集中して読む必要があるが、苦労して読む価値は十分ある
2018/03/09 23:37
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
古井由吉は、長い空白の期間もなく順調に小説を発表し続けている。ししてそのどれもが高いレベルにある。短編連作という方式が合っているようで、ほとんどがそのスタイルだ。ひとつの文章が長く、過去・現在を縦横無尽に描いている。また、描写している対象が何時の時代か、何処の誰の描写かが、少し気を許すと分からなくなる。それだけ集中して読む必要があるが、苦労して読む価値は十分ある。
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読売の書評によれば「現代日本文学の救い」であり、出版元は「現代文学の最高峰」という。
作者の小説は十年以上前に一冊読んだことがあり、地味ではあるが端正な完成度の高い作品との印象であった。
この本も読み易くはないものの読む甲斐は十分にあるだろうとの期待と覚悟を持って読み始めたのだが、その取り付きにくさは想像を超えていた。
随想とも小説ともつかぬ形式、叙述とエピソードの区別が判然としない、主体や時期、テーマが知らぬ間に入れ替わる。読者の感情移入を拒絶しているかのような文体であり、読み続ける意欲を繋ぐのに困難を感じた。
全編にたゆとう雰囲気に浸れる向きには良いのかも知れないが、読了時には正直消耗感が残った。
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古井由吉の言葉は、優美だ。すべての言葉が、美しい。
あちらとこちらの境、それは時にあやふやで、意識するとせざるとにかかわらず、いつか越えてしまうこともある。記憶のたゆたいの中で、自分は一体どちらにいたのだったか、その所在さえ曖昧になる。
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タイトルと装丁にひかれて、作者のことは何も知らないまま購入。
読み始めた本は何があっても読了する主義なので、必死の思いで読み終えたけれど、まぁしんどかった!
この作家のファンの方だったら読み慣れた作風なのかもしれないけれど、時系列や話の主体が知らぬ間に入れ替わることや、独特の読点の入れ方に戸惑うばかり……
読み終えた今、作品自体の感想を持てず、ただただ「読了した……」という鈍い達成感だけが残るというありさま。
生きている作家、過去の作家のいかんにかかわらず、発表された順番に作品は読んでいくべきなのかもしれないと改めて実感させられた一冊。