアイリスはどう対応するか、さらに事件と2人の関係は、と、あっという間に読んでしまった。すでに本国では第4弾が出版され、さらに第5弾も出版予定ということで、2人のこれからが楽しみ。

アリスン・モントクレア 山田久美子訳 疑惑の入会者 創元推理文庫


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