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「弥勒菩薩」で「宇宙人」で「浮気をしない人」
2009/05/24 02:06
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
A 「この本は‘オバマー’どうしの対談だね」
B 「なに、それ‘オバマー’って。あれの真似? ダサイし、だいいち失礼だわ。なにかにつけてそうだけど、まったくあなたのセンスってなってないわね」
A 「ショック~~~。うえーん、そんなに責めなくても~」
B 「ああ~、これだから草食系男子は・・・。ほらほら、ちょっといいすぎたようね」
A 「うそ泣きに決まってるでないか~い。へへ、キャンデーありがとう」
B 「こんどは貴族?もう、脇道にばっかりそれて。どんな本だか教えてくれるんじゃなかったの?」
A 「そうでした。町山氏は越智氏を師と仰いでいて、越智氏にアメリカがこれからどうなっていくのかということをさまざまな角度からうかがうとアナウンスしてはじまるんだ。だから町山氏はもっぱら質問役かと思ったら、しゃべるしゃべる。対等な対談になってるよ。それを越智氏が鷹揚に受けとめていて、ふところの深さを感じたな」
B 「ふうーん」
A 「二人の掛け合いがおもしろかったよ」
越智 私自身の話ですけど、教師だった父親の赴任先が変わるので、小さいころは転校することが多かったんです。新しい学校へ行くたびに、自分は何者でもない、まるで宇宙人みたいだと感じていました。オバマもいわばずっと「宇宙人」だったんじゃないですか。
町山 宇宙人?
越智 (前略)宇宙人というのは別に否定的な意味で言っているのではなくて、みんなが出口がわからずてんやわんやのときに現れる人というニュアンスなんですけどね。
越智 同じ「宇宙人」として言わせてもらうと、クリントンとは違って、オバマは浮気をしない人だと思います。
町山 浮気?
越智 だって、私も浮気をしたことがありませんから。
町山 先生、急に何を言い出すんですか(笑)。
越智 宇宙人というのは、自分を承認してくれた人を大事にするんですよ。地球人をとっかえひっかえしていたら、ソッポを向かれてしまうでしょう? 私もガールフレンドがいないときは日本中から拒絶されたような気がしていました。
町山 ・・・・・・じゃあ、オバマにとっても「自分を承認してくれた」ミシェル夫人は非常に大事な存在なんですね。
B 「こんな調子の対談なの?」
A 「いやあ、ここは特にくだけたところだよ」
B 「なんか、紹介のポイントがずれてるわね」
A 「ハハハ、ところで『大草原の小さな家』のドラマって見たことある?」
B 「なによ、急に。A君、ひょっとしてリアルタイムで見ていたわけじゃないわよね」
A 「まさか。そんな年に見える? ほら、DVDボックスで揃えたんだ」
B 「あら! 再放送でとびとびにしか見てなかったのよ。あとで貸して」
A 「ハイハイ、まずは話を聞いてよ。貧しくても畑を耕して地道に生きようというのがアメリカンスピリットの源流で、それを象徴するのが『大草原の小さな家』や『子鹿物語』なんだよね。だけど、それはアメリカの幻像でしかなくて決して主流ではなかった。生理的運動律としてあったのは投機性の強い自由競争だった。その反対の図式として、「幻想の世界」をキープしていないとアメリカ人は精神的に落ち着かないんだという話が出てくるんだ」
B 「それはしかたがないわよね。ストレス社会では、代償作用としての魂の原郷は不可欠なのよ。でも、あいかわらずポイントがずれてない? あ、もう帰る時間だわ」
A 「えっと、急いでまとめると『希望と絶望』『楽観と悲観』という枠組みでいうと、絶望のブッシュ時代のあとだから希望を語ろうとしている。だから楽観で終わるのかなと予想していたら、悲観的なシナリオも考えておきましょうで終わる。うまく締めたね。なんせ越智氏は、「雷が鳴ったら自分のところに落ちてくるだろう」と考える人だからでもあるんだけどね」
B 「そうなの。じゃあ、この本とDVD、借りていくわよ。またね」
A 「あれ~、まだ封も切ってないのに、殺生な~」
書名から受けるほど「オバマ」一色ではない。しかし、近未来の「アメリカ」がたどる道を考える上で、興味深い対談集である
2009/01/30 15:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカの文化や歴史、民族問題などに通じている明治大学名誉教授の越智道雄(おち みちお)と、アメリカ在住のコラムニスト、映画評論家の町山智浩(まちやま ともひろ)が、政治(軍事も含む)、経済、文化におけるアメリカの過去と、オバマ大統領後の未来の展望を語り合う対談集。
第一章【オバマがチェンジ(変革)するもの レーガン連合の二八年】
第二章【失われた八年 ブッシュとは何だったのか】
第三章【アメリカン・ドリームという博打 サブプライムと投機国家】
第四章【覇権国家の黄昏 衰える軍事、経済、文化のヘゲモニー】
第五章【異端児か、救世主か オバマが選ばれた理由】
終章【彼の「強運」は世界の味方なのか オバマの未来、アメリカの未来】
頁数にして全体の七割を占める第四章までが、9・11テロ以降のブッシュ政権をはじめとする近過去のアメリカの状況と諸問題について。残りの三割で、オバマ大統領が登場した背景や、彼から受ける印象、彼を大統領に選んだアメリカの今後、といったことについて語られています。その意味では、『オバマ・ショック』というタイトルから受けたオバマがメインの対談集とは、大分かけ離れた内容でしたね。過去と近未来のアメリカについてふたりの事情通が語り合う中に、重要かつ転換点となる大きなパーツとして、「オバマ」のキーワードがあると、そんな感じでしょうか。
殊に、越智教授の次のふたつの発言が印象に残りました。
<100日で目に見える成果が出せない場合、「やっぱりオバマはダメだ」ではなく、「やっぱり黒人はダメだ」となる懸念があるからです>(p.148「ローズヴェルトとオバマ」より)
<オバマの本質は、どこにも帰属しない「絶対的アウトサイダー」なのであって、アフリカ系アメリカ人の代弁者ではない>(p.193「自らキング牧師の影を背負うオバマ」より)