6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近はインターネットや電子辞書の普及で辞書をひくということをあまりしなくなりました。言葉をたずねるということが容易になったことはうれしいですが、もう少し言葉を楽しむことがあってもいいのではないかと思います。
今回「よろめき」を調べるにあたっては本箱の中から分厚く重い広辞苑を取り出して、ちゃんと正統的に言葉をたずねました。
広辞苑には「よろめき」という名詞は出ていません。動詞の「よろめく」だけ。一つめの意味として、「足どりが確かでなく、よろよろする」とあります。
もちろん、本書でいう「よろめき」はこの意味ではありません。もっとも性的に爆発させてよろよろすることはあるでしょうが、私は経験ありません。
二つめの意味、「俗に、誘惑にのる。うわきする」とあります。本書はこのことを指しています。
だったら、「人妻」でなくても「よろめく」ことはあるのでしょうが、「よろめき」は「人妻」でないといけない。というのも、どうも「よろめき」というのは昭和32年に発表された三島由紀夫の、純朴な人妻の姦通物語である『美徳のよろめき』からきているようなのです。
著者はここから「人妻が夫以外の男に強い関心を示す」ことを「よろめき」と表現するようになったと推測しています。
本書はアダルトな世界で今や大人気となっている「人妻」を、先ほどの三島由紀夫のような小説や映画、それにテレビドラマといった媒体からその変遷を解き明かそうとする、まじめな本ですが、それでも大学の先生が書いた社会論でも風俗論でもないのでそこは適当に柔らかい、面白い一冊です。
ついでに「人妻」という言葉を広辞苑でひくと、「他人の妻、または夫」と「結婚して妻となった女」とありますが、どうもあまりおもしろくありません。
もう少し、よろめく感じを漂わせるのがいいような気がします。例えば、「結婚して妻となったが、女の色気がぷんぷん香りたつような女」とか。
あんまりうまくない、か。
言葉がもつ雰囲気はいろんな文脈で使われてこそ生きるもの。
「人妻」にしろ「よろめく」にしろ、辞書だけでは伝わらないものは、この本を読めば実感できます。
投稿元:
レビューを見る
社会を知れる一冊です。タイトル書いでした。
結論として、なんか男って情けないイキモノだなあと痛感しました。
投稿元:
レビューを見る
奥様方がどうしてこんなにも性の対象となったのかを戦後の習慣から、しきたり、法律、文化、現代のメディアなどの様々な点から分析したもので内容はいたって大真面目なものでした!
人妻好きなアナタは是非どうぞ!!
投稿元:
レビューを見る
戦後の小説、映画、テレビドラマ、人妻へのインタビューによって、人妻の性的魅力の変遷を綴っている。
本来ならモラルを守るべき奥さんたちがタブーを犯すことにより本能を刺激される。これは、タブーが高いほど興奮度が高まるという快楽の法則によるものらしい。
そして、さらには「寝取られ」へと昇華していく。
奥が深い世界だ。
投稿元:
レビューを見る
★★★★☆
遠すぎては見えないが、近づきすぎても見えない。
後に大きな歴史の転換点だったといわれる時代でも、そこでリアルタイムで生きている人たちは、その重大さになかなか気がつかないものだ。
まさに我々は革命の真っ只中にいたのだ。
それは人妻革命である。
本書曰く、近年エロ雑誌やAVにおいて「人妻」と名のつく作品が大きなシェアを占めているらしい。
それなら昔からあった、と思う人もいるだろうが、これまでいわゆる人妻ものは、統計的にあくまでもニッチなものであって、それがエロジャンルのメインストリームになった現在の状況というのは、歴史的にも初めてなのだという。
人妻ものの歴史は古く、最初期にこのジャンルに熱心に取り組んだひとりとして名前が上がるのが武野藤介だ。
彼が昭和20年代から30年代にかけて書いた人妻日記三部作(『人妻日記』ほか)は、日記形式の小説で一作目が不倫している妻の日記、二作目が不倫相手の日記、三作目が夫の日記という、なかなか凝った構成になっている。
興味をそそられる内容ではあるが、ブームを巻き起こすほどにはならなかった。
その後も人妻ものは作られるのだが、あくまでも売れ筋は独身の若い女を主人公にしたもので、人妻ものの企画を持ち込んでも「所詮、他人の女でしょ」とあまり良い返事はもらえなかったという。
それが近年になると前述したように様子が変わる。
エロ雑誌やAVだけでなく、風俗でも「人妻」と付けるだけで客の入りが違うのだという。
それだけではない。
以前なら風俗で働く女性は、25歳なら20歳、30歳なら25歳というように鯖を読んだ年齢をプロフィールに書き込んでいたが、今は“逆鯖”なのだという。
つまり、20歳の女性が25歳、30歳の女性が35歳と鯖を読んでおり、実際その方が客がつくというのだ。
その理由についての分析も本書では行われているので興味があったら読んでみて欲しいが、それより重要なことがある。
それは「女性は若いほうがいい」という有史以来の日本の常識が、歴史上初めてひっくり返ったということだ。
これを革命と呼ばずして何と呼ぼう。
それだけではない、人妻ものが売れているということは、前述した「所詮、他人の女でしょ」も過去のことになったということになる。
「他人の女だからこそ、いい!」というわけだ。
最近、芸能界は結婚ラッシュだ。
堀北真希や、福山雅治の結婚にガッカリしている人たちに言いたい。
そんな考え方は古い。
彼らは他人のものになったことで、より魅力的になったのだ。
スイッチひとつ切り替えるだけで、人生は如何ようにも豊かになり得る。
投稿元:
レビューを見る
2011年刊。「人妻」をキーワードとして、小説、映画(いわゆるピンク映画を含む)、TVドラマ、AV、風俗をもとに、戦後から現代に到るまでの規範意識の変容、人妻への社会的目線の変容を解読。一般女性が求める男性像のハードルが高くなり、選ばれにくくなった男性側が癒しを求めて、男性への許容度が一般に高い「人妻」人気が亢進した。つまり、姦通・不倫を題材とするフィクションでは、不貞な関係が二人の障害の符牒から、癒しのそれへと変貌したというのだ。かかる解析は、感覚的には理解できなくないところ。
しかし、ただその一方、離婚後の生活費の貯蓄目的で複数特定者と関係を結んでいる人妻もいる。彼女の言は癒しとは程遠く、女性のしたたかさを感じさせる。まったくかなわないものを感じた。