捕鯨をテーマとした殺人事件、いつもながら軽快なタッチだが、辻褄あわせに難。
2005/10/11 08:23
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
浅見家の食卓で鯨が話題になる。年輩者は給食で出された噛み切れない大和煮を思い出すが、若者は鯨肉とはまったく縁がない。今食べてもそれほど美味しいとは思えないのだが、小学生時代の思い出としては日本人に共通したものであろう。
いつもながらの浅見光彦の名探偵振りが描かれているのだが、本書での主題は捕鯨である。鯨は国際的な捕鯨委員会でその捕獲が禁止、制限されている。内田氏は自らの捕鯨に関わる思いを小説の端々に綴っている。イルカの仲間である鯨を獲るのはかわいそうであるとか、鯨が他の漁業資源を荒らしてしまうという事実など賛否両論を紹介しているが、鯨に同情的な書き方であった。
ここまで来ると、鯨肉の需要がどれほどあるかは疑問であるが、鯨はそれ以外にも無駄なく利用されていることも、私は本書を読んで初めて知った。だが、食用、あるいは資源として全く利用もしていない国々が委員会のメンバーに加わること自体が余計なお世話なのであって、IWCなる委員会が得体の知れない国々の集合体であることは明白であろう。
かわいそうというのなら、食用にしている他の動物はかわいそうではないのだろうか? 一体、何を根拠にしているのかが理解できない。愛護の対象になるものを決めるのは国際的な団体なのか? 国際的に価値観が倒錯しているのは分かるが、外国の歴史的な食文化を尊重すべきなのではないか。
捕鯨の歴史的な町、和歌山県太地と秩父が舞台になっている。捕鯨国である外国の怪しげな団体、捕鯨側の官庁出身のリーダー、記者など多彩な登場人物がそれぞれ活躍するが、今回は偶然が重なり過ぎたり、如何にも調子よく目撃者がいたりの連続で、やや興が削がれてしまった。
内田氏は始めから筋立てを考えないで書き進むようだが、結果的には今回のようにその皺寄せが偶然の重なりで解消されるという無理な筋立てになることもあるようだ。
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秩父で起きた殺人事件が、捕鯨の取材で訪れた南紀・大地の未解決の殺人事件や、もっと遡る心中事件と繋がっていたという、例によって浅見光彦の行くところ、どこへ行っても殺人事件に出くわすという行き当たりばったりのご都合ミステリーです。
ま、おもしろく安心して読めるので、これはこれで楽しめます。
捕鯨問題(鯨への愛着と捕鯨国ニッポンとの狭間で揺れる思い)がバックグラウンドにあって、何かと考えさせながら読まされました。2005/10/7
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浅見光彦、捕鯨問題の取材中に行きあう事件
読了日:2007.04.07
分 類:長編
ページ:428P
値 段:638円
発行日:2003年2月祥伝社、2005年9月発行
出版社:祥伝社文庫
評 定:★★★
●作品データ●
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主人公:浅見 光彦
語り口:3人称
ジャンル:ミステリ
対 象:一般向け
雰囲気:旅情・社会派ミステリ
結 末:決着
カバーデザイン:かとう みつひこ
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---【100字紹介】--------------------
捕鯨問題の取材で、南紀・太地を訪れた浅見光彦は、
「くじらの博物館」で未解決事件を示唆する
不気味な展示物のいたずらを見つける。
調査を開始した浅見は旧家の娘の心中事件、
そして秩父で新たなる殺人に出会う…。
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久し振りの浅見光彦シリーズの読了。この「よみもののきろく」でこそ、あまり内田康夫は登場していませんが、(これまでには3作品ほど。それらはすべて浅見シリーズ)、菜の花は元々、日本のミステリの入口としては浅見シリーズから入りましたので、内田康夫作品は相当数読んでいます。10作、20作じゃきかないくらい…。ただ、きろくを付け始める前なので、あまり登場してこないのですが。でも内田康夫作品こそ、菜の花の日本産ミステリ読書の原点かもしれません。菜の花世代の女の子だと、普通は赤川次郎氏をそういう風に挙げることが多い気もしますが、菜の花は内田康夫氏なんですね。天邪鬼ということもありますが、何より家にあったから…。実は菜の花以上の読書人(多分…少なくとも文才はあっちが上でしょう)の我が弟御が、完全完璧に内田康夫氏にはまっていて、蔵書コンプリート状態だったのです。床が抜けるほどの蔵書。まだ抜けてないですけど。というか、本棚いっぱいになるほどの多作、ということに驚きです。
ミステリ作家で多作と言えば、勿論赤川次郎氏が思い浮かびますが、同じく多作で菜の花が思い浮かべるのは、森博嗣氏。多作、というか速いですよね、出版ペースが。この二人…ミステリの書きように、微妙な共通点があります。この多作っぷりも勿論ですけど、「プロットを書かずに書き始める」と言っている点。「読者や主人公と同じように、この先どうなるんだろう、と思いつつ書き進める」というやり方が同じです。そうするとこういう作品になるらしいですよ。この対極に位置するのが、新本格派のみなさまなどでしょうか。計算されつくしたような作品…、綾辻行人氏とか、新本格とは違いますが宮部みゆき女史とか。
