現在、ハイドン・セット第3番として広く知られる「弦楽四重奏曲 第16番 変ホ長調 K.428(421b)」には、その作曲順序および同セットにおける位置付けに関して、別の見解があります。 まず、作曲された時期について言うと、これを明に示す資料が欠けているため定かではないものの、概ね「第15番 ニ短調 K.421」とほぼ同時、1783年の6月から7月のことと考えられていますが、楽譜に使用された用紙に基づく年代研究で有名なアラン・タイソンは、ニ短調より前に書かれたと主張しています。 しかしいずれのせよ、両者が同時期に成ったことはほぼ間違いないようです。 一方、ハイドン・セットにおけるこの変ホ長調の位…