どちらもそれぞれ面白いので、絶対こっちが優れている!ということはないのですが、そうですね、雰囲気はやっぱり全然違います。読んだ後に「これはプロットはなしで書いただろうな…」という想像はつきます。どちらかだけでも物足りなくて、両方バランスよく読みたくなる感じでしょうか。菜の花ってぜーたくもの。
本作は、いわゆる社会派ミステリ。
また、分類するならホワイダニット。
フーダニットに関しては早い時点で浅見は目星をつけていますし(まあ、どんでん返しはありましたけど!ご期待下さい)、ハウダニットは何度か浅見が自問しますが、結局大して重視はしていなくて、全体としてはホワイダニット、でしょう。
※注:フーダニット=Who done it?(犯人)、
ハウダニット=How done it?(手法)、
ホワイダニット=Why done it?(動機)
のどれを重視しているかの分類
この点が上述の森氏とは一線を画していますね。同じような手法で、同じように多作なのですが、一方の内田氏は社会派のホワイダニット。もう一方の森氏は、ハウダニット中心で、動機に関しては、一言で帰着できないものであって、詳細に描かないというスタンスを取っています。うーん、似ているようで全然違う。世の中には色々な作家がいます。面白いですね。
…で、全然本作の感想になっていない!(苦笑)ええと、もう、この作品はですね、自作解説つきなので、それ読んじゃって下さい!って感じ(こら)。
そうですね、旅情ミステリでもある浅見シリーズ。今回の舞台は主に太地と秩父。他にも幾つも行きますけど…、とにかくこの辺りがメイン。ここで出会った幾つかの事件がやがて…。捕鯨問題とからめて、考えさせられることも多々ある作品です。うーん、本作独自の話、少なっ。どうもゴメンナサイ。何の足しにもならない「よみもののきろく」でした。
●菜の花の独断と偏見による評定●
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文章・描写 :★★+
展開・結末 :★★★
キャラクタ :★★★
独 自 性 :★★★
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…浅見 光彦
「お陰様はないよ、ご苦労さんだった」(浅見 陽一郎)
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浅見光彦が見た幽霊の正体は!?
南紀の岬町と秩父を結ぶ因縁の糸
捕鯨問題の取材で南紀・太地(たいじ)を訪れた浅見光彦(あさみみつひこ)は「くじらの博物館」で不気味な展示物を目にした。漁師人形に銛(もり)が突き刺されていたのだ。まさにそれは、以前太地で起こった殺人事件の被害者の姿そのものだった。誰がなぜ? 未解決事件へのメッセージ? 調査を開始した浅見は、小さな岬町を揺るがした・もうひとつの事件、旧家の娘の心中事件との関連に注目するが……。
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浅見光彦が映画「ザ・コーヴ」で話題の鯨の町を舞台にして殺人事件を解決していくストーリーです。
今までも、作者は「食管法」や「住専問題」さまざまな、問題に対して作品を通して提起していました。今回は、「捕鯨」という日本の問題をテーマに伝統とは、「クジラを採ることで何が悪いのか」を深く切り込んだ視点で書かれています。
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5月-12。3.5点。
捕鯨問題。和歌山で起きた6年前の心中と、秩父での現在の殺人。
結構深い。意外に登場人物が多く、似た名前もあり。
まあまあおもしろく読めたかな。
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割と面白かった。
本格的な推理小説だ。
警察局長の兄をもつ、平凡なルポライターが主人公。
鯨で栄えた町を舞台に、昨今の捕鯨反対の風潮の中、町の娘と別の町からやってきた捕鯨反対のルポライターの恋から始まった、殺人事件。見事な推理で解決する。
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テレビでもお馴染みの浅見光彦シリーズ。
2時間サスペンス系の原作は初挑戦だったのですが、なかなか面白かった!内容の面白さと同時に捕鯨問題の勉強にもなる。
ただ、浅見光彦はなんか好きになれない^^;(失笑
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捕鯨問題の取材で南紀・太地を訪れた浅見光彦は「くじらの博物館」で、背に銛が突き刺さった漁師人形を目にする。それは、以前起きた殺人事件の被害者の姿そのものだった。調査を開始した浅見は、もうひとつの事件、旧家の娘と記者の心中事件との関連に注目するのだが…。事件現場に見え隠れする青い帽子の女の正体とは。
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ほんとに久しぶりに光彦に会いに。
パターン化されている、母、兄、編集長等。
安心感が違いますね。
今回は、のっけから鯨食用問題とお化け。
なかなかの引き込まれるネタでした。
なんやかんやで、政治問題が絡んでくるあたり、センセの作品だなと。
母子の悲しくたくましくという最期は、
なんとなく考えさせられる作品でした。
また、たまに光彦に会いにこよう♥
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捕鯨のお話、鯨が日本食で戦後の食糧難では大切な栄養源であったことや南紀、太地と埼玉の秩父の情景が伝わり言ってみたくなる毎度のご当地描写(笑)
捕鯨問題を絡めたミステリーです。